菊池東太のXXXX日記 vol.8
わたしはナバホ・インディアンの写真でデビューした。
ところが今になってその写真に納得がいかなくなってきた。インディアンと呼ばれている珍しい人たちという視点で彼らを見、シャッターを押していた。同じ人間という視点ではないのだ。
撮り直しに行こう。最終作として。この考えに至った経緯も含めて、これから写真家を目指す若者たちに語ってみたい。
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アメリカの国立公園で最も古いのはイエローストーンだ、と前回述べた。ちなみに2番目に古いのは、前々回にあげたグランドキャニオンである。
日本はそれから60年近く遅れて、1934年に瀬戸内、雲仙、霧島の3ヶ所を国立公園に指定した。
アメリカは歴史的には若い国であるが、自然に対する考えという点においては、日本よりかなり進んでいるといえよう。
グランドキャニオンのスケールも凄いが、イエローストーン国立公園の間欠泉の数は世界のその総数の3分の2を占めているという。一つの公園で。
オリンピック国立公園はアメリカの北西端のワシントン州にあり、北海道の稚内とほぼ同じ緯度である。
このオリンピック国立公園には密林がある。ジャングルだ。熱帯降雨林というイメージだ。ところがここワシントン州は熱帯ではなく、稚内と同じくらいの緯度だから温帯である。
だが巨大な樹木からはハンギングモスが垂れ下がり、まさしくジャングルだ。
ハンギングモスというのは地面ではなく、樹木の葉に寄生し、そこから垂れ下がっている苔だが、なんとも奇妙な感じがする。ここは熱帯ではなく温帯なのに。
アリゾナ州のハイウエイ40号線沿いにある、ペトリファイド・フォレスト国立公園は名前の通り、化石の森だ。
公園内には化石化したメタセコイアが、そこらへんにゴロゴロと転がっている。2億年前はこの一帯はメタセコイアの森林だった。恐竜がメタセコイアの大木の間をのし歩いていたのだ。
森林が化石になって、しかも倒れている。恐竜たちの化石もそこいらへんに埋まっているのだろう。
サウスダコタ州にバッドランズ国立公園というのがある。酷い土地の公園という名前だ。
ここは先住民、スー・インディアンの行動範囲だ。別の天体のような感じの奇景というか光景だ。
こういった国立公園とは別に、あまり広くないという理由で、国立公園に指定されなかったのではないかと思われる場所がある。
アリゾナ州とユタの州境にあるアンテロープ・キャニオンがそのひとつだ。ナバホ・インディアンの保留地内にあり、かれらナバホが管理していて、トライバル・パーク(部族公園)という形になっている。
これは、北にあるレイク・パウエルに流れ込んでいた地下水系の跡でもある。
ところどころもれた太陽の光が照らしだす、その鮮やかなオレンジ色は、このコロラド台地の基礎である砂岩そのものの色である。
また、同じアリゾナ州のハイウエイ40号線沿いにメテオ・クレーター、別名バリンジャー・クレーターという、約5万年前に隕石が衝突してできた、世界で唯一ほとんど風化しないで残っている、アメリカ最大のクレーターがある。
実際には、直径40mほどの隕石の衝突の結果と考えられている。その大きさは直径1.4km、深さ170m。
月には数多くのクレーターがある。直径のわりに底が浅く感じられるくぼみだ。
ここもあれとそっくりな形状をしている。月のクレーターも数多くの流星の衝突によって形作られたのだろう。
流星といえば、メキシコのユカタン半島沖に落ちた直径1kmぐらいの流星の衝突によって、白亜紀に全盛を誇った地球上の恐竜たちは絶滅したといわれている。
vol.9へつづく