クリエイターのための著作権クイズ – 「推しの似顔絵」を発表するのは合法?
作品をつくっているとき、「あれっ?これって著作権的にOKなんだっけ?」と不安になることってありますよね。クリエイターにとって、著作権に代表される知的財産権は必須の教養。正しくルールを理解していれば、安心して作品を創作できるようになるばかりか、表現の幅を広げることにもつながるはず。
さぁ、クイズ形式で楽しく、知的財産権について学んでいきましょう!
解説/志田陽子(武蔵野美術大学造形学部教授、憲法・芸術関連法研究者)
編集/編集部 佐藤
推しのアイドルの似顔絵を「自分の作品」として発表したい。合法?違法?
【答え】
△許諾があるかどうかによる
【以下、志田先生の解説】
人には肖像権があり、意に反する撮影や公表を断ることができます。だから、人の姿を無断で撮影したり公表(公開モードで投稿)したりすることはできません。
とくにアイドルやスポーツ選手などの著名人の場合には、その肖像に特殊な商品価値があるため、その肖像や氏名の使用権を「パブリシティ権」と呼んで、厳密に管理しています。たいていは所属事務所がこの権利を管理しています。「撮影会」などの特別なイベント会場で「撮影OK」とされている場合には、権利者の許諾ありということで、撮影することができます。
似顔絵の場合にも写真と同じく、モデルの肖像権があります。モデルとなる人の人物特定ができるような似顔絵や肖像画の場合には、無断で描いたり公表したり、売ったりすることはできません。ただし実在モデルのいる絵画でも、本人特定性のないクロッキーのような人体描画や、高度に抽象化された描画の場合には、肖像権の問題とはなりません。
まとめると、本人特定性のある似顔絵や肖像画には、モデルの肖像権と描画者の著作権の二重の権利があることになります。この絵(著作物)を描いた人(著作者)が、この絵を自分の作品として発表したり、商品として売ったりすることについては、モデル(肖像権者)の許諾を得ている場合には、自由です。肖像権も著作権も、一律に合法か違法か、ということが法令で決まっているわけではなく、権利者の許諾(合意)があるか、というところが判断のポイントになります。
解説/志田陽子
武蔵野美術大学造形学部教授。憲法・芸術関連法研究者。憲法の分野では、表現の自由、多文化社会、ジェンダーの問題を追求。芸術関連法の分野では、研究者であると同時に教育者としても活動。表現の自由や著作権法に関心のあるアートを学ぶ学生たちのために、法教育の内容や在り方について研究を重ねてきた。著書に『表現者のための憲法入門(武蔵野美術大学出版局,2024年)、『文化戦争と憲法理論--アイデンティティの相剋と模索--』(法律文化社,2006年)など。
※情報は公開時時点のものです。
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