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【今月の図書】文学と写真の結びつきを辿り、キーワードで遊ぶ。『写真のキーワード——技術、表現、歴史 を読む』

文学と写真の結びつきから、作品作りを始めた作家は意外に多かった。今回のおすすめ図書『写真のキーワード——技術、表現、歴史』からは、「文学と写真」の項目でも発見があった。

 

『不思議の国のアリス』を書いたルイス・キャロルは、小説作品と同じくらい優れた写真作品を作っていた。ストーリーで出てくる逸脱な言葉遊びや、当時イギリスでよく知られていた教訓詩や流行歌をパロディするのも、彼の写真創作につながる。このような、文学者が写真を動機にして書き始める場合や、写真家が文学の世界に惹かれて撮影する場合のように、作品に様々なコノテーションができ、表現の幅が広げられる。

また、太宰治小説「人間失格」のはしがきには、こう語り始める。

私は、その男の写真を三葉、見たことがある。
一葉は、その男の、幼年時代、とでも言うべきであろうか、十歳前後かと推定される頃の写真であって……
第三者の視点で写真を見ながら、その感触を言葉に置き換えようとしている。
写真家で文学に興味を示して制作し始める米田知子は、こんな写真作品があった。歴史に翻弄された文学者やインテリたちをテーマにした「見えるものと見えないもののあいだ」というシリーズだ。制作していって、昨年の出来事で再び話題に上げられた「ペスト」を書いた作家・アルベール・カミュにも着目した。入念なリサーチに基づき、カミュの人生と文学活動の舞台であるアルジェリアを訪ねて、その場所との記憶を掴もうとした。
写真用語を網羅したほか、キーワードをめぐる逸話のような内容もある。まだまだ、発見がいっぱいあると思うので、ぜひ図書室で本書を手にとって読んでみてください。
『写真のキーワード——技術、表現、歴史』
用語を網羅したキーワード集
2001年出版
昭和堂出版社

文・田 凱
NPI講師。1984年中国生まれ、東京都在住。2014年日本写真芸術専門学校フォトクリティックゼミ卒業後、フリー。同年清里フォトアートミュージアムにて作品収蔵、2018年第19回写真「1_WALL」グランプリ。現在、作品制作に取り組みながら、日本写真芸術専門学校非常勤講師、武蔵野美術大学特別講師を務める。

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