現代アーティスト〈上床 加奈(うわとこかな)〉インタビュー&展示会情報

『妖怪の潜む国』/515×728mm、アクリル・水彩紙・木製ボード(2019)

 

日本の妖怪が生き生きと描かれた作品。

これを描いているのが、
現代アーティストとして注目を集めている
上床 加奈(うわとこかな)さんです。

1995年鹿児島県生まれ。2016年に専門学校日本デザイナー学院九州校イラストレーション科を卒業。同年からアーティスト活動をスタートさせる。現在は地元、鹿児島を拠点に活動中。上床さんタグボートページ

 

上床さんは、国内最大級のオンラインアート販売ショップやギャラリーなどを運営するtagboat(タグボート)MASATAKA CONTEMPORARYにて取扱作家としてアーティスト登録されており、彼女の過去発表された作品は全てSOLD OUTになっている、現在注目を集めている人気作家です。

 

今回、tagboat主催の大型展示会開催と合わせて、作家の上床さんにインタビューをさせていただきました。

 

『blood 7』515×728mm、アクリル・水彩紙・木製ボード(2021)

 

専門学校卒業からアーティスト活動を本格化するまでの経緯を教えてください。

上床さん)専門学校入学時はイラストレーターを目指して学んでいたのですが、学んでいくうちにアーティスト活動を意識するようになりました。

卒業した年にtagboatのアートフェス「Independent TAGBOAT ART FES 2016」に出展したことが始まりです。

その際に「MASATAKA CONTEMPORARY」の方やtagboatの方に見ていただいた際に「展示会に参加しませんか?」と声をかけていただきました。

そのお話しからグループ展に参加したり、個展を開催したりして現在の活動までつながっていった経緯です。

 

『blood 4』297×420mm、アクリル・水彩紙・木製ボード(2019)

 

 

このアートフェアで上床さんは入賞し、入賞者だけが選出される「TAGBOAT EXHIBION NEWYORK」でニューヨークでの展示デビューも果たします。
ニューヨークでの展示の様子が、tagboatのYouTubeチャンネルに映像で残っています。
上床さんの作品は動画の[0:48]秒地点で写っています。

 

はじめての個展では来場者の方の作品への反応はどうでした?

上床さん)tagboatでは作品のオンライン販売もしているのですが、最初の個展ではオンライン販売の方ですぐに作品が売れてしまって、来場者が来られた時にはSOLD OUTになってしまいました。

そこからはやはり来場していただく方にも見ていただくためにオンライン販売の開始は時間をずらすようになりました。

 

現在は地元の鹿児島で活動をされていますが、卒業後すぐに戻ったんですか?

上床さん)学校を卒業したあとは1年くらい福岡でアルバイトをしながら作品を作っていました。

展示会で絵が売れるようになってきて、そこでアルバイトを辞めて鹿児島にもどりました。

 

上床さんが描くものは「妖怪」という認識でいいんですか?

上床さん)昔から言い伝えられている妖怪だったり、自分のなかで作り上げた空想の妖怪もいます。

どちらかというと作り上げた空想の妖怪の方が数は多いと思います。

 

『おどろおどろと』728×1030mm、アクリル・水彩紙・木製ボード(2019)

妖怪を選んだ理由は?

上床さん)「妖怪」を選んだ理由は「描いていて楽しいから」でした。

学生時代はイラストレーターを目指していろいろ描いていましたが、福岡での公募展がきっかけで描いた「妖怪」が楽しくて。

他の要因としては、日本画や浮世絵が好きだったんです。

海外にはない描き方でマンガチックというか、平面的な画風や構図に魅力的に感じていました。

そういった日本的な描き方と、「妖怪」を描く楽しさが今の作風につながっています。

 

 

作品に込めたメッセージは?

上床さん)今回の展示会で新しく発表する作品は自分のモヤモヤが込められているかもしれないです。

あんまり「メッセージ性」みたいなのは恥ずかしくて出さないんですけど、今回の新作は今までとは作風が少し変わったかもしれません。

 

モヤモヤっていうのは?

