菊池東太のXXXX日記 vol.7
わたしはナバホ・インディアンの写真でデビューした。
ところが今になってその写真に納得がいかなくなってきた。インディアンと呼ばれている珍しい人たちという視点で彼らを見、シャッターを押していた。同じ人間という視点ではないのだ。
撮り直しに行こう。最終作として。この考えに至った経緯も含めて、これから写真家を目指す若者たちに語ってみたい。
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イエローストーンという国立公園がアメリカ北西部にある。アメリカでは最古(1872年指定)の国立公園だ。
ワイオミング、モンタナ、アイダホの三州にまたがる最大の国立公園でもあり、8980平方キロメートル、四国の約半分の広さである。
熊、バッファロウ、エルク、狼、コヨーテなどが生息し、数百ヶ所の温泉、間欠泉があり、1978年に世界遺産にも登録された。平均海抜2300mの高地でもある。
車で走っていると、温泉特有のあの硫黄の匂いが車中にまで充満してくる。また部分的に地面が黄色っぽいところもある。硫黄の色だ。だからイエローストーンと名付けられたのだろう。
大きな池があるので近づいてみたら、透きとおったブルーだ。底まで見える。紫のもある。赤のも。
手をその中に突っ込んでみる勇気はないのだが、パンフレットによると水の温度が摂氏70、80度もあるという。
最初にイエローストーンに行ったときのことだ。
いつもだいたい4、5人の若者を連れて旅をしている。1ヶ月を過ぎ、だいぶ旅慣れてきたころ、1人の若者の後ろ姿が目に入ってきた。
うちのメンバーのようだ。が、誰だかわからない。
長い旅の間、時間節約のため昼飯にハンバーガーとフライドポテトを毎度毎度食べていると、間違いなく太ってきて、後ろ姿では誰が誰だかわからなくなってしまったのだ。このあと昼食に毎度フライドポテトを食べる者が、激減したのは事実だ。
アメリカの食べ物はシンプルなものが多い。
肉はビーフをそのまま切ったステーキか、挽き肉のステーキ、つまりハンバーグ。そしてフライドチキン。たまにポーク。これらの肉にフライドポテトか生野菜がついてくるだけ。魚は少ない。エビとか鮭、鱒ぐらいだ。
だがときには日本ではほとんど食べることができないものに、出くわすことがある。
ミシシッピ川の下流域で出会ったものが特に印象に残っている。ザリガニとソフトシェル・クラブ(脱皮直後のカニ)だ。
この辺りはルイジアナ(ルイ王の土地)州だ。その名の通りもとはフランスの植民地だった。
スティームド・ザリガニ(蒸した)はピリ辛の味付けが最高なのだが、オーダーの単位が2ポンド(900g)から。
というのがどうにもアメリカンなんだなあ。うまいから残してしまうことはないが、日本ではあり得ない量だと思う。
次にソフトシェル・クラブ。
このときまでカニが脱皮することを知らなかった。自分の無知さを恥じ入るばかりだ。これは脱皮したばかりのフニャフニャのカニを蒸したり、から揚げしたものだ。トーストにはさんでサンドイッチ。そしてアルコールのアテに。どちらも絶品。
なぜ日本にはないんだろう?日本のガザミにそっくりなんだけど。日本のガザミは脱皮しないのだろうか?
ザリガニも魚河岸では大量に取引され、なんらかの形でみんなの胃の中に入っているのに。
また、アメリカのステーキはどこもみんなパサパサだと思ってバカにしていると、とある小さな町のステーキ屋で肉汁たっぷりのミディアム・レアを出されて、思いがけなく嬉しいこともたまにはある。
vol.8へつづく