本や雑誌をデザインする仕事とは?卒業生が語る、デザイナーとして成長し続ける6年間ー卒業生に会いに行こう![東京100ミリバールスタジオ]グラフィックデザイナー
クリエイティブ業界で活躍するNDS&NPIの卒業生にインタビューしてきました!
第6回目は、
専門学校日本デザイナー学院(以下、NDS)を卒業され、現在、デザインスタジオ「株式会社 東京100ミリバールスタジオ」で装丁や雑誌などのエディトリアルデザインのお仕事をされているデザイナー石倉大洋さんにお話しを伺いました。
自己紹介をお願いいたします。
石倉:高校卒業してすぐNDSに入学しました。2020年3月に昼間部グラフィックデザイン科を卒業後、東京100ミリバールスタジオというデザイン事務所に新卒で入社し、現在6年目になります。
![]()
現在のお仕事の内容を教えてください。
石倉:現在は、グラフィックデザインの中でも、書籍や雑誌などの出版物をデザインする「エディトリアルデザイン」を中心に担当しています。
この投稿をInstagramで見る
・現在、石倉さんがメインで担当している雑誌
主な制作物は、書籍・雑誌・社内報・会報誌などです。現在は、複数の書籍や月刊誌、折りパンフレットを組み合わせた冊子など、いくつもの案件を並行して制作しています。
仕事では、誌面のレイアウトやデザインを考え、クライアントに確認していただいた後、修正を重ねながら完成データを作成し、印刷会社へ入稿するまでを担当しています。
最近では、本の第一印象を決める「装丁(表紙)」のデザインも任せてもらえるようになりました。自分が手がけた本が書店に並んでいるのを見ると、大きなやりがいを感じます。
仕事のやりがいはどんなところにありますか?
石倉:完成した書籍が事務所に届いたときや、本屋さんで自分がデザインした本が実際に並んでいるのを見たときは、大きなやりがいを感じます。
「自分が手がけたものが街に並び、たくさんの人の手に届くんだ」と実感できる瞬間は、何度経験しても特別で、言葉では表せないほどの嬉しさがあります。
完成したことへの達成感や安心感はもちろんありますが、それ以上に「次はもっと良いものをつくりたい」「もっと成長したい」という気持ちが湧いてきます。
自分の仕事が形として残り、多くの人に届けられることは、この仕事ならではの大きな魅力だと感じています。
お仕事をなさっている中で、意識していることがあれば教えてください。
石倉:私は、相手の考えや「本当に伝えたいこと」を理解した上で、より良いデザインを提案することを大切にしています。
この投稿をInstagramで見る
・2巻から続けて書影を担当している漫画作品
例えば、手書きのラフや簡単な指示だけでは、そのまま形にするのではなく、「なぜここにこの要素が必要なのか」「何を一番伝えたいのか」を考え、書かれている内容以上の意図をくみ取りながらデザインに反映するよう心がけています。
また、情報をより伝わりやすくするために、見出しを追加したり、内容を整理して項目立てを行ったりするなど、自分なりの工夫や改善提案も積極的に行っています。
その結果、「より見やすくしていただき、ありがとうございます」と喜んでいただけることもあり、相手の期待を超える提案ができたときに、大きなやりがいを感じています。
今のお仕事に携わっているからこそ得られたスキルや技術があれば教えてください。
石倉:Adobe InDesignのスキルは、学生時代と比べて大きく成長したと感じています。
専門学校で基本的な使い方を学びましたが、本当の意味で身についたのは、仕事で毎日のように使い続けたからだと思います。経験を重ねるうちに、作業スピードも大きく向上し、学生時代は見開き2ページのデザインに3日ほどかかっていたものが、今では半日ほどで仕上げられるようになりました。
また、仕事では毎回異なるデザインや表現が求められます。その一つひとつに向き合い、「もっと良いデザインにしたい」と考えながら制作を続けてきたことで、自然とアイデアの引き出しも増えていきました。
ふと以前の作品と比べたときに、「できることが増えた」「考え方の幅が広がった」と成長を実感できる瞬間があります。そうした積み重ねを振り返るたびに、「これまで頑張ってきて良かった」と、この仕事のやりがいを感じています。
仕事で大変だったと感じたことはありますか?
