グッドモーニングトウキョウ vol.2-2
様々なクリエイターに“東京の朝”をテーマにした作品を制作してもらう『グッドモーニングトウキョウ』。
今回は写真家のフジモリメグミさんの2回目。
▼前回はこちら
写真家 フジモリメグミ
30歳の誕生日に入籍をした。
そのまま祖母との同居生活をスタートさせた私たちは、毎朝の爆音ニュース、爆音ラジオの音に悩まされていた。耳の遠いひとにそんな話をしても仕方ないとわかっていても、どちらかというと夜型生活の我々にとってはジワジワとストレスの溜まる朝のはじまりだった。
祖母と同居することは想像以上に大変だった。彼女の生活のルールがあって、それが私とそぐわないこともある。例えばラップの代わりにお皿で蓋をすること、水切りネットをつかわないこと、私的にはゴミなのにそれを回収してしまうこと(戦中派はモノを大切にする)、ほかにも言い出せばキリがない、くだらない理由の小競り合いが多発するのである。
ひどく咳をしているので病院に行こうと声をかけると「もう行ったわよ」と嘘をついた。「じゃ薬みせてよ」というと無視をする。心配しているのになんでそうなの?とめちゃくちゃキレて、ばーちゃんを泣かせたことがある。それを隣でみていた夫は「もうそのくらいにしなよ」といってばーちゃんをなぐさめていた。それでも私は腹がたって仕方なかった。
あのときどんなに腹がたって、少しは老人らしく振る舞えよと怒り狂ったとしても、過去になってしまえば全て愛おしいのである。
喧嘩もいよいよ深刻になった頃、マンションの購入を決意した。いざ実家を出ることになるとたまらなく寂しくて、泣きながら引っ越しの準備をする。
出ていけ!と言い放ったばーちゃんも「やっぱりここに住んでいればいいじゃない。私寂しい」なんて言い出した。「私も寂しい、でも、もう買っちゃったよ」「賃貸にすればいいよ」なんて都合の良いことをいう。たくさん遊びにくるからさ、という約束の通り引っ越してからも週に1~2度は実家に帰るようにしている。お互いの新しい生活に慣れるのに時間がかかった。
つづく
フジモリメグミ
1986年東京都生まれ。2011年に「ワンダーシード2011」入選。2011年petit geisai#15 準グランプリを受賞。2013年よりTAP Galleryに所属。2015年にニコンサロンJuna21に入選。2017年ユカイハンズパブリッシングより写真集「apollon」を出版し、2018年「kairos」銀座/大阪ニコンサロンに入選、2019年に第4回epSITE Exhibition Awardのグランプリを受賞した。