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文字旅~学校編~
皆さん文字は好きですか?何かをデザインするときには伝えたい想いによって文字の形を変えています。
文字旅では建物、街いたるところで使用されている文字(フォント)について巡り、語っていきます。
今回の舞台となるNDS校舎の教室やスタジオには、大きな数字で「01.」「02.」とか、黒い字や透明な字「Warhol」とか「Kamekura」とか、古今東西の名デザイナーやフォトグラファーの名前が表示されています。これらにはその著名な方がどんな作品を手がけたのか調べて、知ってもらうきっかけになればという学校の思いが込められています。これらの表示に使われてるのは何というフォント?どんな意味を持っているのか解説していきます!
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「02. Mapplethorpe」
まずは定規とコンパスで作図したような、幾何学的なデザインの「FF DIN(ディン)」。
「DIN」とは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut Für Normung)のことで、ドイツの道路標識や公共サイン用に使われ、その後一般にも普及したフォントです。シンプルで飾り気のない機械的なフォルムは、ドイツらしい機能重視・謹厳実直な感じがします。
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「STUDIO」
大きく表示された、こちらは「Frutiger(フルティガー)」。「ユニバース」や「アベニール」など多くの名作書体を生み出したアドリアン・フルティガーの名が付けられたフォントです。もともとはフランスのシャルル・ド・ゴール空港のサイン用書体としてデザインされ、非常に視認性がよいので、日本でも駅のサインなどに広く使われています。
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「information」
・・・そういえば学校の正面玄関に入ってすぐの受付には「Univers」が。
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〈エレベータ内〉
エレベーターの階数ボタンの数字は「Gill Sans(ギル・サン)」。書体デザイナーとしてはもちろん、彫刻家・画家・カリグラファーとしても名高いエリック・ギルによる、イギリスを代表するようなフォントです。幾何学的でありながら人間味も合わせ持ち、ギル独特のクセを匂わせつつイギリス風な気品も漂います。エレベーターで上の階に昇ると同じように、スキルアップも目指していけそうですね!
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「学生ホール」
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「貸出受付・出力センター」
和文フォントにも注目しましょう。これら教室以外の部屋の表示はモリサワの「新ゴ」。広いフトコロで字面が大きく設計された、現代的なゴシック体の代表格です。雑誌などの印刷物をはじめ、広告、駅のサインなど分野を問わず広く使われている、非常にポピュラーなフォントです。
ちなみに、並記されている欧文はフルティガー。
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「図書室ご利用案内」
図書室の利用案内は「游ゴシック」。「ヒラギノ」などを制作した字游工房によるデザインで、「新ゴ」とは対照的にフトコロの締まった骨格の、柔らかい雰囲気を持つスタンダードなゴシック体です。落ち着いた印象の書体なので、静かに読書をする空間にぴったりといえます。
いかがでしたか? 掲示されているポスターなど、街中で目にするフォントは他にもたくさんあります。気になる字があったら、どういうフォントか、ちょっと調べてみることをオススメします。きっと面白くてタメになる発見があること請け合いです!
文・木村文敏
タイプデザイナー。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。専門はタイポグラフィ。フリーランスでフォント制作をはじめ、ロゴデザイン、活版印刷、カリグラフィなど、文字に関わる仕事を幅広く手掛ける。