生の現場を覗いてみた!インテリアデザイナーのアトリエ訪問記 その2
インテリアデザイナーのアトリエ訪問記
ショップデザイナー、住空間デザイナー、ファニチャーデザイナー、ディスプレイデザイナーなどインテリアデザイナーが働いている現場を取材していきます!普段見れない裏側、制作現場を余すことなくお届けしていきますよ。
2話目となるインテリアデザイナーは様々な素材ととことん向き合うプロダクトデザイナーの「岩元航大」先生です。さっそく工房を見てみましょう!
第1話
八王子にあるシェア工房「スタジオ発光体」
岩元先生は、八王子にあるシェア工房「スタジオ発光体」を主管している。
現在この工房には、デザイナー、調香師など10名の会員が在籍し、24時間自由に使用している。他分野のクリエイターが工房を共にすることで、あらたな対話と想像力が生まれることを意図して2021年春オープンした。
奥は広々とした作業スペース。天井高もあるので、大きな家具、什器などの製作も可能。この日は、学生が真剣に木製家具を製作中だった。スペースのストレスなく自分の手で物を作る楽しさを実感していた。
この工房には、素材に触れ真摯に向き合い、試行錯誤し想像して作りあげてゆく岩元先生の、モノづくりの姿勢が表れている。
見慣れた塩ビ管が熱加工によって独特の美しいシルエットに変化し、陶器や磁器のようにも見える。そこには、元々の塩ビ管が持つ軽さや薄さと、軽やかな遊び心が相まって独特の世界観が醸し出されている。素材としっかり向き合ったからこそできた逸品だと感じた。
日本古来の鉈(なた)を使った丸木の加工方法からヒントを得て新しい合板を作り出し、オリジナル家具「PARI PARI」が生まれた。ランダムで美しいパターンが、シンプルな家具のフォルムに温かさを加えている。
金属パイプを固定する技法「Tube flattening」に取り組む中で見つけた潰れたアルミパイプの形状を生かした、折り畳み式スツール
どの作品にも、様々な素材や技法と真摯に向き合い、楽しんで実験しつくし、美しくシンプルで機能的なシルエットに仕上げる岩元先生の姿勢が感じられる。
モノづくりの原点とは
先生のモノづくりの原点になった神戸芸術工科大学のデザインプロジェクト「DESIGN SOIL」の展示会「harvest」展を覗いてきた。このプロジェクト参加をきっかけに、2010年からミラノサローネに毎年出品している。プロジェクトが目指す『これまでの「当たり前」を超えていくため、実験的なデザインを追求する』ことを、岩本先生が体現していると感じた。
「harvest」展は、2022年8月26日 – 9月4日、六本木のAXISギャラリーで開催された。9月3日には岩元先生も登壇しトークイベントを配信した。
現役の学生の作品だけでなく、歴代の秀作も展示。岩元先生の作品、挿し方を変えることでライトの位置や向きが変化する卓上ライトと、「Naname」と名付けられたコートラックのモックアップも出品されていた。
一つの素材に固執することなく、様々な素材に向き合い、チャレンジするのは、岩本先生曰く「一つの素材に向き合う職人さんへのリスペクト」多くの仲間でシェアする工房の運営、素材と向き合う新進デザイナー、そして、家族との生活を大切にした職住近接のライススタイル。これからデザイナーを目指す学生達へ、ひとつの理想的な形を具現化しているようにも思えた。
岩元 航大
鹿児島県生まれ。2009年神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科入学後、デザインプロジェクト「Design Soil」に在籍し、イタリアのミラノ・サローネやフィンランドのハビターレ等、海外の展示会に多数参加。
卒業後、スイスのローザンヌに移り、Ecole cantonale d’art de Lausanne(ECAL)のMaster in Product Designに進学。
卒業後、東京を拠点に国内外の企業と製品活動を進めつつ、精力的に作品制作を行なっている。
関連HP
プロダクトデザイン | 岩元航大デザイン事務所 / Kodai Iwamoto Design (kohdaiiwamoto.com)
Home | Studio Hakkotai | 東京都 (studio-hakkotai.com)
DesignSoil
文:池谷光江
NDSインテリアデザイン科講師。商品装飾展示技能検定1級、日本VMD協会理事マネキンディスプレイ会社のデザイン室を経て、フリーランスのディスプレイデザイナーとして、百貨店、専門店、メーカーのVMD企画デザイン、社員教育に携わる。現在、ディスプレイの国家試験「商品装飾展示技能検定」中央検定委員として問題作成に携わっている。