ネットミュージックシーンでも活躍!現代のおしゃれとレトロの使い手「木澄玲生」ワールド〈前編〉
今回は、若手フリーイラストレーターの
木澄玲生(きすみ れい)さんを取材させていただいた記事を〈前編・後編〉でお届けします。
レトロなのに新しい、
ポップなイラストが人気の木澄さん。
ネット音楽業界でも活躍し多忙な彼女に、オンラインにて取材させていただきました。
木澄 玲生/Kisumi Rei
1998年生まれで、現在フリーランスイラストレーター・デザイナーをされていらっしゃいます。
専門学校日本デザイナー学院九州校卒業後、フリーランスのイラストレーターとして本格的に活動を開始し、現在活動2年目を迎えております。その実力が認められ、「ILLUSTRATION2021」(翔泳社)や「ネオレトロ イラストレーション」(PIE international)掲載作家にも名を連ねました。
各SNSやpixiv、Skebをはじめとして、様々な場でイラスト作品を公開しており、制作依頼の受付やグッズ販売を行ってきました。
バーチャルシンガー花譜、可不、理芽、存流など数々のMVイラストや、バンダイナムコエンターテインメントが展開する音楽原作キャラクタープロジェクト「電音部」にてジャケット及びコラボグッズのパッケージイラストを担当するなど、音楽の世界でも目覚ましい活躍を見せています。
*Twitter/@kisumirei41
*Instagram/@ kisumirei
活躍の場を広げ続けている若き才能に、これまでの歩みとこれからについてお話を伺いました。
現在の活動について
編集部|
現在はどんなお仕事をされていますか?
木澄さん|
音楽関係が多いですね。
サブスクリプションのアルバムのジャケットにあたる部分を描かせていただいたりとか、あとは歌で活動されているVTuberさんの「歌ってみた」動画用のサムネイルのイラストを描かせていただいたりすることが多いですね。
編集部|
そういったお仕事は
どのような形で依頼が来るんでしょうか。
木澄さん|
「ILLUSTRATION」っていう書籍が毎年12月に出るんですけれども、それに掲載させていただいた後ぐらいから、企業さんからお仕事のご相談をいただくようになって、たまたまだと思うんですけど音楽系が多かったって感じですかね。
編集部|
pixivのFANBOX*も置いてらっしゃいますよね。
(*PIXIV FANBOX…クリエイターが自身で運営できる創作活動支援のためのファンコミュニティ)
木澄さん|
はい、今年の3月ごろから始めました。今年でフリーランス2年目なんですけど、だいたい1年を通してイラストレーターの仕事のルーティーンがなんとなく身についてきて、ある程度余裕が出てきたので、自身の活動とかイラストの制作とかをちょこちょこ小出しにしていく場が欲しいなと思ってFANBOXを始めました。
「木澄玲生」の創作について知りたい人とか、応援して下さる気持ちがある方に見て欲しいなーと思って。
FANBOX*https://kisumirei.fanbox.cc/
編集部|
では、お仕事をする日の
ルーティーンはありますか?
木澄さん|
余裕がある時と締め切り前とでスケジュールはそんなに変わらないです。
大体朝の3時か4時くらいに起きて、1時間ほど体を動かした後、メールの返信だったり請求書とか発注書とかの書き物をして、そのあと朝食を取り、11時から17時くらいまでずっと絵を描き通しですね。
でも夜に活動されるクライアントさんもいらっしゃるので、そういう方と直近でやり取りしている場合には、その時間まで起きて作業することもありますね。クライアントさんの状況に応じて対応していきます。
編集部|
ちなみに朝からやる運動って何されてるんですか?
木澄さん|
筋トレとストレッチとランニングですね。デスクワークの人間は本当に体動かさないとダメですよ。
それで腰をダメにしてるクリエイターさんも多いので、高い椅子に座ってるから良いって甘えてちゃダメなんですよ!
クリエイターを目指す方へ、「高い椅子に胡坐(あぐら)をかくな」です。
編集部|
私も絵を描くので耳が痛いです…。
でも可愛らしいイラストとは対照的にとてもストイックでカッコいい方ですね。
作品制作について
編集部|
1枚描くのにどのくらいかかりますか?
木澄さん|
お仕事の絵だと実際に作業してる日数としては
3日くらいですかね。
お打ち合わせとか途中経過の確認とかを挟むので納品までの日数としては結構かかるんですけど、実際の制作期間としては3日~5日くらいです。一番時間がかかるのは線画と色塗りかなあ…
編集部|
制作の中で行き詰まることってありますか?
木澄さん|
今のところ明確に行き詰まったなあって思う事はないですね。
行き詰まるのにもいくつか種類があると思うんですけど、今自分でどの理由かってわかるじゃないですか。
クライアントさんから提示されている情報が少なすぎて筆が進まない場合には、より細かい指示をいただくようにします。クライアントさんの要望をしっかり確認することで自身も制作しやすくなるので。
自分の中から良いポージングや構図が浮かばなくて作業に取り掛かれない場合は、映画だったり漫画だったりアニメだったり何でもいいんですけど、観て、いいなって思ったものを自分の中にストックしていく作業を1日設けたりします。
どちらもだいたい1日2日で解決しちゃいますし自分の中に描きたいものがたくさんあるから、悩んだりってあんまりないですね。
今の私は、ですけど(笑)
編集部|
作品制作において影響を受けた作品はありますか?
木澄さん|
CLAMP先生の「カードキャプターさくら」が一番影響を受けてると思いますね。
あとは市川春子先生。「宝石の国」の作者様って言うと伝わると思いますが、その先生の描く線とか構図だったりは結構影響受けてますね。あと高田明美先生。「魔法の天使 クリィミーマミ」とか1981年版「うる星やつら」のキャラクターデザインをされている大御所の先生です。
色彩の部分だと「セーラームーン」とか「カードキャプターさくら」のアニメから影響を受けてますね。
編集部|
やっぱりちょっとレトロチックな絵柄がお好きなんでしょうか?