石倉:多数の案件を同時並行で進めているので、時期によっては一斉にスケジュールが動き出してしまう時もあり、どう進めても間に合わないな。と思いつつ、なんとか頑張って終わらせてる時は大変ですね。
NDSでは、どんなことを学んでいましたか?
石倉:グラフィックデザイン科に在籍し、グラフィックデザインの基礎、アナログ画材を作った表現方法、Adobeソフトの操作方法に加え、写真や映像、Webデザインなども学んでいました。
学生時代はどんな作品を作られていたんですか?
石倉:学生時代は、冊子を制作する課題に特に力を入れて取り組んでいました。
もともとファッションが好きで、ファッション誌のデザインに憧れていたことが大きな理由です。デザインの仕事に興味を持ったきっかけも、実はファッション雑誌でした。
この投稿をInstagramで見る
誌面の中で、文字と写真が美しくレイアウトされ、ページをめくるたびに世界観が伝わってくる表現を見て、「こんなデザインをつくる仕事がしたい」と思うようになりました。
また、私はイラストを描くことが得意なタイプではなく、奇抜なアイデアで勝負するよりも、用意された写真や文章を整理し、限られたスペースの中で見やすく、美しくレイアウトすることに面白さを感じていました。
「この力なら自分の強みにできる」と考え、冊子制作の課題には特に力を入れて取り組んでいました。
その経験が今につながり、現在は書籍や雑誌などのエディトリアルデザインを中心に手がけるデザインスタジオで仕事をしています。学生時代に好きだったことや得意だと感じたことを大切にしてきたからこそ、今の仕事につながったのだと思います。
印象に残っている授業や先生はいますか?
石倉:特に印象に残っているのは、齋藤先生の授業です。この授業を通して、デザインの面白さや可能性に改めて気づくことができました。
それまでにもIllustratorを使ってポスターや冊子を制作する授業はありましたが、齋藤先生の授業では、その知識をさらに発展させ、動画制作やWebコーディングなど、グラフィックデザインの枠を超えた内容まで学ぶことができました。
「デザインにはこんな表現方法もあるんだ」と新しい発見が多く、自分の将来の選択肢や可能性が大きく広がったと感じています。
ちょうど審査課題に取り組んでいて、アイデアに行き詰まっていた時期でもあったため、新しい視点や考え方に触れられたことが良い刺激となり、その後の作品づくりにも良い影響を与えてくれました。
在学中にこれはやってよかった、逆にやっておけばよかった事はありますか?
石倉:学生時代にやっておいて良かったことは、どんな課題でも最後まで取り組み、提出し続けたことです。
苦手な分野の課題も、「苦手だから」と途中で諦めることはせず、一つひとつ最後までやり切ることを大切にしていました。その経験で身についた粘り強さや責任感は、社会人になった今も仕事を進める上で大きな力になっています。
一方で、「もっとやっておけば良かった」と思うのは、さまざまなものに触れてインプットする時間をつくることです。
学生時代は、授業の課題とアルバイトで毎日があっという間に過ぎていましたが、美術館へ行ったり、書店でデザインやアートの本を読んだり、映画を観たりと、もっと多くのカルチャーに触れる時間を持てばよかったと感じています。
もちろん社会人になってからでもできますが、感性や吸収力が豊かな学生のうちにたくさんの作品や文化に触れておくことは、自分の引き出しを増やし、将来の作品づくりや発想にもきっと役立つと思います。
インプットをもっとたくさんしておけばよかったとの事ですが、今はどんなインプットをされてますか?
石倉:現在は書籍や雑誌のデザインを中心に手がけているため、本屋さんへ足を運ぶことを大切にしています。
特に、店頭で目立つ場所に並んでいる話題の本や売れている本は必ずチェックし、「なぜこの本が手に取られるのだろう」「どんなデザインが読者を惹きつけているのだろう」と、自分なりに分析するようにしています。
日頃からさまざまなデザインに触れ、その良さや工夫を考えることは、自分の引き出しを増やし、新しいアイデアにつながる大切なインプットになっています。
就活はいつ頃からはじめられましたか?どのように進めていましたか?
