『ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築』レポート

六本木ヒルズ東京シティビューにて、2023年3月17日(金)から6月4日(日)まで、『へザウィック・スタジオ展:共感する建築』が開催されている。

ヘザウィック・スタジオとは

トーマス・ヘザウィックにより、建築や都市計画・インテリアデザインなど従来の枠組みに捉われないクリエイティブ・スペースとして1994年にロンドンで設立。革新性溢れる世界各国の多数のプロジェクトを手がけ、世界で最も注目されているデザイン集団のひとつ。

本展は、そんなヘザウィック・スタジオにフォーカスし、主要プロジェクト28件を紹介する国内初の展覧会だ。
「ひとつになる」「みんなとつながる」「彫刻的空間を体感する」「都市空間で自然を感じる」「記憶を未来へつなげる」「遊ぶ、使う」といった6つの観点で構成されている。コンセプトムービーやミニチュア、ドローイング等が用意され、各プロジェクトを振り返ることができる。
今回は代表的な作品を紹介するとともに、その見どころをレポートしたい。

上海万博英国館(2010)

英国の歴史や伝統に注目し、王立植物園キューガーデンのミレニアムシードから着想を得たパビリオンは、毛に包まれた「種の聖殿」というコンセプト。

外壁の表面が無数のアクリル棒で覆われているインパクト抜群の外観。
内部まで繋がっているそのアクリル棒の先端には、25万個の種子が埋め込まれており、光に照らされたパビリオン内でそれを見ることが出来る設計だ。

会期中に700万人以上がこの英国館に訪れ、200以上の出展パビリオンのなかで万博最優秀賞であるパビリオン・デザイン部門の金賞を受賞した。

「Auro」(2021)

スタイリッシュな外観が目を引く、電気自動車<エアロ>。
入口すぐに原寸大模型が設置されており、その近未来的な外装と居心地の良い内部空間に、ワクワクする未来を想起させられる。

外見だけではなくコンセプトもイノベーティブだ。化石燃料による大気汚染物質を一切排出しない、電気自動車。さらに、微細なほこりを捕集するフィルターを搭載することで、周辺の空気を綺麗にするといった特徴もある。走れば走るほど、地球に優しい車なのだ。

その他にも、ロンドン五輪の聖火台やニューヨークの野外劇場、Googleの新社屋、アフリカの現代美術館など先進的で美しい様々なプロジェクトが紹介されている。
彼らの制作したものを見ると、オフィスビルや商業施設といった既存の「建築物」に対する考え方が少し変わるような、そこに暮らす人々を豊かにする「デザインの力」を強く感じることができる。都市開発が関係する足の長いプロジェクトとなるとその苦労は計り知れないが、驚きと共感を生み出し続ける仕事ぶりに感嘆させられる。

そして、ヘザウィック・スタジオが日本で携わっているプロジェクトが「麻布台ヒルズ」だ。本展でもその概要が紹介されており、低層部のデザインをヘザウィック・スタジオが設計するそうだ。2023年中に竣工予定なので、本展示を見たら一層その完成が待ち遠しくなるだろう。

建築や都市デザインに興味がある人はもちろん、グラフィックや海外のプロダクトデザインに関心がある人にもオススメの展示だ。

文・写真 ライター中尾

展覧会概要

会  期:2023.3.17(金)~ 6.4(日)会期中無休
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:00)
会  場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
U R L:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/heatherwick/

 

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