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前編【対談】世界ポスタートリエンナーレトヤマ2024受賞記念!デザイナー福島治先生×NDS在校生河内瑠未さん

第14回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2024でU30+STUDENT部門で銅賞を受賞した専門学校日本デザイナー学院 総合デザイン科グラフィックデザイン専攻3年 河内瑠未さんと、2012年に日本人初のグランプリ受賞をした福島治先生の対談企画です。

今回受賞した河内さんのポスター作品「心について考える」について、制作段階でのエピソードや工夫、世界的に大きなコンペティションで受賞をした率直な気持ち、またデザイナーである福島先生の視点で感じ取った印象などについてお話をお伺いしました。


アイディアから制作・撮影まで。ポスターに込められた想いとこだわり。
福島治先生
福島治先生
この度は受賞おめでとうございます!本当に素晴らしい作品で、今日は聞いてみたいことが山ほどあります。(笑)
河内さん
河内さん
よろしくお願いします!こうして貴重な機会をいただけて嬉しいです。
福島治先生
福島治先生
今回、「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」応募のために作品を制作をしたのだと思いますが、アイディアや発想の段階を含めて、どのように形にしていったのでしょうか。
河内さん
河内さん
最初のラフ段階では、別の案もありました。ハートが2つ重なって、ほどけていくようないるような。でもそれだとどこか既視感があって。学校の先生にも相談をして、心臓を編んでみるのはどうかなとアイディアが生まれました。
福島治先生
福島治先生
見る人に柔らかさ与えますね。心臓は編まれている赤いパーツが帽子のようなイメージで擬人化されているようにも感じました。今までやったことのないチャレンジを自然とできるというのは素晴らしいことだと思います。
河内さん
河内さん
ありがとうございます。これまでも学校の課題制作含めていろいろな作品を作ってきましたが、今回自分でも1番ピンときたというか、納得して作りこめたというか。「モノ作りって楽しい!」ってのめり込んだ感覚でした。
福島治先生
福島治先生
今までよりも、ちょっと、頭1つ抜き出たかな、という感覚でしょうか。
河内さん
河内さん
はい。撮影も自分でライティングや角度など微調整を繰り返しながら何度も何度も撮り直しました。影のつき方とか、どうやったら自然に見えるのかな、とか。撮影後にPhotoshopで編集もして、納得いくまで何パターンも制作しました。
福島治先生
福島治先生
実物よりも濃度が上がって、リアリティ、存在感のある強さがうかがえます。
河内さん
河内さん
本当はもうすこし赤の部分が紫っぽく、黄色もすこしオレンジっぽい色味でしたが、人間の心の繊細さを感じるような柔らかい印象にしたかったんです。毛糸を使って編んだのも、心臓だけどグロさを感じさせるというより温かみを感じるように仕上げたかったのが理由です。実際の臓器の色を忠実に表現することもできたかもしれませんが、そうすると作品のコンセプトと合わないな、と。
福島治先生
福島治先生
やっぱり自分で作るからこそオリジナルが生まれるんですよね。すでにそこに何らかの形で存在してるものを、どう加工したり組み合わせたりしていくか。僕は今まで人が見たことがないデザインや世界感っていうのを見ることにとてもワクワクします。
河内さん
河内さん
秋に学校のアートフェアで学内展示「small voice」を制作しました。そのなかで「埃」を作ったんです。色んなところから綿や埃を集めてきて、髪の毛混ぜてみたり、とにかくリアルなものを作りました。
福島治先生
福島治先生
うんうん、なるほど。面白い。
河内さん
河内さん
そしたら学校の清掃の方に捨てられてしまって。(笑)
でも、それは嬉しいことで。本物と思ってもらえた証拠です。それを機会に「やっぱり作ることって楽しい」「自分で作った方が伝わるな」と実感しました。

 

 

