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1枚の広告ポスターができるまで。クリエイターの舞台裏を覗いてみよう!(インタビュー中編)

“秀逸” ポスターの裏側に迫るインタビュー・中編!

今回は、ポスター制作の流れや舞台裏を深掘りし、クリエイターという仕事のリアルな現場をお届け。前編に引き続き、1枚のポスターに込めた思いや工夫の数々も伺います。

■前回の記事はこちら↓

ポスター1枚のために「100案」考える!

――発想されたアイデアたちは、どうやって1枚のポスターに育っていくのでしょうか? 制作の流れを教えてください。

長井)コピーライター3人とデザイナー3人がそれぞれアイデアを持ち寄り、週1回×4回=1ヶ月ほどのブレストをします。そうして最終的に8案まで絞り込み、コヤマドライビングスクール様にプレゼンするんです。

長井)まず1回目の会議では、6人がそれぞれ7~15案くらいずつ持ち寄ります。コピーライターはキャッチコピーを、デザイナーはポスタービジュアルに簡易的なコピーをつけたものを提出するのが基本。それらをいったんザーッと壁に貼って、面白いものを選んでいく感じです。最近はリモート会議でやることも増えましたが。

2回目のブレストでは、1回目よりさらに案が増えることがほとんどですね。追加の案が出たり、既出の案に別のコピーやビジュアルをつけてみたりするので。ひとつの画に対し、コピーライターが10パターンくらい言葉をつけることもあります。そんなこんなで、50~100案くらいには膨らんでしまうんです。

――ポスター1枚をつくるために、50~100案……!

長井)3回目~4回目の会議では、それらのアイデアをブラッシュアップさせつつ、いい案を選別していって、最後の8案を絞り込んでいきます。この8案は、なるべく切り口がカブらないものを選ぶよう心がけています。「ゆかいなもの」「かっこいいもの」「情緒的なもの」「気づきがあるもの」……などいろんなバリエーションを用意して、プレゼンに持って行く。ビジュアル的なカブりもなるべく避けるようにします。たとえば夏でしたら、「海」がテーマのものは4案までにしよう、とか。

ーークライアントワークの中で大変なことはありますか?

長井)8案の中から1案しか選ばれないので、自分たちのお気に入りが採用されるとは限らないことでしょうか(笑)。イチオシの作品が通らなかったり、ボツになったものの中に自信作があったりもします。

SNS時代で覆った、ポスターデザインの「常識」

ーー数回にわたるブレストを経て、最初のラフとはまったく違う仕上がりに着地することもありますか?

岡田)前編でも触れた〈夏のイルミネーション〉はそうですね。

〈夏のイルミネーション〉2022年・夏のポスター
出典:Koyama Driving School|POSTER GALLERY

岡田)〈夏のイルミネーション〉というこのコピー、最初は「海に反射するキラキラした太陽光」のことを指すものでした。でもその後、ふと「イルミネーション」という言葉の意味を調べてみたんです。すると、イルミネーションとは特に「人工的な」光を意味する言葉であることがわかった。それで、夜の東京湾アクアラインを描いたこのデザインが思い浮かんだんです。ドライブに行くと、特別な名所ではなくても、ライトの光がきれいに見える道っていっぱいあるでしょう。それを「イルミネーション」になぞらえたら、また違った印象のポスターになるんじゃないかと。

―― “真昼の海” から “夜の高速道路” に。同じキャッチコピーでも、180度イメージが変わって面白いですね。

岡田)〈敷かれたレールなんて、走れない。〉も、企画段階から大きく変貌を遂げたポスターのひとつです。「鉄道」という交通手段そのものをライバル視するという、なかなか強気な企画でしたが(笑)。

〈敷かれたレールなんて、走れない。〉2017年・秋のポスター
出典:Koyama Driving School|POSTER GALLERY

岡田)じつはこの年、コヤマドライビングスクール様が、教習車として黄色いアウディ(※)を導入されたんです。せっかくなので、このアウディをポスターに載せたいとのご依頼が。そこで急遽、教習車を撮影しに行き、ポスターのイメージを丸ごと差し替えたんです。

※アウディ……ドイツ・バイエルンに本社がある、高級自動車メーカー&ブランド。「技術による先進」をスローガンに掲げる。

上:旧バージョン下:新バージョン

岡田)この写真を見ての通り、最初は線路をテーマにしたものではなく、女性が自然のなかにいる柔らかい印象のポスターだったんです。車種がアウディであるとしっかり伝わるよう、車体の側面ではなく正面を写す構成に変更しました。

