ムンク・フェルメール・ゴッホの名画を読み解く|名画探検室
専門学校日本デザイナー学院講師の原 広信(はらひろのぶ)です。
このコーナーは世界的にも有名な名画とされる作品に潜む裏側の謎を私の独断と偏見でズバリ解読しようという限定企画、名付けて『名画探検室!』です。
4点の作品を取り上げてみます。
エドヴァルド・ムンク 『叫び』
さて、みなさん。「ムンク」といえば…美術に興味のある方ならどこかで一度は眼にしたことのある、こちら_
【 エドヴァルド・ムンク Edvard Munch 『 叫び / The Scream 』1893年 91×73.5cm 厚紙にテンペラ・クレヨン Nasjonaimusst オスロ王立美術館所蔵 Oslo / ノルウェー 】 ※ソース/画像引用元:Nasjonalmuseet
エドヴァルド・ムンク。この画家はノルウェー出身(1863年生まれ)で、愛や絶望、嫉妬、孤独など人間の内面をテーマに描いています。
その中の代表作がこの作品。実は『叫び』というタイトルの作品は一つだけではないのですが、今回は、オスロ王立美術館が所蔵する作品を取り上げることとします。
【新説・珍説:発見ポイント!】
◉どうして叫んでいるように見えるの?
◉そして何に叫んでしまうの?
それを作品から読み解こうというアプローチです。
この絵画全体を見てみましょう。
欄干(らんかん・手すり)のある橋にその人物(叫ぶ人)がいます。(※実は叫んでいるのではない等、諸説があります)
両耳を塞ぐように両手を顔にあてがい、眼が点に描かれ、口はOの字に開いていますね。
叫ぶ人の身体の上体はくの字に曲がり、その曲がりに呼応するように頭部の後ろの青色の部分が中央から右に揺れて上にあがり、更に中央を貫いて左端まで伸びています。
夕景にも見える赤黄色から柑色の空の下にこの青い部分は河川にも海にも山並みにも見え、そのブルーゾーンは左端に繋がっています。その左端にちょうど「二人」が描かれていますね。
それはまた叫ぶ人の後方の欄干の線を伝ってその「二人」に鑑賞者の目線が導かれています。
そう、この絵画は中央の人物よりも左端の「二人」に視線が誘導される仕掛けが巧みに仕込まれていました。
それは、二人が後方から徐々に一歩一歩と詰め寄ってくる心理的な圧迫感を醸し出しているのです。
「二人」は圧迫と絶望感の象徴だったのです!
刻々と迫る絶望感に耐えきれず、耳を塞いでも伝わる足音。声にならない叫びが…!
そういった視覚的な構成が叫んでいるかのように見せている、と言えると思います。
試しに画像から二人を指で隠して見てみましょう………、いかがですか?
これで叫びの正体がお分かりでしょう!
この二人とは…?
そのことはムンク自身が『友人』と後に日記に記しているそうです。これも驚きですね。
ところで、有名な『叫び』、かわいいグッズになっていました。
※ソース/画像引用元:https://hmm.tobi-museumshop.com/items/46810523 東京都美術館MUSEUMSHOP(hmm,)
このショップのオリジナル商品とのこと。東京都美術館にお越しの際はミュージアムショップでチェックを!
ヨハネス・フェルメール『真珠の耳飾りの少女』
続いてこちらも大変人気のある名画です!
【 ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer 『 真珠の耳飾りの少女 / Meisje met de parel 』1665年頃44.5×39cm カンヴァスに油彩 Het Mauritshuis マウリッツハイス美術館所蔵 オランダ 】 ※ソース/画像引用元:https://www.mauritshuis.nl/ontdek-collectie/kunstwerken/670-meisje-met-de-parel
まずはこの絵画の解説から_
大きな灰青色の瞳でこちらを振り返る《真珠の耳飾りの少女》。暗い背景に浮かび上がる少女の顔と、東洋的な青いターバン、耳元に輝く大きな真珠により、見る者は一瞬で引き込まれる。フェルメールが33歳の頃に描いた本作は、特定の人物ではなく性格やタイプを表現する「トローニー」と呼ばれるジャンルに属し、理想化された表情と異国風の装いは時代を超えた神秘性を湛える。色彩は青と黄色のみにほぼ限定されているが、青はラピスラズリから作られたウルトラマリンという非常に高価な絵具が用いられている。わずか数筆で描かれた真珠の輝きや、柔らかな光に包まれた少女の表情には、フェルメールの卓越した光の表現が凝縮されている。
※引用『フェルメール 真珠の耳飾りの少女展』大阪中之島美術館HPより抜粋
https://vermeer2026.exhibit.jp/works/
【新説・珍説:発見ポイント!】
◉この絵の魅力は何?
◉顔に眉毛がないのは何故?
やはり、少女の顔(表情)でしょう!
モデルの少女はこのポーズでいながらも画家の前でいろんな表情だったことでしょう。おしゃべりしてたかもしれませんね。リラックスしている感じがします。まだ写真技術のない時代ですから、フェルメールは「これぞという表情」に描きながら仕上げていったのだと思われます。
ブルーを帯びた瞳にくっきりとした鼻筋と少し歯の覗く赤い唇、そして耳元の真珠の光沢。光を左側から右への方向とし、顔を含む頭部はほぼ左半分は陰影となっています。
まさに顔の表情に注目させる構成です。
そしてフェルメールは敢えて眉を描いていない。この絶妙な表情には必要ないと思ったのでしょう。
◉なぜ背景を描いてないの?
