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スクリーントーンが生み出す表現を、現役漫画家と探る「アイシースクリーン展2026」

影や質感、光、空気感――漫画の中でさまざまな表情を生み出してきたスクリーントーン。半透明のフィルムに印刷された柄や網点を貼り、重ね、時には削ることで、描き手の意図に合わせて多彩な表現をつくり出せる、漫画制作には欠かせない画材のひとつです。

デジタルでの漫画制作が当たり前になった今、改めて注目したいのが、手作業だからこそ生まれるアナログ画材ならではの表現力。

そんなスクリーントーンの魅力を「再発見」できるのが、現在開催されている「アイシースクリーン展2026」です。本展では、スクリーントーンそのものではなく、スクリーントーンを用いて制作されたアナログ作品を展示。さまざまなクリエイターが生み出した作品を通して、スクリーントーンが一枚の絵にどのような表情を与えているのかを間近で見ることができます。

 

今回は、現役漫画家の雲七紅先生と一緒に会場を巡りながら、展示作品に使われたスクリーントーンの表現をチェック。「この表現はどうやって生まれている?」「プロはスクリーントーンをどんなふうに使ってきた?」――作品を見ながら話を聞くことで、アナログ画材だからこそ生まれる表現の面白さを探ってみました。

プロフィール写真

雲七紅

マンガ家・イラストレーター。魔法使いやファンタジーもの、女の子を描くのが好き。主な作品は、『繰り返す夜会で、今夜もまた貴方から婚約破棄を』コミカライズ担当完結(ナナイロコミックス)『ミラクルきょうふ! 本当に怖いストーリー』『ミラクル相談室 ネット&スマホのトリセツ』シリーズ(西東社)など

 

夏休みの原宿を抜けて会場へ

JR原宿駅の表参道口を出ると、まず目に飛び込んでくるのは、夏休み真っただ中の原宿らしいにぎわい。駅前にはたくさんの人が行き交い、友達同士で歩く学生や、ショッピングを楽しむ人たちでいっぱいです。原宿といえば竹下通りを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、今回の会場へ向かうなら、表参道口から表参道方面へ。駅を出て表参道へ向かって歩いていくと、ほどなくしてラフォーレ原宿や東急プラザ表参道「オモカド」が見えてきます。ラフォーレ原宿は表参道と明治通りが交わる交差点に位置する、原宿を代表する商業施設のひとつです。ここまで来たら、ラフォーレ原宿のある交差点を目印に明治通りを渋谷方面へ。夏休みということもあって、道沿いにはお店をのぞきながら歩く人や、目的地へ向かう若者たちの姿が途切れません。

原宿らしい活気を感じながら歩いていると、今回の展示が待つ会場へと近づいてきました。

今回の会場は、原宿マリーエンケーファー

原宿駅から徒歩7分の隠れ家のようなギャラリーです。

階段を降りて左側がギャラリーです。

 

アナログ画材の表現力を再発見する「アイシースクリーン展2026」

そして、いよいよ「アイシースクリーン展2026」へ。原宿の街を行き交う人々の中を抜けてたどり着いた先には、スクリーントーンを使って生み出された、さまざまなアナログ作品が待っています。

本企画展は漫画制作に欠かせないキャラクターの感情や背景、影などを表現するための画材として長年親しまれてきたアイシースクリーン(トーン)に焦点を当て、その豊かな表現力や独特の質感を再発見する内容となっています。

アイシースクリーン(トーン)とは

アイシースクリーン(トーン)は、半透明のフィルムにパターンやアミ点などを印刷したコミック制作の定番商品です。約700種類ものデザインを展開しており、多くのプロ漫画家にもご愛用いただいています。本製品を使用することで、濃淡や柄はもちろん、キャラクターの感情まで豊かに表現できます。
また、フィルムの裏面はワックスタイプの接着剤で、貼ったり剥がしたりといった作業を簡単に行うことが可能です。

アイシースクリーン製品ページ:https://www.icscr.jp/icscreen/

(引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000109.000138307.html

 

出典作家さんは、漫画家のみならず、イラストレーター、グラフィックデザイナーなど様々な領域で活動されている方々で、漠然と【アイシースクリーンは、漫画を制作するときに使用するアイテム】と思っていた筆者は、展示されている作品を拝見して、もっと柔軟に色々な使い方をしていいアイテムなんだと感じました。グラフィックイラストとの相性も良く、漫画作品以外でも多くの作品に愛してもらえるアイテムである事が伝わってきました。多くの方は、漫画原稿用紙に描かれていましたが、中には、日々制作で用いている和紙で制作する作家さんもいらっしゃいました。

 

個性豊かな作品のキャプションには、使用画材のほか、アイシースクリーンの何番のものかが掲載されていたのも、アイシースクリーン展ならでは。

 

数ある中から厳選されたアイシースクリーンも販売されています。

 

漫画制作で実際に使用するアイテムの他、アイシースクリーンのクリアファイルや、漫画原稿用紙のメモなどユニークなアイテムもたくさん販売されていました。

 

 

小学生の頃からスクリーントーンに触れ、漫画制作を続けてきた雲七先生に、スクリーントーンとの出会いや、アナログならではの表現について聞きました。

小学6年生で出会ったスクリーントーン

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市村

スクリーントーンを使い始めたのは、いつ頃だったのでしょうか?

