【写真学校教師のひとりごと】vol.4 安達康介について

わたし菊池東太は写真家であると同時に、写真学校の教員でもあった。
そのわたしの目の前を通り過ぎていった若手写真家のタマゴやヒナたちをとりあげて、ここで紹介してみたい。
その人たちはわたしの担当するゼミの所属であったり、別のゼミであったり、また学校も別の学校であったりとさまざまである。

これを読んでいる写真を学ぶ学生も作品制作に励んでいるだろうが、時代は違えど彼らの作品や制作に向かう姿が少しでも参考になれば幸いだ。




 

中央大学経済学部卒業というのがわたしと同じだ。
決して後輩を探したり、待っていたわけではない。
たまたま、いっしょだっただけだ。

写真学校の教師をはじめてからすでに10年以上がたっていた。
学生の大半は高校を卒業し、そのまま入学してくる。
わたしは中学生時代、どっかの大学の理工系の学部を出てエンジニアになろうとシンプルに考えていた。
ところが、前回述べたように赤緑色弱のわたしは、どの大学の理工学部にも入れないことを知り、勉強をする気がまったく無い、完全な落ちこぼれになってしまっていた。

それで東京にある大学ということで、中央大学の経済学部に進んだのである。
だが大して深く考えていたわけでもない。なにかほかに保証があってのものでもないし。
大学の後、写真が好きだったので某写真学校にはいり、現在に至るのである。
わたしとしてはエンジニアの道をあきらめ、高校時代のクラブ活動の延長の、写真の道に専念することにしたのだ。

 

安達康介の話にもどる。
とにかくかれ、安達康介はわたしのゼミにやって来た。
そして卒業して4年でキューバの写真展を決めた。

2004年「Cuba Libre」 Nikon Salon

この「Cuba Libre」というのは、キューバ独立戦争時のキューバ側のスローガンである。
革命などといったときにありがちな悲惨さや陰湿さを感じさせない、ラテン的な明るささえ思わせる写真だ。

かれは大学卒業時にはじめてキューバに行った。
革命とかその主導者チェ・ゲバラということばにキラキラしたものを感じたのだろうか。
ラテン気質と社会主義社会。
ここまで来たら山を上りきって、まわりを見わたせるとこまで行くほかない。

そんな感じで、写真学校をでてカメラを持ってキューバに行った。彼自身2度目のキューバへの旅だ。
ラテンと社会主義革命という言葉が結びつき、若者のこころをとらえたのだろうか。
写真がその方向に、より一層の力を注いだのだろう。
革命という言葉は若者にとって、きらきら輝くチャーミングな言葉である。
しかも行き先があのチェ・ゲバラのキューバだなんて。
まさに写真のためにあるのだ、まちがいなく。
という具合にキューバに出入りするようになった安達は一応最高峰といわれるギャラリー、ニコンとコニカで交互に展示の機会をえた。

2015年「Cuba Libre #2」 コニカミノルタプラザ

ここでもう一度、かれはキューバに撮影に行くべきだろう。
最初のDMに匹敵する写真と、もうひとつカーニバルの写真は数多く撮られているので、容易ではないが、これだ、といえるようなのを撮ってきて欲しい
と思う。
これぞ安達といえるのものを。
できるかな?
Cuba Libre !

 

安達康介

京都生まれ、東京在住。
都内出版社スタジオアシスタントを経て独立。雑誌・書籍などでポートレイト、風景、静物撮影を手がける。また、個人プロジェクトとして Cuba を題材に撮影を続け、メディアへの寄稿や作品展示、ラジオやイベントへの出演も行なっている。

HP:https://adachikosuke.com/kosuke-adachi-photography

個展
2004年 「Cuba Libre」 ニコンサロン(東京/大阪)
2007年 「洛中洛外景」 ニコンサロン(東京/大阪)
2015年 「Cuba Libre #2」 コニカミノルタプラザ(東京)

グループ展
2006年 「ヤング・ポートフォリオ展」清里フォトアートミュージアム(山梨)
2007年 「ヤング・ポートフォリオ展」清里フォトアートミュージアム(山梨)
2008年 「ヤング・ポートフォリオ展」清里フォトアートミュージアム(山梨)
2016年 「DocArt PHOTO Photo Exhibition 03」 be-kyoto(京都)
2017年 「TOKYO DOCUMENTARY PHOTO 2017」 gallery re:tail(東京)
2018年 「TOKYO DOCUMENTARY PHOTO 2018」 キチジョウジギャラリー(東京)

菊池東太

1943年生まれ。出版社勤務の後、フリー。

著作
ヤタヘェ~ナバホインディアン保留地から(佼成出版社)
ジェロニモ追跡(草思社)
大地とともに(小峰書店)
パウワウ アメリカインディアンの世界(新潮社)
二千日回峰行(佼成出版社)
ほか

個展
1981年 砂漠の人びと (ミノルタフォトスペース)
1987年 二千日回峰行 (そごうデパート)
1994年 木造モルタル二階建て (コニカプラザ)
1995年 アメリカンウエスト~ミシシッピの西 (コニカプラザ)
1997年 ヤタヘェ 北米最大の先住民、ナバホの20年 (コニカプラザ)
2004年 足尾 (ニコンサロン)
2004年 DESERTSCAPE (コニカミノルタ)
2006年 WATERSCAPE (コニカミノルタ)
2009年 白亜紀の海 (ニコンサロン)
2013年 DESERTSCAPE-2 (コニカミノルタ)
2013年 白亜紀の海2 (ニコンサロン)
2015年 日系アメリカ人強制収容所 (ニコンサロン)
ほか

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