この時代の肖像画には背景をダークな色調を塗りこめてしまうパターンは割とよくみられます。
この作品の場合は、もしかすると過去には何か背景に描かれていたのかもしれませんが、最大の見せ場である少女の顔の表情に焦点を当てるために、闇のような空間としたのでしょう。
またまた同じフェルメールの名画を取り上げます!
ヨハネス・フェルメール『牛乳を注ぐ女』
【 ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer 『 牛乳を注ぐ女 / Het melkmeisje 』1660年頃 45.5×41cm カンヴァスに油彩 Rijksmuseum アムステルダム国立美術館所蔵 オランダ 】 ※ソース/画像引用元:https://www.rijksmuseum.nl/en/collection/object/Het-melkmeisje–42dd0e658c2979aec8e144d2357c55c0
【新説・珍説:発見ポイント!】
◉なぜこの女性は牛乳を注ぐのか?
食事の用意をしています。注がれている牛乳の前にわざわざ描かれている数々のパンが窓からの光に照らされています。それらは重たそうなパンで、硬そうです。小麦粉が主なフランスパンとは違いそう。おそらくライ麦のパンでしょう。
注がれている牛乳の側に見える青い器の中に、砂糖が入っているなら…!
この女性がこれから作ろうとする料理は、『ブロードパップ (Broodpap)』です!
これは牛乳でパンを煮込んだ「パン粥」で、砂糖やバターなどで甘くします。食べやすいサイズに分けて平鍋に入れて牛乳で煮ようとしているのです!(たぶん)
誰に作っているのかって?それは自分のためでしょう(たぶん)。どんな料理なのかはブロードパップを検索しよう!
◉なぜ牛乳に注目してしまうのか?
この絵には画家の計算があるんです。下に掲載した画像図をご覧ください。
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女性の立ち姿のシルエットとテーブルを含めてほぼ直角三角形が形成されています(細い点線①)。そして画面左上の角から、格子状の窓から始まり、壁にかけられた籠、金属製のランタン、そして女性のスカートの裾、それらをつなぐ線(太い点線②)。その2本の点線が交錯しているのが牛乳を注ぐ女性の手元になります。こうした見ている側の目線を考慮しながらフェルメールは作品の構図を検討します。これを「視線誘導」と言われています。
私個人的に気になるのは、女性の右側のスペースですね。白い壁と床にある足温器(中の容器に焼いた炭を入れて使ったそう)だけです。
おそらく女性の背後、壁に何かが描かれていたのを、消し去ったのかも!?
この絵の雰囲気、もう誰が描いているのか分かりますよね!
フィンセント・ファン・ゴッホ『夜のカフェテラス』
【 フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent van Gogh 『 夜のカフェテラス / Terrasse du café ie soir 』1893年 91×73.5cm カンヴァスに油彩 Kröller Müller Museum クレラー・ミュラー美術館所蔵 オランダ 】 ※ソース/画像引用元:https://grand-van-gogh-tokyo.com/highlights/
ゴッホの作品の登場です。
【新説・珍説:発見ポイント!】
◉なぜ、夜なのにこんなに明るいのか?
画家が夜を描く時、夜景は作者の意思次第でどんなにも暗くすることができます。この作品においてゴッホは明るい秋の一夜のひと時を描きたかった。そのことが画面から読み取れると思います。夜空に瞬く星々も、そして背景に灯る窓の光も、カフェテラスの背景を全体として明るいものとして描いています。
◉なぜ、星空よりもカフェの灯りに目がいくのか?
この絵は南フランスで地中海に面する街、アルルの一角『フォルム広場』で描かれていることは広く知られています。このカフェは暮れ沈んでいくアルルの街の一角に開いています。その明るさとお店から聞こえる声と香りに導かれて人々は束の間の時間を楽しもうと集うのです。この意識が鑑賞者の眼をカフェの灯りに誘うのです。
◉ゴッホはどこからこの景色を見ていたのか?
この絵の構図として、ゴッホはこのカフェに向かい歩く一客人としての視線の高さを選んで描いています。カフェに向かいながら、この店でどんな時間を過ごそうか、この店のテラスの明るさに誘われて近づいている人の眼に映る情景が描かれています。
◉なぜ、この瞬間を描こうと思ったのか?
この絵のテーマは?
それは暖色のイエロー系と寒色のブルー系との画面構成を意図的に構成しています。それは刻々と夜のとばりを深めていく時間。あたりが暗くなるにつれてカフェは明るい光に包まれていく。それに人々が集い、憩い、語らう空間。この時間だからこその空間の描こうとしたのです。これがゴッホが作品に求めたテーマです。
実はこの作品、今東京に来ています!
ぜひ本物のイエローとブルーの対比を見に美術館に出かけましょう~
【展覧会情報】
■ 『大ゴッホ展 夜のカフェテラス 』
2026年 5月29日(金)~ 8月12日(水) 上野の森美術館 (東京都・台東区)
https://grand-van-gogh-tokyo.com/
筆者:原 広信(はらひろのぶ)多摩美術大学卒業同大学院終了
現代アート作家 抽象作品を制作発表 現代アート青枢(せいすう)会副会長
またアクリル絵具でのリアルイラストレーションも手掛ける。
専門学校日本デザイナー学院(東京校)講師 ドローイング系授業を担当
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