上床さん)今まで描くのは結構早かったんですけど、体調の変化もあって思うように描けなくなった時期がありました。そのとき感じた自分の中のモヤモヤが今回の作品には現れている気がします。

今は無理せず体調と合わせながら制作するようにしていますが、その当時はなんだか悲しく感じたんです。

 

画材や描き方について教えてください。

上床さん)絵具はアクリル絵具、紙は水彩紙で、木のパネルに水張りをしています。

配色は時間をかけて考えていて、下描きしたものをスキャンしてスマホで配色を考えています。

塗りの作業は色ムラが無いように丁寧に作業をしていて、すごく神経を使っています。

そして最後に主線をマルチライナーで入れて完成です。

大きな作品(B0)は1ヵ月くらい、B3サイズほどの作品で2週間くらいかけて制作しています。

 

『狐憑き 陸』300×1200mm、アクリル・水彩紙・木製ボード(2020)

影響を受けた作家さんはいますか?

上床さん)学生のころすごく見ていたのは、山口晃(やまぐちあきら)さん、天明家尚(てんみょうやひさし)さん、鴻池朋子(こうのいけともこ)さんです。

この方々の作品は好きでよく見ていました。

山口晃 氏
ミズマアートギャラリー紹介ページ

天明家尚 氏/オフィシャルHP

鴻池朋子 氏/オフィシャルHP

 

学生時代の今につながる経験や思い出はありますか?

上床さん)学生時代にいろんな影響を受けて、今の作品のカタチが決まったと思います。

あとは、入学して「まわりのみんなが絵が描ける」という環境が初めてで、すごくシゲキを受けました。

私は自信がなくて、作品を人に見せるのも苦手でした。

だけど周りの同級生の影響もあって、それではダメだなと思ったんです。

同級生のおかげで「頑張らないと」と思えてとてもシゲキになったことを覚えています。

 

『赤煙』515×728mm、アクリル・水彩紙・木製ボード(2020)

 

最後に、作品をどのように楽しんでほしい、などはありますか?

上床さん)見たままを楽しんでほしいかなと思います。

捉え方は人それぞれだと思うので感じたままに楽しんでいただければ嬉しいです。

 

上床さんが出展する展示会情報

「TAGBOAT ART SHOW」×
阪急MEN’S TOKYO

参加作家数:21名参加予定
入場 :無料
会場 :阪急MEN’S TOKYO 1F Main Base
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 1F Main Base
開催期間:2022年3月2日(水)〜3月15日(火)
営業時間:11:00-20:00 ※最終日は19:00閉場
PART.1:3月2日(水)~3月8日(火)
PART.2:3月9日(水)~3月15日(火)
※上床さんはPART.1の‬3月2日(水)〜8日(火)の方に参加されます。

「tagboat Art Fair 2022」

参加作家数:111名参加予定
入場 :1,000円
会場 :〒105-7501 東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
東京都立産業貿易センター 浜松町館 4F,5F
開催期間:2022年3月11日(金)~13日(日)
開催時間:
3月11日(金) 16:00-19:00 プレビュー
※インビテーションをお持ちの方、もしくは当日チケットをご購入いただいた方はどなたでもお入りいただけます。)
3月12日(土) 11:00-19:00 パブリックビューイング
3月13日(日) 11:00-17:00 パブリックビューイング

 

日本的な妖怪のような生き物たちが迫力の構図と色彩で生き生きと描かれている上床さんの作品。
日本画や浮世絵などの古くからの日本の表現手法と、現代日本のサブカル的なポップなカルチャーが融合したような魅力を改めて感じることができました。
手描きとは思えないほど丁寧な作画技術も圧巻です。

この生き物たちの目に見つめられると、なんだか悪い行いをしたら妖怪たちからの罰があたるような、だけど本来は優しい隣人たちのようなそんな不思議な感覚になりました。

ぜひ、今回ご紹介した展示会や、これからの上床さんの活動に注目していただきたいです。

文・PicoN!編集部 横山

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