木澄さん|
そうですねえ、自分では特にレトロとは思ってなくて、どっちかっていうと2000年~2010年代の作品が一番古く感じるかなあ。
物心ついたころに見てた作品ってもうセル画じゃなくてデジタル着彩とかになっていて、線の感じも全然違うし、むしろそのころの作品が一番古く感じていて。
逆に自分が生まれる前の作品が一番新しく感じて、だからいいなあって思って今取り入れてますね。
だから自分より年上の方から見ると「レトロ」って感じるのかもしれないけど、年下の方たちからはこれが今の最先端よなあってリアクションをいただきます(笑)
編集部|
木澄さんが描かれるキャラクターってやわらかい表情が多いように感じるんですが、表情への拘りってありますか?
木澄さん|
めちゃくちゃあります!
最近世間では暗めな雰囲気の作品が多い気がしていて、イラストの業界でもその風潮を感じています。
それもあってなるべくポジティブな感情を絵の中に込めるようにしてます。
編集部|
先ほど伺った作品から受けた影響もあって、こういった雰囲気のイラストを頭で考えて描かれているのかなあと思ったのですが、
木澄さん|
いやあ、感じ取っていただけて光栄です。
これまでの経験
編集部|
お仕事する中で、
締切の短さで驚いたことってありますか?
木澄さん|
あー、ありましたね。
とてつもなく短納期でお声がけいただいたんですけど、その時は納期が短いからその分報酬の交渉をしましたね。いわゆる特急料金です。
編集部|
たしかにそういった相談も大事ですよね。
木澄さん|
じゃないと頑張りに見合った対価を貰えなくなってしまうので。
基本的に短すぎる時は受けないんですけど、普段お世話になってるクライアントさんで、お互い信頼関係があるという前提で、しっかり交渉もして、依頼を受けました。
編集部|
ちなみに、イラストレーターを目指そうと思ったのはいつ頃からですか?
木澄さん|
目指そうと思ったのは、高校生の時ですかね。
「イラストレーター」っていう明確な肩書きじゃなかったと思いますけど、絵を描いて生きていくんだっていう気持ちはそのころから自分の中にあって。クリエイションにもいろいろある中で、「まあイラスト描いてるしイラストレーターよなー」って思いながら。
高校2年生くらいじゃないですかね。「やっていかなきゃ!」っていう切羽詰まった感じじゃなくて「やっていけたら楽しそうよなあ、ふふん」って結構楽観的に。今も楽観的ですけど(笑)
編集部|
では専門学校で学んでいく中で明確になっていったんでしょうか?
木澄さん|
実際高校生の頃から絵の仕事は何回かしていたので、いつ明確になったかは分かんないんですけど…。
でも専門学校の先生に言ってもらった教えで良かったなあって思ってるのはいくつかあって、仕事する中でそれが役に立ってるなって感じることもありましたね。
編集部|
なるほど。
ちなみに次の質問ですが、無いですって言われそうなんですけど…
苦手なことを克服するためにしたことってありますか?
木澄さん|
無いわけ無いじゃないですか!(笑)
人間ですもの。
これは明確に克服しようと思ってしたことがあって。
人前でしゃべったりとか、こうやって初めての方と通話でもお話ししたりするのとか、専門学校1年生の頃まではすっごく苦手で。
もっと性格も暗かったし、人前に出るのとか考えられないって感じだったんですけど…コミュニケーションの授業あるじゃないですか。そこで出会った先生のおかげで、私もうちょっとしっかりしなきゃなって思いました。
もっと人前に出て話したりとかコミュニケーション取れるようにならないと社会人としてやっていけないなって思わせてくれたので、それからは意識的になるべく話すようになりましたね。
編集部|
そうして身に着けたコミュニケーション力が今につながってるってことですかね。
木澄さん|
本当にそうですね。クライアントさんとこうやって通話で打ち合わせすることも多いんですよ。
そういう時に例えば自己主張できなかったりとか、聞きたいこと聞けなかったりするとお仕事にならないし、自分に不利な条件で契約してしまう可能性もでてくるだろうと感じました。
イラストレーターとしてやっていくために、イラスト以外の努力も絶対必要で、自分の意見をしっかり伝えたりするのもすごく大事ですね。
編集部|
先ほどの特急料金の交渉なんかも自分一人でしないといけませんもんね。
一番初めに、音楽関係のお仕事が多いっておっしゃってましたけど、音楽関係以外のお仕事って今までどんなことをされましたか?
木澄さん|
私、企業さんだけじゃなくて個人からのお仕事も受け付けていて。
あんまりプロのイラストレーターさんたちって個人からの依頼は受けてない人が多いんですけど…
編集部|
それは個人の方からテーマとかの指定があって、それに対してイラストを描くって感じですか?
木澄さん|
だいたいは「お部屋に木澄さんの絵を飾りたいから描いてください」といただきます。
自分の絵を描いてほしいってお写真を送ってくださる方もいれば、依頼される方も絵を描く方で、いわゆる「うちの子」、その方の創作キャラクターですね。その子を「木澄さんの絵柄で描いてほしいです」って資料を添付して送ってくださる方とか、色々です。
あとは個人で活動されてるVTuberの方とか。依頼は基本的にメールで受け付けています。
〈前編〉はここまでとなります!
フリーランスでの作家活動について、木澄さんのストイックな部分が伺えましたね。
次回はそんな木澄さんのプライベートな部分やこれからの活動に迫っていきますよ。
ぜひ〈後編〉もお楽しみに!!