石倉:専門学校2年生の秋に、初めて企業へ応募しました。しかし、ポートフォリオなどの準備が十分ではなく、思うような結果にはつながりませんでした。
その後は、卒業制作や卒業・修了制作展の準備に集中していたため、気がつけば2月になっていました。そこから改めて就職活動に向き合い、インターネットなどを活用しながら、自分が働きたいと思える会社を一社ずつ探して応募しました。
その中で現在勤務しているデザインスタジオと出会い、ご縁があって内定をいただくことができました。
就職活動では、最初からうまくいくとは限りません。大切なのは、一度うまくいかなかったとしても諦めずに準備を重ね、自分に合った会社を見つけることだと感じています。
なぜ現在所属する企業の採用に応募しようと思ったのですか?
石倉:学生時代から、特に冊子ものに力を入れていたので、その自分の強みを活かせるデザイン会社に行きたいと考えていました。
求人を調べていたところ、弊社のサイトを見つけました。
弊社のサイトは、TOPの画面に手掛けた本の書影がたくさん掲載されていました。幅広いテイストが並んでおり、ここなら色々学びながら働けるかもと思い、応募しました。
新卒1年目から2年目の間にどのような経験をされたのか教えてください。
石倉:新卒1年目は、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時期でした。
初めて出社した日に、リモートワーク用のパソコンを準備したことを今でもよく覚えています。そして、その3日後には社員全員がパソコンを自宅へ持ち帰り、リモートワークがスタートしました。
入社したばかりで仕事の進め方も分からない中、自宅で仕事をすることになったため、先輩から直接教えてもらえる機会が少なく、「思うように成長できない」と悩むこともありました。
1年目は、文字修正などの基本的な業務を担当することが中心でしたが、コロナ禍が落ち着いて出社できるようになると、社長から直接指導を受けられる機会が増え、仕事への理解も深まっていきました。
リモートワークの期間は2〜3年ほど続きました。新人だったこともあり、仕事を任せてもらえる機会が限られることもありましたが、その時間を無駄にはしたくありませんでした。
先輩が制作したデザインデータを見ながら、「なぜこのレイアウトなのか」「どういう意図でこのデザインになっているのか」を自分なりに考え、実際に真似をしながら学ぶことを続けました。そして、質問できる機会があれば積極的に理由を聞き、一つずつ理解を深めていきました。
振り返ると、思うように教わることができない環境だったからこそ、自ら考え、学ぶ力が身についたと感じています。その経験は、今の仕事にも大きく生かされています。
学生時代の経験が今に活きているなと感じることはありますか?
石倉:個性豊かなクラスメイトに囲まれ、さまざまな価値観や考え方に触れられたことは、学生時代の大きな財産です。
卒業後にデザインフェスタで実施したグループ展の様子
一人ひとり発想や作品づくりのアプローチが異なり、自分にはない視点に出会う機会がたくさんありました。その環境で学んだことで、自分の考えに固執するのではなく、多様な意見を受け入れ、新しい視点を取り入れながら物事を考える習慣が身についたと感じています。
デザインに正解は一つではありません。だからこそ、さまざまな価値観に触れながら視野を広げられた経験は、今でも仕事でアイデアを考えたり、相手の想いを形にしたりする場面で大いに役立っています。
最後に、デザインの仕事を目指すみなさんへのメッセージをお願いいたします。
石倉:デザインは、特別なものではなく、私たちの生活の一部です。だからこそ、たくさんのことを学び、作品を作り続けてほしいと思います。
学生時代は、「どれだけ個性的で独創的な作品が作れるか」を意識して制作していました。しかし、仕事としてデザインに携わるようになると、それだけではなく、「誰が見ても分かりやすく、違和感なく伝わるデザイン」が求められることに気づきました。
例えば、フォントの選び方や文字・写真の大きさ、レイアウトのバランスなど、一つひとつの要素には理由があります。目立たせることだけではなく、読みやすさや使いやすさを考えてデザインすることがとても大切です。
私は、この「違和感のないデザイン」は、私たちが日常生活の中で自然と身につけているマナーや常識に似ていると考えています。例えば、お葬式では喪服を着る、電車では周りに配慮して静かに過ごすなど、相手のことを考えて行動することと同じです。デザインも、見る人の立場に立って考えることで、初めて伝わるものになります。
だからこそ、普段の生活で目にするデザインや街の風景、人の行動にも興味を持ち、たくさん観察し、たくさん作品を作ってください。その積み重ねが、デザイナーとしての力につながっていくと思います。
石倉さん、ありがとうございました!
取材/PicoN!編集部 市村
↓PicoN!アプリインストールはこちら