OAC学生広告クリエイティブアワード2021 受賞者インタビュー Vol.1

公益社団法人 日本広告制作協会(以下OAC)が主催する『OAC学生広告クリエイティブアワード2021』で佳作を受賞した、専門学校日本デザイナー学院グラフィックデザイン科の渡邉 笑以さん(2022年3月卒業)にお話を聞きました。

聞き手に、専門学校日本デザイナー学院で講師を務め、文化庁メディア芸術祭優秀賞、世界ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞など、数多く受賞をされている齋藤 浩先生をお迎えして、詳しくお話を伺いました。

齋藤先生:渡邉さんおめでとうございます。佳作ですね。

渡邉さん:ありがとうございます。

齋藤先生:本当に良かったと思います。努力が報われたと言うか、ちゃんと伝わったよねって思って安心しているのですが、まずアイデアをどうやって出したかって言うところを聞かせて下さい。

渡邉さん:課題で30案出すってなったので、とりあえずパッと思いついたやつでも、変に考えずにそのまま描きました。

齋藤先生:描きまくったわけだよね。

渡邉さん:銭湯のことについて、アイデアを馬鹿なことでもシンプルなことでもとにかく出しました。

齋藤先生:例えば馬鹿なことっていうと?

渡邉さん:例えば、葛飾北斎の絵を銭湯にしちゃって、そこに人が入るとか。

齋藤先生:そのどんぶりは何?

渡邉さん:これ桶です(笑)

齋藤先生:桶か(笑)そういう風にノリで描いていくと、脳が活性化してきて、良いアイデアが出てくるっていうのやっぱあるんですよね。それもただの駄洒落じゃん!みたいなね。でも、こういうのがあったからこそ、このアイディアが出たということなんだと思います。やっぱり30案の壁っていうのが絶対あると思ってて。無理やり何が何でも30案アイデア出せよと言っているわけですが、そこで20案しか出せませんでしたっていう学生もいなくはないのですが、やっぱり20案だと全部外れの場合ってあるんですよ。30案出すと、これはっていうのが出てくるんですよ。実際僕の仕事でもそうなんだけど。

やっぱり天才は一発でアイデアを出せたりしますけれども、やっぱり凡人はね、数出さないと駄目ですよねって思う。特に学生は。もしかしたらこれから天才になるかもしれないけど、目覚める前はやっぱりどれだけ出すか、描くかで、数はすごく重要だなって思います。そこで、いくつに絞ったんだっけ?

渡邉さん:5案くらいです。

齋藤先生:最初のラフ①の段階でカタチになってるんだよね。

渡邉さん:グランプリの構図と似ているのもあるんですよね。

齋藤先生:同じアイデアを出している人って必ずいるんですよ。例えば同じように考えている人が5人いたとしたら、その5人の中でどうやって他の人と差別化するかっていうところを考えて作戦を練るわけだよね。

齋藤先生:ラフ②、ラフ③とおばあちゃんからアヒルちゃんに変わったりとかしたんだね。一発で完成品ができるかって言うとできるわけないんですよね。紆余曲折があってこそなんだよね。ラフ③できゅんが復活して、かなり完成形に近い感じだね。

さみしくなったら来てねが、知らないおばあちゃんと銭湯でお話をしていると。これは家庭という一つの社会や学校という社会の他に、第三のよりどころとしての銭湯を提示するっていう意味では良い作品だなと思います。家庭に居場所がない人も、学校に居場所がない人も、もしかしたらここに第三の居場所として銭湯があるのかもしれないっていう、そういう投げかけが非常に感動しましたね。

9月の半ばからアイデア出しをして、4週間ぐらいでアイデアを一気に出して作って、確認してもっかい作って確認してっていう、主観と客観を行ったり来たりみたいなことがすごく上手く出来たんじゃないかなって思っています。正直どうでした?このきゅんが選ばれたってことは?

渡邉さん:選ばれるなら、さみしくなったら来てねの方だと思っていました。でも、若者に向けて広告として出すってなったら、きゅんの方がロマンがあるというか、広告としてはそっちの方が良かったのかなって。

齋藤先生:若者って一言で言ってもいろんな若者がいるからどういう若者なのかなっていう、その切り口の異なる正解をハイクオリティなレベルで2案提案できたってことだと思っているので、そこが多分信用を勝ち取ったんじゃないかなって思いますね。きゅんのアイデアの元ネタというか、どういう時にあれが降りてきたの?

渡邉さん:ラフを出している時に、自分だったらどうすれば銭湯を楽しくなるかなって。

齋藤先生:やっぱりイケメンいたらね(笑)

渡邉さん:そうですね(笑)こういう出会いがあると素敵だなっと思って出しました。

齋藤先生:銭湯がお湯があって、あったかくて、気持ちいいのはもう誰でも知ってることだから、いちいち言う必要なくて、その上でどんな付加価値がっていう。実際に銭湯には行ったわけでしょ?

渡邉さん:月1くらいで。

齋藤先生:あ、行ってるんだ。習慣として、銭湯の良さみたいなものが染み付いてると言うか、実体験がアイディアに上手く繋がったんじゃないかな。そこで妄想も広がって、イケメンがいたらいいな、出会いがあったらいいなというのが結実して、見事勝ち取ったわけですね。おめでとうございます。

関連記事