[後編]いとうみちろう先生が教える「キャラクターデザインで大切な2つのこと」

前回、いとうみちろう先生にキャラクターデザインのお仕事の流れや「大切なポイント①」を教えていただきました。今回はキャラクターデザインをより完成度の高いものにしていくための「大切なポイント②」をお伝えしてもらいます。プロのイラストレーターとしての経験談や、気になる“究極的な答え”とは…?!

 

キャラクターデザインで大切なこと②

作品だけ大好きでキャラは嫌いとか、逆にキャラだけは大好きで作品は嫌いという話はあまり聞いたことがありません。キャラクターの魅力はその作品や、媒体自体の魅力とほとんどイコールです。ですからもしキャラクターをデザインすることになったら、その媒体の特性をしっかり理解して、求められている内容にぴったりと合ったキャラクターを考える必要があります。

例えばゲームのモンスターだったら、弱いのか強いのか、属性は、弱点は、ドット絵?2D、3D?・・・。お菓子のパッケージキャラをデザインするのであれば、その商品開発の経緯やターゲットの客層、ゆるいのかリアルなのか、ギャグっぽいのかシリアスなのか・・・そういったキャラクターに対する要望は依頼側から伝えられて、それらを加味した上で魅力的なデザインを作っていく必要があります。で、たくさんアイディアを出していろいろラフを考えて、その媒体と「ぴったり合う」というのを模索していきます。

 

キャラクターデザインのお仕事では模索と試行錯誤が大切!

これはもうケースバイケースですが、私の場合例えば20体くらい描いたキャラクターデザインのラフがすべてボツったことがあります。一方サラサラ―と簡単に描いたものが採用されたこともありました。さすがに20案すべてボツったときは少しへこみましたが、他のイラストレーターさんのエピソードとかを見聞きしていると、意外とそういう体験をされている方は多いようです。まずは依頼してくれた人に納得して喜んでもらえるものを作ることがミッションクリアの第一条件です。ちょっとしたしつこさも必要ですが、めげずに資料を集めたり、その商品に対する知識を深めたりして、試行錯誤をしながらデザインを模索すること。そういった依頼者の要望や媒体の特性にぴったりと合わせていこうとする姿勢がキャラクターデザインには重要だと感じています。

 

キャラクターデザインに大切なコト、まとめ。

さて、それでは最後に私が考えるキャラクターデザインに一番大切なことをお話します。もちろんいろいろあって一言では言い表せないのですが、そこであえて一番大切なこと、結論を言います。答え、一番大切なこと・・・それは、実は、究極的には「分からない」のです。

・・・ごめんなさい。えー!?と思う人もいるでしょう。肩透かしもいいところですが、この点は正直に言っておかなければなりません。

あらゆる分野でたくさんのクリエイターたちが日夜ステキなキャラクターを生み出そうと奮闘しています。そんな中でも日の目を見るのはわずかです。そこには安易な「答え」は存在しません。

ですから皆さんはよりよいキャラクターを生み出すために、そして自分自身の創作のために、さまざまな知識や技術を身に付けてください。たくさんの課題と向き合う中で成長し、挑戦し、試行錯誤しながら最大限のやれることをやっていってほしいと思います。しいて言えば、そのことが「一番大切なこと」だと感じています。

 

NDS講師 いとうみちろう
イラストレーター。児童書や絵本、教科書や雑誌、アプリ、カード、舞台美術などさまざまな分野を手掛ける。教育関係の仕事の傍らフリーランスとして活動をはじめ、これまでカルチャーセンターや美術学校などで、小学生から高齢者まで幅広い年代を対象に講師として指導。

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