製版業界の指定用語をいくつ知っていますか?

皆さんがいつも見ているポスターや雑誌などを始めとする「印刷物」を制作している業界が「製版業界」です。

実は、この記事を書いている私も、長年印刷業界に従事しておりました。

さて今回は、この業界の中で指示を出す際に、古くから使われている「指定用語」を10個厳選してご紹介します!

製版業界に近い業界で働く皆さんが既に使われている用語もあれば、全く聞いたことのないような用語もあるかも!?

あなたは、いくつの用語を知っていますか?

ぜひチャレンジしてみてくださいね♪

 

4色分解

プロセス製版とも呼ばれてます。カラー原稿の絵柄を色材の3原色であるシアン・マゼンダ・イエローにスミを加えた4色に色分解したフィルムを製版することを指します。

カラーフィルムやカラープリントは、シアン・マゼンダ・イエローの3色によって色彩が構成されています。これらの色をそれぞれ単色に分解して、各色のインクを用いてカラー印刷を行うのですが、印刷インクの欠陥によって、墨のインクを加える必要があるため4色分解が必要になっています。

 

モノトーン

単色アミや、モノクロ(トーン)とも呼ばれます。
写真や線画などの連続調原稿を単色の網画像で表現することを指します。一般的にモノトーンと言うとスミ1色での印刷を想像する方が多いのですが、印刷色は墨に限らず色インクを利用することもあるので、モノトーンを依頼する際は色指定する必要があります。

 

色フチ

色括りや、色フチドリとも呼ばれます。
文字や絵柄の周囲を色で縁取りすることです。色フチを使用する目的としては、一般に文字、絵柄などをくっきりと強調させるために使用されることが多いです。

また、このフチの色が白色のものは「白フチ」と呼ばれています。白フチは、文字を強調するだけではなく、背景と重なったりして文字が読みづらくなることを防ぐためにも利用されています。

 

袋文字

くくり文字やアウトライン文字とも呼ばれます。
文字の輪郭だけを残すことです。

現代では、ほとんど聞かない指示用語になったように思いますが、フィルム処理が必要な時代には、かなり手間がかかる作業だったとのことです。

ただ、ベテランの方などは、この呼び方で話される方も多くいらっしゃいますので、知ってて損はないと思いますよ!

 

のせ

オサエやノッケなどとも呼ばれます。
下地の色の上に、更に文字を重ねることです。一般的に絵柄に文字や記号を「のせ」る場合には「墨のせ」にします。「色のせ」にすると下地の色と重なり、当初の色とは違った色になってしまいます。

もちろん2色以上のものでのせ指定をすることも可能ですが、文字が読めなくなったり、近似色でのせると見にくくなったりすることが多いです。

私の経験上ではありますが、製版でもデータ入稿時でも、この「のせ」と言う言葉が関わる部分は、思い通りの印刷物にならなかったというトラブルが起こりやすいように思います。デザインをされる皆さんも、ぜひご注意くださいね!

 

平網(ヒラアミ)

全面が均一な大きさの網点で形成されて、結果として均一な濃度になっているフィルムや印刷物のことです。

色の濃さって、実は網点と呼ばれる点の密度で決まっているんですよ。「スクリーン線数」という、1インチあたりの網点の数で表すものがあるのですが、そのスクリーン線数の数値が大きくなるにつれて、より繊細な表現ができるようになります。

ただし、スクリーン線数の多い印刷をするためには、紙質の良い紙を使う必要がありますのでご注意ください。スクリーン線数の高い印刷物としては、アイドルなどの写真集を想像していただけると良いと思います。

 

網伏せ(アミフセ)

これも、現代ではあまり聞かない用語のように感じますが、知識として持っておいても損はないです!
文字や絵柄などの指定された形に平網やグラデーションを入れる時の指示です。

グラデーションの際は「グラデーション」と指示を書き、平網の際は「アミフセ 色 ◯%」のように記載します。

 

半調

写真のシャドウ部分の網点面積が30〜50%になるようにコントラストを低く仕上げることです。
全体のコントラストを低下させることで、全体を明るく仕上げることができます。

こちらも、昔は製版の際に指定をして、印刷の際に半調にしていたのですが、現代のDTPでは、ソフトを使用して処理が行えますので、言葉だけが残っているというイメージです。

 

ベタ

濃淡の調子が無く、完全に塗りつぶされた状態のことを指します。
ベタは使用する色の名称をつけて「アイベタ」「キベタ」のように呼ばれることが多いです。製版現場では「スミベタ」などを作成する際に、ベタのつぶれを良くする(より綺麗なベタを制作する)ために、下地に淡色の平網やベタを刷るなどの工夫もされてきました。

 

イキ・シニ

最後はイキ・シニです。カタカナで書くとイメージしにくいですが、写真やイラスト、文字などが複数重なる絵柄で、特定なものだけを使用したり、消去する際の指示として使用されます。「生きる」と「死ぬ」の意味ですね。こちらの指示も、全てソフトを使用して作業が完了するため、製版現場で行うことはほとんどありませんが、言葉だけは現役で活躍しています。

 

 

以上、製版の指定用語を10個ご紹介させていただきました。

DTPの発展と共に、現場で実際に使われる言葉は減ってきてはいますが、言葉が使われ続けているものはたくさんあるようです。

今回ご紹介した用語を7個以上知っているというあなたは、既に「業界人」と言えるのではないでしょうか?

なお、各会社や時代、地域によって、若干意味が違ってくる場合もあります。ぜひ皆さんの状況にあった用語の使用をされてみてくださいね。

それでは、引き続き素敵なクリエイティブライフをお送りください!

 

文:九州校PicoN!編集部 佐藤

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