インテリアデザイン連載「思い描いた建築・インテリアを実現するために 3」
こんにちは、インテリアデザイン科講師の渡辺です。
前回の「プレゼンテーション・打合せ」に続き、設計事務所の仕事の一部をご紹介いたします。
第三回は「現場カンリ」についてお話いたします。
建築業界の「カンリ」という言葉には、「管理」と「監理」の二種類があります。
通称タケカンと呼ばれる「管理」は、主に施工会社による現場監督の立場で、工事現場の工程・安全・品質・予算などを管理する「施工管理」を指します。
一方で、通称サラカンと呼ばれる「監理」は、設計者等により、建築現場が設計図書通りに実施されているかを確認する「工事監理」を指します。
それぞれの「カンリ」という漢字に竹や皿が入っていることから、区別するため通称が使われているんですね。
私たち設計事務所の業務は、後者の工事管理が該当します。設計図書と施工状況との不整合・不具合の検査以外にも、依頼主と工事現場との調整役、工事進捗の依頼主への報告、監理報告書の作成、引き渡しの立会いなどその業務は様々あります。
計画された建築物の安全性の確保や品質の向上を図るために、施工者、そして設計監理者がそれぞれ異なる「カンリ」を行うことで、依頼主が安心して家づくりを任せることができるようになっているんですね。
ですが実際の建築現場では、色々なことが起こります。例えば、天気。梅雨の時期など雨が続いたり、台風の影響で、想定よりも工程がずれてしまうことがあります。
また、現場の施工状況が設計図書と不整合であることが確認された時、やり直しができる場合、他への影響が大きくやり直しが困難な場合、やり直さない方がむしろ良さそうな場合など様々です。
不整合の種類にもよりますが、どのようにしていくか依頼主と現場の調整をなるべくスムーズに行い、工程のズレ、計画変更の有無などに関し最適な解決策を見出すように努めなければなりません。
そして騒音や振動によって近隣トラブルも時々発生してしまいます。こうした現場での様々な出来事は、我たち設計監理者、現場施工者のみならず、依頼主を含む三位一体で乗り越え、設計図書の”紙の中の建物”が、”現実のもの”となって創り上がっていきます。
ここまで三回に渡り、設計事務所の業務の一部をご紹介してまいりました。単に図面を描くというだけではなく、様々な役割や業務の積み重ねにより、安心で、快適で、長く大切にしていただける建物を作るお手伝いをしているわけなんですね。
さて、NDSインテリアデザイン科の2年間の授業カリキュラムでは、主に発想力を磨き、設計手法を知り、プレゼンテーション能力の向上を目指しています。私は住空間を担当していますが、その他にも、店舗デザイン、家具デザイン、ディスプレイデザインなど各方面で活躍されている講師から学びを得られ、選択肢に幅を持つこともできますので、ぜひ興味を持っていただけたら幸いです。
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文・渡辺一輝
NDSインテリアデザイン科講師。一級建築士。
<略歴>2010年 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科修了。鳶・解体などの現場業務、設計事務所にて住宅・店舗・家具設計業務を経て、2015年に建築デザイン事務所 3 ° A R C H I T E C T U R E 設立 2016年より日本デザイナー学院インテリアデザイン科講師