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いとうみちろう先生が教える!「美術解剖学入門」ー短時間で全身を描くジェスチャードローイングー

ジェスチャードローイングってなあに?

皆さんはジェスチャードローイングをご存じでしょうか?

最近、絵をたしなむ人たちの間でよく知られるようになってきた練習法?表現法?で、ある意味ちょっと流行っていると感じています。

そもそもジェスチャードローイングとは何か?説明するといろいろあるのですが詳しいことは後述するとして、誰でも手軽に実践できるので、まずはやってみることをお勧めします。Youtubeで「ジェスチャードローイング」と検索するとたくさんの動画が出てきますのでその一つをやってみましょう。

動画に従って1分、2分、5分と短い時間で次々と人物を全身で描いていきます。上手く描こうとかそういうことは気にしなくていいので気楽に実践してみください。

この「短い時間で」というのと「全身を描く」というのがジェスチャードローイングではきわめて重要で、むしろ短時間でこそ捉えられる、感じられる、表現できるものがあり、細部にはこだわらず、より大きな形、流れ、勢いといったものを大事にします。最初はなかなか全身が描ききれないこともあるかもしれませんが、そこは単に慣れと場数の問題です。

で、細部にこだわらないので「ラフでOK」です。むしろラフなのがいいのです。「質より量」が大事です。上手く描こうとしなくていい分、たくさん描いていると自然と上手くなります。逆に気負うとぜんぜん描けなくなるので気楽な感じがお勧めです。細かい線を小刻みに描くハッチングの手法ではなく、勢いのある長めのストロークを意識して、のびのびと線を引いてみましょう。それはジェスチャードローイングでは人体の勢いや、仕草・ポーズのもつ流れというものを重視するからです。

そして、正確に描こうとするよりは、むしろ感じたものを表現しましょう。仕草、姿勢、体形、身体のラインなどはむしろ誇張するくらいでちょうどいいです。あー荷物持ってるなーとか、踏ん張ってるなーとか、のけぞってるなーとか、うなだれてるなーとか、戦ってるなーとか、食べてるなーとか、そういった雰囲気を強調して表現できると、感じた内容が伝わる絵になっていきます。この「伝わる絵」を描くというのが大きな目標一つです。

こういったことを意識してジェスチャードローイングをしていると、さまざまなことが身についてきます。私がやってみて感じた効果は、人物表現が自在になる、イキイキのびのびと描けるようになる、大事な部分・伝えたい部分をより強調し、不要な部分を省略することができるようになる・・・といった点です。あるいは普通に前より上手くなることでしょう。

※動画をみながらやった筆者のジェスドロ。やはり体の勢いや特徴を特に抑えたいところ。トーン(もしくは塗り)は基本不要です。

さて、いろいろ言ってきましたが、実は私はジェスチャードローイングの専門家ではありません。見よう見まねで覚えたことや、素晴らしい先生方のセミナーやワークショップ、あるいは動画等で得た知識程度でお話しています。ですからここでは専門の先生方を紹介しましょう。

まずは、もはやジェスチャードローイングといえばこの人!といえるような方で砂糖ふくろう先生です。砂糖先生は定期的にオンラインで8つ勉、3つ勉といわれるセミナーを開催していたり、ソーシャルメディアで情報発信も多くされています。ツイッター上には非常に分かりやすい情報が画像付きでたくさん公開されていますし、良くまとまったご著書も出版されています。まずは砂糖先生の発信している情報を追いかけているだけでも、たくさんのことが得られるはずです。砂糖先生が一時期スランプで絵が描けなくなってしまったときにジェスチャードローイングと出会って、心の重りが取れて気持ちが楽になったというエピソードが私は好きなのですが、そういった体験に共感できる絵を描く方も多いのではないかと思います。

そしてもう一方は、砂糖先生が師匠と公言してはばからない栗田唯先生です。砂糖先生をはじめ栗田先生に学んだたくさんの方々が現在活躍されています。そういった意味では日本で一番のジェスチャードローイングの先生!と言ってもいいのではないでしょうか。私も栗田先生の講座を受けたことがあるのですが大変勉強になりました。何よりすごく楽しかったです。冒頭でお伝えしたジェスチャードローイングの内容も、そこから聞いた内容等を私なりにまとめたものです。栗田先生にはいくつかYoutubeの動画もありますのでこちらもすごくおすすめです。

また下記リンクのツイッターの一連の画像にも非常に示唆的な内容が多く含まれているのでぜひご覧ください。

さて、今回は効果的な練習法としてジェスチャードローイングの紹介をしました。私自身「どんなに時間をかけて丁寧に一体の人物を描くことを繰り返していても、自分のキャラクターを思ったように自由に表現できないなー」と感じていたのですが、その解決法の一つとなったのがジェスチャードローイングです。

はじめは気軽に動画を再生して時間内に描くことを繰り返していましたが、だんだん興味や意欲が高まり、自分でいろいろ調べたり、専門の先生の講座を受けたりするようになりました。先生方によると「ジェスドロで一万体描くとよい!」みたいな話をよくされているのですが、非常に簡単なラクガキのようなものでも一体にカウントされるので一万体も決して夢ではないそうです。私はぜんぜんそこまで描けていないですが、思い出したようにジェスチャードローイングをするようにしています。

本件の記事が皆様の画力向上、現状打破、あるいは絵を楽しむ上でのヒントの一つとなりましたら幸いです。

 

NDS講師 いとうみちろう
イラストレーター。児童書や絵本、教科書や雑誌、アプリ、カード、舞台美術などさまざまな分野を手掛ける。教育関係の仕事の傍らフリーランスとして活動をはじめ、これまでカルチャーセンターや美術学校などで、小学生から高齢者まで幅広い年代を対象に講師として指導。

 

▼いとうみちろう先生の前回の記事はこちら

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