そこで起きたこと【震災で時が止まった場所が示すもの】

つい先日、Netflixシリーズ『THE DAYS』の配信が開始された。
2011年に起きた福島第一原発の原子力災害。その事実を基に描かれるドラマだ。
事故発生当時、現場で起こったことを世界中の人々に伝える力を持つ。

東日本大震災から12年。
それは日本に暮らす皆が共有した未曾有の危機だった。

今年4月、福島県南相馬市に住む友人を訪ねる機会があった。
震災が起きたとき、地震と津波と、その後の原子力災害の被害を受けた地域だ。

南相馬市を訪れた私に「見せたいものがある」と、友人はとある場所に案内してくれた。

「双葉町立双葉南小学校の旧校舎」
福島第一原発から程近い双葉町にある小学校。
ここは震災が起きて児童・教員が避難した後、皆が戻ることができなくなった場所だ。

震災以前にこの双葉南小学校に勤めていた友人は、時が止まったままの校舎を見て「あの頃の教え子達はみんな元気だろうか」とかつての児童たちに想いを馳せる。

窓ガラス越しに見えた教室の中には、地震発生当時の状況がそのまま残されていた。
黒板には“三月十四日(月)”と残されている。
週明け月曜日の日付から、大地震が金曜日の昼下がり、学校の下校時間であったことを思い出させる。

避難時に置いていったものはそのまま残され、校舎の周りには緑が生い茂っている。

 

校舎外壁から落下した時計。
時刻はずっと止まったまま。

かつてグラウンドであった場所は、雑草が生い茂る荒地となっていた。
草木は私の背丈ほどもある。
「校舎からグラウンドの児童が良く見えた」と友人はぼやく。
かつてはそうであったことを教えてくれるが、今は草木に遮られて見通すことはできない。

設置されたガイガーカウンターは、もう人体に害が無いことを示している。
それでも周辺の地域よりも少し数値が高かった。
福島第一原発が近いことを実感させられる。

この時間が止まった校舎を見て、いつの間にか止まっていた気がする私の「震災」に対する意識が動き出した。

Netflixの作品にも、こうして見た実際の現場にも、どちらにも伝えられるべきことが残されている。
大事なことに気付くきっかけがそこにはある。

 

文・写真:PicoN!編集部 黒田

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