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片道切符を握りしめて。木版画で世界を描いた旅する画家・吉田博がみつめた景色とは。
1876年、福岡県久留米市に生まれた吉田博は、幾度もの世界旅行で出会う美しい風景そして芸術に触れながら、その生涯を絵を描くことに捧げました。
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Venice, Italy (1925) / Matterhorn, Switzerland (1925)
大自然の壮大な景色、柔らかい光に包まれた暮らしの描写、繊細で独特な色の表現。日本の伝統的な版画技法と当時西洋絵画に見られた写実表現を組み合わせ、光と大気のうつろいや水の流れを繊細に描き出した独創的な木版画が吉田博の作品には多く見られます。
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Egypt, pyramids (1925) / Camping, from the series Southern Japan Alps (1928) / Suzhou, China (1940)
今でこそさまざまなデジタルツール(カメラやスマホ、iPad、液タブ、photoshop…など)の発達でどんな景色も瞬間的に撮影し、色彩を自由に編集することが可能です。しかし便利デジタルツールなんて存在しなかったであろう明治時代に、この美しい色彩が木版画で表現されていたこと、そして彼が自ら世界中を旅しながら各地の景色を眼下に絵を描き続け、そうした生き方を選択していたこと…。冒険的でなんともドラマチック。
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Udaipur Castle, India (1931) / Varanasi, India (1931)
吉田博の作品は海外でも高く評価され、国際的な画家として何度も各国へ渡航します。きっかけは20代前半、若いころから描いていた自分の作品が横浜居住の外国人に人気が集まりよく売れたこと。
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El Capitan Canyon, USA (1925) / Singapore (1931)
その後、画家仲間と片道分(!)の渡航費を貯め、渡米します。各地の個展で水彩画が高く評価され、さらなる成功を収めます。当時、海外旅行に行けたのは本当に限られた人だけだったはず。
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Greengrocery At Nezu, Japan (1926) / Cryptomeria Avenue, Japan (1937)
そんな時代に、たった片道切符だけを握りしめ未知なる世界に踏み出す勇気と行動力…。すごい。(明治から昭和にかけて活躍した吉田博ですが、画家仲間からは「絵の鬼」と呼ばれていたそうです。。)
吉田博の没後70年を超え、日本各地で展示が行われました。画家として活動を始めた初期作品から、世界を飛び回り描いた代表作まで、日本の伝統的な版画技法と西洋の写実的な表現の入り混じった吉田博ならではの木版画。
チャレンジ精神に溢れ、好きなことに没頭するその姿に、クリエイターの真髄を感じます。世界の人々に愛され、以降の画家たちが世界を舞台に活動することの先駆者となった吉田博の作品を、ぜひ機会があれば見つめてみてください。