インテリアデザイン連載「思い描いた建築・インテリアを実現するために 1」
はじめまして、インテリアデザイン科講師の渡辺です。
私が初めて日本デザイナー学院の教壇に立ってから、今年で6年目。様々な出来事を思い出されますが、中でもやはり、昨年からコロナの影響によってオンラインなど授業の在り方が変化し、これまで通りとはいかず私自身戸惑うことが多々ありました。しかしそんな状況下でも、生徒たちが互いに切磋琢磨し学業を全うしている姿に励まされ、より一層身が引き締まる今日この頃です。
さて、私は普段、建築設計事務所を運営しており、住宅設計やリノベーション・店舗設計などを行っています。設計事務所の仕事というと、どういった内容や風景を思いうかべるでしょうか?もちろん、図面を描くという作業がメインですが、その他にも色々とやるべきことがあるんですね。その一部をご紹介します。
第一回の今回は、デザインをするにあたり最も大切となる、「観察・情報収集」について。街を歩いた何気ない風景の中にも、流行りのもの・そうでないもの・ありふれたもの・唯一無二のもの・なぜか気になるものなど観察すべき対象はたくさんあり、人が創ったものだけではなく、草花・空・虫といった自然の中にもデザインのヒントは見つけることができます。
小さな頃から観察は好きでしたが、その頃は特にデザインどうこうといった視点で見ていたわけではありません。また学生時代に建築やインテリアを学ぶようになり、観察する動機が”デザイン”になったわけですが、最初の頃は自分自身が好きか嫌いか、そうした気持ちしかありませんでした。ですが観察の入口はそれで良いのだと思います。日々行なっていると、なぜ好きか、どう美しいか、どの季節や時間帯がより魅力的か、などいろいろな着眼点が次第に身についていきます。
”これは発見だ”と思える瞬間が訪れた時は、より一層楽しいですね。
次に、なるべくたくさんの良質な空間や建物を知ることを心掛けています。
限られた時間の中では、やはりインターネットや雑誌等で情報収集を行うことが多いですが、個人住宅を除く、店舗・美術館などの商業空間や庭園など、見にいくことができる場所はなるべく自分で足を運び体感したいですね。そしてまた観察する。
どの時代の誰の作品においても、デザインとは、そのデザインをするに至ったモチーフがあり、観察や情報収集から生まれた産物であると言えます。
こうした観察や情報収集から得た知識や体験が元となり、デザインの発想力や説得力が育まれていくものだと思います。設計事務所としてデザインや設計の仕事をする上では、いかにその引き出しをたくさん持てるかが、とても大切になってくるんですね。
次回は、「プレゼンテーション・打合せ」についてお話いたします。
文・渡辺一輝
NDSインテリアデザイン科講師。一級建築士。
<略歴>2010年 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科修了。鳶・解体などの現場業務、設計事務所にて住宅・店舗・家具設計業務を経て、2015年に建築デザイン事務所 3 ° A R C H I T E C T U R E 設立 2016年より日本デザイナー学院インテリアデザイン科講師