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雲七紅

小学6年生の頃ですね。

当時、応募したい漫画賞があったんです。でも、漫画用品を一つも持っていなくて。放課後通っていた学童に、偶然、漫画家を志していた先生がいたので、世界堂を紹介してもらい、買いに行きました。

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市村

初めて自分でスクリーントーンを買ったときのことは覚えていますか?

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雲七紅

最初に買ったものは、すごくベーシックなものだったと思います。

漫画家向けのセットも売られていて、その中に必要なものが一通り揃っているものがあったので、「これで間に合うんじゃない?」という感じで手に入れました。

当時は、先生から「これを買ったほうがいい」と教えてもらったというより、とりあえず売っているところを教えてもらって、実際に買ってみた感じですね。

雲七先生のアイシースクリーンコレクション

初めてのスクリーントーンは「とにかく使ってみる」

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市村

最初からうまく使えましたか?

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雲七紅

いや、最初は貼り方がよく分かっていなかったので、うまく貼れなかったですね。スクリーントーンって、学生からするとちょっと高価なアイテムだったんですよね。1枚でもそれなりの値段がするので、失敗すると「もったいない!」という気持ちもあって慎重に貼ってました。

何回も失敗して、破れちゃったり、原稿切っちゃったり

そういう経験をしながら、少しずつ使い方を覚えていきました。

「貼る・重ねる・削る」ことで変わる表現

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市村

スクリーントーンを貼る技術は、どのように身につけていったのでしょうか?

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雲七紅

最初からうまく貼れたわけではないです。使っていくうちに、どこに貼るか、どう重ねるか、どう扱えばきれいに仕上がるかを覚えていきました。

スクリーントーンは、同じものでも使い方によって全然違って見えるんですよね。何を見せたいのか、どこに印象を残したいのかを考えて、トーンを使い分ける。そういうことを繰り返しながら覚えていったんだと思います。

本記事のための雲七先生のスクリーントーンを使用した描き下ろしイラスト

本記事のための雲七先生のスクリーントーンを使用した描き下ろしイラスト

「何にどう使うか」を考えるのが面白い

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市村

今回の展示作品を見ていて、改めてスクリーントーンの面白さを感じるところはありますか?

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雲七紅

人によって使い方が全然違うところですね。

同じスクリーントーンでも、何にどう使うかで表現が変わる。どこを見せたいのか、何を印象として残したいのか。

そういう使い分けを考えるのが面白いと思います。

スクリーントーンって、ただ貼ればいいというものではなくて、作品の中でどう見せるかを考えるための画材なんですよね。

デジタルになっても、アナログの経験は生きている

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市村

今はデジタルで作画することも増えていると思いますが、アナログとデジタルでは、トーンの表現は変わりますか?

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雲七紅

変わると思います。

デジタルだと、印刷したり書き出したり、画面サイズを拡大・縮小したりすると、網点の掛け合わせが少しズレて見えることもあります。

だから、そういうところは気をつけています。

アナログの場合は、実際に紙に貼っていくので、トーン同士の重なり方や、削ったときの見え方など、手を動かして確認しながら作っていくことができます。

デジタルにはデジタルの良さがありますが、アナログならではの感覚もあると思います。

描かない事で描かれる表現

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市村

本展で気になった作品を教えてください。

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雲七紅

こちらの作品です。あえて右側の風鈴の主線を描かない事で、前ボケを演出していますね。

「できて当たり前」の技術が、失われつつある

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市村

スクリーントーンを使える人や、アナログで作画できる人について、最近感じることはありますか?

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雲七紅

昔は、漫画を描くうえで「できて当たり前」だったことが、今は少しずつ変わってきていると思います。デジタルで作画する人が増えているので、アナログでトーンを貼ったり、アシスタントとして作業したりできる人は、以前より少なくなっている印象があります。だからこそ、今後はアナログの技術を持っていること自体が、ひとつの強みになるんじゃないかなと思います。普段デジタルで制作する事が当たり前になっていますが、久しぶりにアナログで制作したいという気持ちになってきました!

スクリーントーンを知ることは、表現の引き出しを増やすこと

スクリーントーンは、漫画を描く人にとってはおなじみの画材かもしれません。

けれど、「知っている」ことと「どう使うかを知っている」ことは、少し違うのだと気づかされます。

どこに貼るのか。どのくらいの大きさで使うのか。重ねるのか、削るのか。そして、その表現で何を見せたいのか。

デジタルでの作画が主流になった今だからこそ、実際に紙の上でトーンを扱ってみることで、自分の表現について考えるきっかけになるのかもしれません。

展示された作品を見ながら語ってくれた雲七先生の言葉からは、スクリーントーンが単なる「漫画を仕上げるための道具」ではなく、作品の印象をつくり、描き手の意図を伝えるための表現手段であることが伝わってきました。

 

アイシースクリーン展2026』は2026年8月30日(日)まで

《展覧会情報》
『アイシースクリーン展2026』
⽇程:2026年8月14日(金)〜8月30日(日)
時間:12:00〜19:00 ※火曜日定休
会場:原宿マリーエンケーファー(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目28−4 シニック関根ビル 地下1階B)
観覧料:無料

取材・撮影/PicoN!編集部 市村

 

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