Gorillaz『The Mountain』と ポップミュージックの死後世界 – クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.49〉
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
先日、金時山という富士山がよく見える山に登りました。
久々の早朝からの登山は非常に心地よく昔の人と同じくどこか神秘性を感じました。山はいいなぁと感じたからではないですが、今回ご紹介するのは2026年にGorillazが出した奇妙なアルバム。
タイトルは『The Mountain』。奇しくも先月が坂本慎太郎の『ヤッホー』なので何か運命的なものを感じております。
Gorillazとは何か ― 架空のバンドが現実よりリアルになる瞬間
まずは本作を作ったGorillazに関しての概略。1998年Blurのフロントマン デーモン・アルバーン と漫画家 ジェイミー・ヒューレット によって作られた。メンバーは、
- 2D
- Murdoc
- Noodle
- Russel
という架空キャラクター。だがこのコンセプトは単なるジョークではない。Gorillazは2000年代以降、ポップミュージックの未来実験装置として機能してきた。彼らはヒップホップ、レゲエ、エレクトロニカ、ワールドミュージック……etcを横断しながら「ポップとは何か」を拡張してきた。重要なのはコラボレーションである。
Gorillazは常に音楽を「集合体」として作る。その思想はヒップホップのサンプリング文化に近い。だが本作はその考えをさらに先へ進めた。
実験的な音楽性だけでなく、デーモンは環境問題、SNSの危険性、カルト宗教、政権批判などを実験的ポップミュージックにテーマを載せてきた。
死者と共演するアルバム
2026年2月27日Gorillazは9作目のアルバム『The Mountain』をリリースした。
この作品はインド、ロンドン、世界各地で録音され、英語・アラビア語・ヒンディー語・スペイン語・ヨルバ語など複数言語の歌が混在する。だがこのアルバムの核心は「ワールドミュージック」ではない。『The Mountain』の特徴は多くの故人のアーティストが登場することだ。例えば、
- Bobby Womack
- Tony Allen
- Mark E Smith
- David Jolicoeur
など。彼らの未発表音源やアーカイブがアルバムの中に組み込まれている。これは単なる追悼ではない。むしろ音楽の時間構造を壊す試みだ。
ヒップホップは過去のレコードをサンプリングする。だがGorillazは過去の人間そのものをサンプリングする。
つまりこのアルバムは生者と死者の共同制作、死者と共演するポップなのである。アルバムの中心テーマに死をおいているのは制作中にアルバーンとヒューレットが互いに父親を亡くしたことも起因しているのだろう。その経験が作品全体に影を落としている。
だがこのアルバムは悲しみのレクイエムではない。むしろ死は終わりではないという思想だ。
インド思想、スーフィズム、輪廻など、そうした哲学がアルバムの底流にある。
アルバムの楽曲たち The Mountain
Gorillaz -The Mountain ft. Dennis Hopper, Ajay Prasanna, Anoushka Shankar, Amaan & Ayaan Ali Bangash
シタールとフルートから始まる静かな導入曲。インド古典音楽とアンビエントが融合する。この曲はアルバムの世界観を提示する序章だ。
The Moon Cave
Gorillaz – The Moon Cave ft. Asha Puthli, Bobby Womack, Dave Jolicoeur, Jalen Ngonda, Black Thought
Black Thought、Bobby Womackという奇妙な組み合わせ。
ここで語られるテーマは記憶である。洞窟というメタファーは人間の記憶装置を示している。
The Happy Dictator
Gorillaz – The Happy Dictator ft. Sparks (Official Visualiser)
Sparks参加の政治風刺ソング。タイトルは「幸せな独裁者」。2020年代のポピュリズム政治をディスコポップで皮肉る。
The Hardest Thing
Gorillaz – The Hardest Thing ft Tony Allen
Tony Allenのドラムを使用。歌詞は「愛する人にさよならを言うことが一番難しい」というフレーズが繰り返される。この曲はアルバムの感情的中心だ。
The Sad God
Gorillaz – The Sad God ft. Black Thought, Ajay Prasanna and Anoushka Shankar
神の視点から人間文明を眺める曲。テーマは、
- 戦争
- 環境破壊
- 自己破壊
である。
サタデー・ナイトライブ出演― ポップスターの反戦
2026年3月GorillazはSaturday Night Liveに出演した。
Gorillaz: Clint Eastwood ft. Del the Funky Homosapien (Live) – SNL
Gorillaz: The Moon Cave ft. Asha Puthli, Black Thought & Anoushka Shankar (Live) – SNL
その際、デーモン・アルバーンは衣装に反戦ワッペンを付けて登場した。ライアン・ゴズリングと肩を組むデーモンの左腕にはCRASSというアナーキー・ハードコアバンドの日本語で反戦と書かれているワッペンが。
https://x.com/kyuri0465/status/2030639726575980887?s=20
「著名人が戦争に反対するなんて思想性が強すぎる」なんていわれるどこぞの国では炎上しそうだが、死をテーマにしたアルバムをリリースしたポップスの可能性を考え続けるアーティストが、アルバムにも自身の思想性にも通底する反戦の想いを表明している場面であった。ちなみにCRASSはこんな感じ。
2020年代は残念ながら新しい戦争の時代になっている。ウクライナ戦争、ガザ紛争、台湾海峡危機。こうした状況の中で多くの音楽家が政治的発言をしている。
Roger Waters、Brian Eno、Massive Attack、Zack de la Rocha、そしてGorillaz。
ポップミュージックは戦争を止めることはできない。だが戦争を普通にしないことはできる。そのための希望をGolilazは示したのかもしれない。
Gorillaz思想
彼らの思想は常に同じテーマを持つ。それは世界の断片をつなぐことだ。
国境、ジャンル、世代、生死、すべてを越える。だからGorillazはポップスによるインターネットと呼べる。またAI時代の人とAIの情報伝達をテーマとして、ハラリの大著『NEXUS』にも、通じるムードがあるのかもしれない。彼らが作り出す紐帯が多くの人に伝播し安らかな世界になることを願いたい。
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