ポスターのメインカラーも緑からオレンジに変わりましたが、これには2つの理由がありました。1つは、秋という季節に合うような、紅葉っぽいイメージの色にしたかったから。もうひとつは、黄色い教習車に合う同系色にしたかったためです。

――その結果、オレンジ色が大胆にあしらわれた、ビビットなデザインに仕上がりましたね。

岡田)じつはそれも、ポスターデザインをするうえでのテクニックのひとつなんです。コヤマドライビングスクール様のポスターは、駅の車内や構内に掲示する「駅貼り」が基本。駅というゴチャゴチャした場所で目立つためには、「色の大きなカタマリ」って強いんですよね。また運転による「自由さ」を表現する意味でも、空間を広く描いたポスターをつくることが多いです。

空間を広く描き、「色のカタマリ」によるアピール効果を狙った作品例。

――いままでの企画の中で、特にチャレンジングだったものがあれば教えてください。

長井)2016年の春ポスターは、ビジュアルではなく「言葉」を主役とした、珍しいタイプのポスターでした。

〈はじめての運転。助手席に誰を……〉2016年・春のポスター
出典:Koyama Driving School|POSTER GALLERY

初めての運転。助手席に誰を乗せたいですか? 恋人? 家族? 友だち? 残念ですが…それ…教習所の先生です。手書きのコピーだけの状態で出てきた案でしたが、すごく面白くて、輝いて見えました。このコピーに合うようなイラストも何パターンも考えてみたんですが、最終的には文字をはみ出そうなくらい大きくレイアウトし、さらに特色(※)という発色のいい印刷法で文字を目立たせることで、完成形に至りました。

※特色……通常のインク(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)では表現できない色を出すために、インクを特別に調合して印刷する方法のこと。

岡田)ポスターには普通、長い文章を載せることって少ないんです。一瞬で目に留まって理解できるような、インパクトあるビジュアルで魅せるのが基本ですから。

でも、SNSの登場によってそんな「常識」が変わりました。SNSのユーザーって、比較的じっくりと文字情報を読んでくれるんですよ。だから本当に面白いアイデアなら、文字の長さはそれほど関係なく受け入れてもらいやすくなった。実際、このポスターはSNSで話題になり、駅で目にする人以外の多くの人に知ってもらうことができ、ニュースや専門書などでも取り上げられました。時代の変化により、これまでは常識だった媒体ごとの制約も関係なくなってきたんだな、と実感した事例でした。

人間の力を信じ、「AIにはできない表現」を追求したい

――最後に、クリエイターとして大切にしている信念があったらお聞かせください。

長井)最近はそれこそSNSの時代になり、言葉の力が良くも悪くもクローズアップされることも増え、言葉には大きな力があることが証明されました。アイムでは、この言葉とデザインとを掛け合わせて、広く多くの人たちに届くようなものをつくりたいと考えています。ホームページやSNSだけでなく、Web広告やデジタルサイネージのような電子広告など、新しい表現方法にも挑戦し始めています。

またAIという新しいテクノロジーも登場し、将来的にコピーライターやデザイナーはAIに取って代わられるのでは? という見方もあります。でも私は、やはり人のものはAIにはつくれない、と信じています。人だからこそわかる感覚というものがある。時代や媒体が変わっても、AI技術がさらに向上しても、やはり人がつくる言葉やデザインには需要があると考えています。

「ちゃんと人がつくったもの」を大事にし、AIにできないことに挑戦しながら、メインクライアントであるコヤマドライビングスクールさんがより発展できるように、今後もさまざまな提案や協力を続けていきたいと考えています。

――生身の人間としての感性を研ぎ澄ませながら、もがき、苦しみ、知恵を絞る。そうやって大切につくり出されたものだからこそ、アイムのポスターは多くの人の心を打つのかもしれません。

次回・後半では、いよいよポスターの発注元である自動車学校・コヤマドライビングスクールにお話を伺い、ポスター戦略の狙いや裏側を深掘りします。

取材・文/佐藤舜 撮影/黒田渉

〈関連リンク〉
コヤマドライビングスクール HP
koyama.co.jp
株式会社アイム HP
im-ad.co.jp

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