鉄道撮影紀 ~東武鬼怒川線のSLを追う~
2022年1月3日
今回は東武鬼怒川線を走る「SL大樹」を撮影する。
SL大樹とは、2017年8月10日から東武鉄道の下今市駅~鬼怒川温泉の12.4km間を、衰退してしまった日光・鬼怒川エリアの観光事業活性化のためにSL列車を復活させたもので、2020年10月からは、指定された日に東武日光へ行く「SL大樹ふたら」も運転されている。
通常土日祝日は下今市~鬼怒川温泉を2往復運行しているが、年始の3日間は東武日光を発着する「SL大樹ふたら」が増して運行していて、朝から夕方まで走るため様々なシーンを撮影する事が出来、また冬季はスチームが良く見えるので、見栄えのする撮影が期待できる。
そして、日没が早いこの時期に沿線の各所でイルミネーションが行われており、特に「倉ケ崎SL花畑」では5万5千球ものLEDが設置されている。
今回はこのイルミネーションをうまく利用していこう。
特急にて東武日光に向かう。
まずは、東武日光を経てその後鬼怒川温泉に向かう「SL大樹ふたら」を撮影する。
いわゆる駅撮りになるが、東武日光駅に進入するSLを記録しておきたかったのでホーム先端で撮影する。もちろん安全には十分気をつけて。
列車が折り返し運転する約30分間でスナップ撮影をして、「SL大樹ふたら」に乗り込む。
今回は新しく設置された展望デッキが付いた編成だったので寒かったが、展望デッキで風や煙を感じながら列車を堪能した。
鬼怒川温泉到着後、駅前で転車台にて転車作業が見られるが、今回それは見ずに路線バスに乗り、撮影のメインとなる「倉ケ崎SL花畑」へ向かう。
倉ケ崎SL花畑は、沿線の耕作放棄地だった農地を地元住民の方々がSL運転開始に合わせ整備した場所だ。
季節ごとの花々が咲き、冬季はイルミネーションにて植栽および管理運営がされている。
前述の通り、暗くなると5万5千球ものLEDが点灯する。
目的の列車が来るまで2時間半ほど時間があったので、ポイントを見つけつつ付近を歩いてみた。
今回この場所でSLを撮影する列車は3本、鬼怒川温泉行が1本、下今市行が2本。まずは鬼怒川温泉行が来る。
ここ数回、SL花畑の中で撮影をしていたので、今回はSL花畑の線路の反対側に行く。
この場所では望遠レンズで機関車のアップが、広角レンズで背景の山並みまで入れたカットが撮影できる。
まずは、望遠レンズで機関車をアップで撮影、逆光側になるのでSLのディティールが綺麗に撮れる。
次のSL列車は、1時間後の下今市行だ。
この待っている時間にも普通列車や特急列車の数本の列車が通るので、それらを撮りつつこの後の撮影の為に立ち位置の確認や調整を行う。
日が山に隠れた頃、1本目の下今市行が来た。
SL花畑側は山の陰になってしまい日陰で撮影しているような状態だ。
こちら側はもともと影側だったが、自分の背後の空がレフ板のようになりフラットな光になった。
車体の鋼板の歪みでハイライトの反射ができ、表情が出る。
SLの背後に入る日光杉並木街道の会津西街道杉並木が煙を引き立ててくれた。
撮影が終わり次の下今市行きを待つ。
この待っている時間にも普通列車や特急列車が数本通るので、それらを撮りつつこの後の撮影の為に立ち位置の確認や調整を行う。
日が落ちて辺りがだんだん暗くなり、また寒さも一段と厳しくなってくるので使い切りカイロで暖をとる。
あたりが真っ暗になってきた。
今日の最後の撮影となるSL大樹の下今市行が来る。
今回は列車を横から全部入れて撮影するので、線路からの距離が離れ、見かけ上の速さは遅くなる。
昼間のような高速シャッターではないが、動く列車の撮影なのでシャッタースピードはある程度早くなくてはならない。
かなり暗いが感度を上げて、露出の確認をする。
通過10分前、小さくドラフト音(SLのシュッシュッという音)が聞こえ始め、汽笛が鳴る。
これは3キロちょっと離れた鬼怒川橋梁を渡るときの汽笛だ。
その後も徐々にドラフト音が聞こえるが姿は見えない。
冬の日没後、地上が冷えてくると空気が地上と上空とで寒暖差ができ、音が遠くまで届くようになり、姿は見えないがSLの音が聞こえるという現象が起きる。
その後、砥川橋梁で汽笛が鳴り5分くらいして林の向こうにヘッドライトが見え、やっとSLが姿を現した。
青いイルミネーションを背にした列車が走ってきて、撮影エリアに列車全体が入る直前から連写する。
影になった列車からSLの煙が上がり、青いイルミネーションに照らされたシルエットが浮かび上がる。
背後の空は、残念ながらまだ暗く落ちきっていないが、良い感じで山と煙を見せてくれた。
12月まで行っていた「イルミネーション運行」は、SL下部に設置されたイルミネーションにより車体が照らされて浮かび上がるというものだった。
この日は消えていてSLは真っ黒の影だったが、点灯していたらもっと良い画が撮れたかもしれない。
撮影を終え、機材を片付けてバス停に向かう。
時間があったので、再度SL花畑に寄りイルミネーションを見てから下今市までバスに乗り、帰路についた。
SL大樹の詳細は東武鉄道に公式サイトがあるのでご覧ください。
運行予定や時刻、列車の編成などが載っており、撮影前にチェックしています。
東武鉄道公式サイト
https://www.tobu.co.jp/sl/
今回の撮影機材
Nikon Z7
Nikon D850
AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8G ED VR II
AF-S NIKKOR 24-120mm F4G ED VR
Ai AF Zoom Nikkor 20-35mm F2.8D IF
文・写真 :伊藤純一