いとうみちろう先生が教える!「美術解剖学入門」ー実は難関!?肘の描き方ー

今までさまざまな人体のパーツについて書いてきましたが今回は「肘」です。

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肘は簡単なようで難しい、学べば学ぶほど分からなくなる、上手く描こうとするとなぜか逆に描けなくなってしまう、そんな不思議な?部位なのです。

ですからせっかく今まで描けていたのに、難しく考えて分からなくなってしまうことに注意です。ただしご心配なく。

「もう肘のことなんか分からねー!!」となったら、↓のイラストを見て今まで自分がちゃんと肘が描けていたことを思い出してください。このシンプルさこそが最大の基本です。

さて、それではここからが本題です。

今回お伝えしたいのは以下の3点です。それでは順番に見ていきましょう。

ひとまず単純な構造だけおさえておこう

今回1番お伝えしたいのは以下の単純な点です。解剖学の豆知識として、この肘の山と谷の構造だけ押させておけば、相当に広範囲な表現に応用が利くはずです。

これらはいささか平面的ですが、とても覚えやすいです。「いきなり立体的に複雑な構造を理解しようとするとかえって頭に入らず身につかなかった」というのが私の体験談なので、今でもこれくらいが頭に入っていれば十分仕事でも使えています。後は資料で補えばよいでしょう。

というわけで今回の話はここまで!・・・というと物足りない方も多いと思うので、次からはいよいよ、肘が難しい所以の部分に入っていきます。

肘には3つのピークがある

肘には3つのピークがある!というと実はそう単純な話でもないのですが、ひとまずこのまま話を進めます。

これは肘の骨格を単純化した図です。1本の骨に2本が接続しているというのも複雑ですが、これがねじれたり筋肉がついたりするのですからもう難しいです。

で、ピークが3つあると言いましたが、特にこういったところが出っ張って見えます。

はい、もう難しい!

ここではなんだか出っ張っている箇所があることだけ知っておけばいいです。私の場合、②と③は感覚的に理解できていましたが①の出っ張りは知らなかったので、特にそこを意識したりしていました。

それではさまざまな角度の肘と各ピークとの関係を見ていきましょう。

さて、どうでしょうか?肘の外見と3つのピークとの関係性はよく分ったでしょうか?

いや余計に混乱したわ!と思った方もいるでしょう。さらには3枚目や4枚目はピークが4つあるようにも見えますね。

「肘は難しい」「考えるほど分からなくなる」と言った理由を感じていただけたのではないでしょうか。もしリアルな表現を求めるなら「単純化して理解する」だけではどうしてもカバーしきれない部分が出てきてしまいます。ということで最後のトピックです。

リアルな肘には一手間かけよう

ここまできて、肘が実は難しいことが分かったと思います。もしそうだとしたら、リアルに肘を描きたければその都度写真を参考にするのをお勧めします。「お肘様」を攻略するのはそう簡単なことではありません。ここは面倒なようでも写真等に頼りましょう。今ではスマホもwebカメラもありますので、いくらでも好きな角度で撮ることができます。参考にできる画像やモデルなども、ネット上でいくらでも見つけることができるでしょう。実際私もよくスマホやらwebカメラやらでパシャパシャ撮っています。その方が早いし説得力のある絵が描けます。

というわけで肘には一手間かける意識が大事という話でした。

おわりに

肘の描き方ということで、普段あまり意識せずにさらさらっと描いてしまうことが多いのですが、ひとたび考え出すときりがなく難しいです。骨格や筋肉の構造が完璧に頭に入っていて、いつもありありと内部・外側の両方で想像できる、というのが理想かもしれませんが、それはかなり難しいはずです。私もとてもそこまでは分かりません。

そこで今回は

・ひとまずこれだけ覚えておくのがおススメということでこの画像。

・もう少し踏み込んで、肘の凹凸を形成する内側の構造として3点ピークの以下の画像。

・これくらい頭に入っていたら、あとはもう写真参考にして描けばなんでもいけるよ!

ということで3章仕立てでお話しました。もし何か参考になることがあったとしたら幸いです。

 

あ、でも忘れないで。みなさんはすでに肩を自由に描けていたはずなのです。

なんだか肘が描けないと感じたときはいつでもこちらのイラストを思い出してください。

 

参考:「スカルプターのための美術解剖学」ボーンデジタル 2016 アルディス ザリンス,サンディス コンドラッツ

NDS講師 いとうみちろう
イラストレーター。児童書や絵本、教科書や雑誌、アプリ、カード、舞台美術などさまざまな分野を手掛ける。教育関係の仕事の傍らフリーランスとして活動をはじめ、これまでカルチャーセンターや美術学校などで、小学生から高齢者まで幅広い年代を対象に講師として指導。

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