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「生きる力」をカタチにする。アーティスト・新穂文健の作品づくりに対する想い。

先日もご紹介した、アーティスト・新穂 文健さん(専門学校日本デザイナー学院九州校 イラストレーション科 在籍)にお話しを伺うことができました。

 

書道と墨絵を組み合わせた表現をはじめるまで、そして作品に込める想いを丁寧に語っていただきました。

 

■アーティストを目指すきっかけは?

9歳から習字を教わってきました。14歳のときに1度は筆を置きましたが、16歳で再び筆に導かれ、手に取ったときに習字から書道へと変わりました。自分の中にあった型を壊して、表現としての書道に魅力を感じて行きました。

ただ、その時点ではアーティストとは別の道に進もうと思っていました。

■それでは、何かきっかけがあったということでしょうか?

経験の全てがきっかけで今に繋がっていると思います。

自分は表現しないといけないのだと思わされています。きっかけの中でも大きな出来事は運命と言えるようなことなのですが、地元(鹿児島)のテレビ番組で、墨絵・陶墨画アーティストである西元祐貴さん(※1)のライブパフォーマンスが流れていたんです。

(※1) 西元祐貴さん/墨絵・陶墨画アーティスト(公式web

彼のパフォーマンスを見た時に衝撃を受け自分も描くのだと思いました。

その時に感じていたことや、考えていたことが全てが結びついたことで、アーティストの道へと大きく踏み出すこととなりました。

■そして現在アーティストとしての活動へと繋がっていくのですね。

幼いころから私が経験してきたことや、その経験をしているときに見ていた景色。幼い頃から非現実的な「生きる」と現実的な「生きる」を経験させられてきた事やその経験をしているときに見た景色。これらが基盤となり、「生きる力」をカタチにして表現したいということは、以前から思っていたことでした。

この表現を行うためにどうすれば良いのかを考えたとき、それぞれが確立された表現方法である「書道」と「墨絵」を組み合わせること。この方法でしか新しいものは生み出せないという結論に至りました。書道と墨絵は、筆使いから全く異なる表現ではありますが、これを組み合わせることがベストだと思いました。「書道」と「墨絵」を融合させる事でした。確立された異質のモノの組み合わせでしか新しいモノは生まれないと思っています。

 

■新穂さんの制作方法について、こだわりをお聞きしても良いですか?

こだわりがある部分としては、手磨りの墨を使うことです。私の制作方法は、4時間ほど費やし固形墨を磨るところから始まります。そして、さらに1時間かけて墨を仕上げていくと、超高濃度の墨汁が出来上がります。
濃度の高い墨汁を作ったあと、通常の水墨画の描き方では濃度の違う墨汁を数種類準備して描きますが、私の場合は、この超高濃度墨汁と水バケツだけを準備して描いていくのです。筆の中で、墨と水を調節して描くといった感じです。

 

■なぜ、そのような描き方をされているのですか?

私にとって、「作品」=「そのときの自分」なのです。
墨の良さの1つとして、「ある一瞬」を短時間でカタチにできることだと思っています。
つまり、私の作品づくりと墨との相性がとても良いのです。

 

■やはり、市販の墨汁との違いは大きいのですか?

はい、全く違いますね。
固形墨は膠(にかわ)という動物の骨や皮から作られています。固形のままだったら、数百年でも保存できますが、1度水で溶いてしまうと、すぐに腐れてしまいます。すでに水で溶いて販売されている、市販の墨汁で描くと、どうしても表現に不足する部分が出てしまうのです。
一方、固形墨で磨った墨汁は、和紙の上に載せると、その瞬間から生きだし、時とともに墨色を変えます。

私は、この墨の様子にも「生きることへの執着」を感じるのです。
今、自分が生きていることもそうですし、作品を見ていただいた方にも、生きることへの執着心を感じてもらいたいと思いながら描いています。

 

■新穂さんの作品は、「文字」と「生き物(人外の生物)」を組み合わせて描かれている作品が多いと思います。「人間」との組み合わせを行わない理由はあるのですか?

人間は、思考をすることができますよね。そしてそれは大きな武器となっています。ただ、人間は思考できるので、内面的なところが強すぎるんです。そして、文字が人間に負けてしまうんです。したがって、私は「文字」と「人間」を合わせて描かないのです。
一方で、「生き物」にある単純な生命力というのは、「生きることへの執着」をダイレクトに発してくれます。

 

■ご自身の経験を通して、アーティスト活動に必要と思うことをお聞きしても良いですか?

とにかく修練を重ねること。本物を見て、そこから感じて、自分を信じて描きまくる。これを繰り返し行わないといけないと思っています。
あとは、新しいチャレンジをしていくことも必要と考えています。もちろん、自分が良いと思えた作品しか発信はしませんが、黒色以外の色が入った作品づくりにも挑戦をはじめたりしています。

『眞×軍鶏』(Instagramより)
https://www.instagram.com/p/CWvfMaUJig2/

 

■アーティスト活動を行うにあたって、アーティストのあるべき姿を考えられているのですね。

そうですね。アーティストの中には、自分が病んでいる状態の方が良いという考えの方もいると思います。私としては、アートを創作する上で、自分自身は健全でありたいと考えています。色んな知識もある程度備わっており、自分が伝えたいものがある人が創り出す作品こそ、良い作品になる思っています。このためにも、常に自分自身の成長も、常に求めていきたいと感じています。

 

■現在、アーティスト活動をしながら専門学校日本デザイナー学院 九州校にも通われていますよね。学校に通うことで、何か得られるものはありますか。

学校で教えてもらえることは多くあります。その中で特に強く良かったと思えることは、アーティストやデザイナーなどを目指す同年代の若い友人たちから、多くの刺激を受けられることです。私もまだ若いのですが、同年代の方から刺激を受けることで、アーティストとしての幅を広げられていると感じています。

 

■最後に、今後の活動について教えてください。

今後は、これまでの活動に加えて、東京での活動も増やしていきたいと考えています。そして、より広く、世界へ向けての発信もしていきたいですね。
作品や最新の情報などはInstagramでも発信していますので、ぜひご覧ください。

 

新穂 文健(Fumitake Niibo)

2001年生まれ。鹿児島県阿久根市出身のアーティスト。
書道と墨絵を組み合わせた、躍動感溢れる作品を手掛ける。
2020年11月に初個展『SUMI』、2021年5月には10代で最後の個展『生きる道』を開催している。鹿児島酒造株式会社の芋焼酎「あくねの光」のデザインも担当している。

【新穂文建Instagram】
@ni_bo.fumitake
https://www.instagram.com/ni_bo.fumitake/?hl=ja

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