一本の「ほどける糸」。最後まで妥協せずにつくりあげた作品。
福島治先生
福島治先生
ポスターのキャッチコピーの入れ方もうまいなと思いますね。配置に何か意図があったのですか?
河内さん
河内さん
あえてほどける糸を一本だしています。「don’t pull.」は引っ張りたくなるけど引っ張っちゃいけない、っていうメッセージを込めています。
福島治先生
福島治先生
デザインを作るとき、例えば「ここに置いたらカッコイイ」「綺麗に決まるな」っていう風にレイアウトしてしまいがちだけど、何を伝えるかっていう事を深く追求して工夫しているのが素晴らしいですね。かなりプロフェッショナルだと感じます。
河内さん
河内さん
ありがとうございます。たくさん悩みましたが、自分でも納得のいく形になったと思います。
福島治先生
福島治先生
でもきっと、そこまで突き詰めていかないと「賞を取る」ってことは難しい世界なんですよね。世界ポスタートリエンナーレトヤマも世界中から数千もの応募作品があって、受賞できる作品は本当に一握り。審査員の心を動かす力がないと、なかなか受賞は難しいです。

河内さんが最後まで自分で妥協せずにつくりあげた、というのが伝わってきました。最終的なオブジェとしての造形的な強さっていうのも大事にしています。たまたまの受賞じゃない。すごいことですよ。

河内さん
河内さん
実際に富山へ授賞式に行かせていただいた際、富山美術館の最初の第一審査員を務めた方が声をかけてくださって。「私がこの作品推したんだよ」って言ってもらえて、自分の作品が誰かに届いている、と実感でき嬉しい瞬間でした。
授賞式・展示会で自分の作品と改めて対峙して、感じた率直な想い

福島治先生
福島治先生
受賞作品の展示会で、自分の作品と、自分以外の作品が展示されているのをみたとき、どう感じましたか?
河内さん
河内さん
海外出身の方の作品は特に、多様な表現があってとても刺激になりました。受賞作品はモノクロ作品も多く、自分の作品が良い意味でも目立っていたのかなと感じました。一方で、自分の作品はなんというか「学生の作品」だなとも感じて。

プロの方、現役デザイナーの方の作品をみると、やっぱり作りこみがすごいなと圧倒されました。洗練されていて、無駄なものがなくて。デザインでお仕事するってこういう事なのかって考えさせられました。クリエイター自身の個性や世界観もそれぞれの作品に感じました。私自身にはまだそういったものが確立していないので、尊敬や憧れの気持ちも生まれました。

福島治先生
福島治先生
なるほど。僕から見るとあまり学生っぽさは感じないかなあ。プロのデザイナーが作った作品、と感じます。特に言葉「don’t pull.」の入れ方。一本糸が出ているのも、作為的なようには見えないけど、でも必ずそこに目がいってしまう。曲線上に置いてあることや、文字の大きさも含めて“引っ張りたくなる”ような感じが、センスが良くて大好きです。
河内さん
河内さん
ありがとうございます。普段は課題制作など無我夢中だったり学校の講師とも真剣にモノづくりに向き合っていますが、なかなかこうやって褒められる機会がないので嬉しいです。(笑)
福島治先生
福島治先生
写真も自分で撮影したとのこと、工夫した点はありますか?
河内さん
河内さん
立体感を出すために、真ん中にピントを合わせてそれ以外はあえてふわっとぼかしています。全部にピントを合わせると体温みたいなものが感じられなくなってしまい「もの」として見えてしまうと考えました。真上から撮ったり、下から煽って撮ってみたり、アングルは試行錯誤しました。
福島治先生
福島治先生
結局これは心臓に見立てたいっていうのと、毛糸っていうことで、命のあるもの、心臓っていう血の通った大事な臓器である、といのをみる人に感じさせる創意工夫が見られます。

 

今回の受賞作品について制作当時を回想しながらさまざまな視点でお話いただきました。デザインを学ぶ専門学生である河内さんの真っ直ぐでありのままの想いや言葉、作品制作に対する姿勢を感じることができましたね。デザイナーである福島先生の視点でのコメントも非常に勉強になります。

対談はまだまだ続きます!記事の後編、公開をお楽しみに。


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