• HOME
  • ブログ
  • 写真
  • 鹿児島から北海道までの旅から見えた、劣化し錆び朽ちゆく人工物と日本に残る「時代の痕跡」

鹿児島から北海道までの旅から見えた、劣化し錆び朽ちゆく人工物と日本に残る「時代の痕跡」

日本写真芸術専門学校の写真科フォトフィールドワークゼミで写真を学び、鹿児島から北海道まで国内を横断し撮影取材をしてきた手塚柊冴さんにお話を伺いました。

 

全国各地を旅しながら撮影を続けてきた手塚さん。いま取り組んでいる活動について教えてください

写真科フォトフィールドワークゼミに所属しており、3年次には国内フィールドワーク活動で日本全国を取材・撮影してきました。まずは鹿児島から広島まで海沿いを巡るルートで撮影取材に行き、大阪、そして中間ゴールの青森まで陸路移動で取材を続けました。交通手段の手配やスケジュール調整、取材のプランニング、宿泊先の予約などすべて自分でつくりあげる活動です。

無事、自分を含めたゼミのメンバー全員が最終ゴールの北海道に到着し、先日「国内フィールドワーク完了報告会」を行いました。いまは自分の撮影した作品を「Fading away」というタイトルで写真集の制作をしたり、作品の編集などをしたり、これまで撮影してきたことをまとめる作業を進めています。

 

まさに日本全国を舞台にした“フィールドワーク”ですね。国内を移動しながら撮影をしていくなかで手塚さんがテーマにしていたことは何ですか?

最初は日本の中にある過疎地域にアクセスし、古びた人工物を撮り続けました。誰も住まなくなった家、潮風にさらされ錆びた車、ゴミ捨て場に置き去りにされている自転車など。かつては新品で美しかったであろう人工物が自然の現象のなかで風化し、古く朽ちゆく姿を中心に撮影していました。

全国を旅する中で目にしたのは、レジャースポットやアミューズメント施設。その廃墟、錆びれた光景は、かつての日本の高度成長期からバブル崩壊による衰退を物語っているようでした。過疎地域や限界集落以外の都市部にも、多くの「廃墟」が存在していることに気づき、撮影の方向性も変わっていきました。

 

古いものや廃墟。何か影響を受けているものやきっかけがあったのですか?

両親の影響で、幼い頃から古いものやヴィンテージものが好きでした。70年代、80年代の音楽が好きだったり、古い型式の車を魅力的に感じたり。街を歩いてても、散歩をしてても、日常生活で無意識に「古い物」を探している気がします。

幼少時代に山や草原、湿地帯などに連れて行ってもらい、自然の景色や鳥を記録撮影していたのがカメラや写真と接点を持ったはじまりでした。なかでも鳥が好きで、鳥の図鑑を毎日眺めていたおかげで鳴き声を聞いただけでその鳥の種類がわかります。
なかなか出会えない珍しい鳥もいて、実は「死ぬまでに見たい鳥リスト」をつくっています。ついこの間、フィールドワーク活動中にそのリストの中にいる鳥に出会うことができ、めちゃくちゃ感動しました。

 

自然を体験しながら好きなものを撮り続ける毎日、最高な時間ですね。取材では大変なこともあったのでは?

大変だったのは、天候に左右されることが多いことです。想定していたスケジュールも雨で変更になったり、リュックには機材もたくさん入っているのでいつも体力勝負でした。

ただ、今回の全国を巡る取材経験を通じて、「自分が実現したいことのために行動する」ということの大切さを強く感じることができました。自分の興味・関心という枠を超え「これからの地球がどうなっていくのか」ということを考えるきっかけにもなりました。素晴らしい経験をすることができたと思っています。

 

今回の取材プロジェクトに自転車メーカーがスポンサーについていたと聞きました。

「KESIKI」KhodaaBloom

今回の自分の旅のルートを計画中、地図を見て気付いたのは公共交通機関で行動できる範囲に限界があることでした。地方にいくと、電車やバスで網羅できるのはほんの一部で、自分が撮りたいものや景色を想像したときに「自転車移動」がベストだと考えました。

ホダカ株式会社様に自分の企画を持ち込み、自分が全国で撮る美しい景色写真の提供やSNS宣伝を条件に、当時まだ発売前の最新の自転車「KESIKI」をスポーツバイクブランドKhodaaBloomより無償提供していただくことになりました。

特に自分の場合は、錆びれ劣化した物や建築物を探していたので潮風のある海沿いを選んで移動プランを立てていました。実際に旅をしてみて、自転車移動だったからこそ出会えた景色がたくさんあり、今回のご縁に感謝しています。

 

撮影スキルを磨くだけでなく、社会や世界の中で自分が見つけたテーマと向き合う学生生活になったことと思います。これからの目標はありますか?

「自分の知らない世界に触れたい」と思って入学したNPIのフォトフィールドワークゼミ。1年生ではカメラの撮影基礎を学び、2年生になって幅広いジャンルの写真家の作品を見る機会がありました。自分の作品を言葉で伝え表現することの難しさや、コロナ禍で海外に行けない苦しさも味わいました。ですが、いま自分に与えられた環境の中でどう行動していくかが大事だと思っています。
これからは自分の作品制作を続けていく一方で、誰か人のため、企業のためになるような仕事をしていきたいです。

 


▼NPIフォトフィールドワークゼミ国内FW完了報告会の様子はこちら

 

@shugo_photograph

関連記事