自分の作品を守るために!クリエイターが知っておくべき権利と法律ーイラスト編ー

著作権で保護されているキャラクターやイラストを真似して描くことを、イラストレーションの世界では版権モノ、二次創作などと言っています。 趣味や練習で描くなら問題ないのですが、作品として発表したり販売したりすると著作権法違反、立派な犯罪となります。でもコミケやピクシブ、SNSなどには堂々と並んでいますよね。これには日本ならではのちょっとした事情があります。

日本の版権カルチャー

日本では著作権は長い間親告罪でした。親告罪というのは被害を受けた側が告訴しないと犯罪が成立しない法制度のことを言います。つまり権利を持っている作者、出版社、管理会社などが訴え出ない限り、罪にはならなかったのです。

ファンがやっていることでもあり作品の宣伝にもなるので、真似された側も悪質でない限りあまり訴えることはしませんでした。こうした習慣が日本では根付いているので、版権モノが日常的に溢れているのです。

ところがTPP(環太平洋パートナーシップ)の締結に伴う法改正で平成30年末から、日本でも諸外国に倣い著作権法違反は親告罪ではなくなりました。これで日本の版権カルチャーは絶滅するのか、というとそんなことはなく、「原作のまま」「権利者の利益を不当に害する」など、非親告罪化の要件がついたため、現実的にはほぼ従来通り、多くの版権モノは見逃されている状態です。

だからといって、もちろんやり放題なわけではありません。オリジナル作品として発表されるのものと、版権モノは明確に区別されるべきです。厳格に二次創作を禁じている作者、権利者も多くいます。そこを間違えると、大変なことになります。プロのデザイナー、イラストレーターなら、一気に信用を失って失業することになるでしょうし、学生なら退学除籍処分になっても文句は言えません。著作権法違反は立派な犯罪なのです。

著作権のグレーゾーン

一方、絵を描くときに資料としていろいろな写真やイラストを参考にしたり、好きな作品やキャラクターに影響されてタッチが似てしまうことはありますよね。この場合はどうなのでしょう?

著作権で保護されるものは、絵や写真そのものであって、タッチや雰囲気、アイデアなどは著作権の対象外です。つまり元のイラストや写真自体を盗用するのはアウトですが、タッチや雰囲気が似てしまうのは問題ないということです。また資料として使う場合、元のイラストや写真が特定できない程度にアレンジされていれば、問題になることはありません。

ちょっとあいまいですよね。「盗用」と「似ている」、「特定できる」「できない」の程度。どこに線引きがあるのでしょう?実はこのあたりが著作権のグレーゾーンになっています。明確な基準があるわけではなく、ケースバイケースで判断するしかありません。クリエイターとしては、細心の注意を払って疑いの目を向けられないよう務めるしかありません。

二次創作は楽しいし、絵の勉強にもなります。ルールをしっかり認識した上で、創作活動に励んでほしいと思います。

文・鈴木 真紀夫
イラストレーター。専門学校日本デザイナー学院主任講師。
静岡県出身。デザイン会社、編集プロダクション、出版社などを経て、現在フリーランスイラストレーター。
学研、講談社、KKベストセラーズ、ニュートンプレス、PHP研究所、主婦の友社、汐文社など、書籍表紙、挿絵、広告などのイラスト制作で活動中。

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