乗り物撮影の5つのポイントーチャーリィ古庄先生に聞く!飛行機編ー
飛行機とヘリコプターのパイロット資格を持ち、旅客機専門の航空写真家として活躍されているチャーリィ古庄先生に飛行機撮影のポイントや海外空港での貴重なお話をお伺いしました!チャーリィ古庄先生が撮った飛行機写真とともにお楽しみください。
チャーリィ古庄先生は世界各国で様々な機体を撮影されていますが、これは忘れられないという撮影体験や強く印象に残っている国などはありますか?
日本ではどの空港でもヒコーキ撮影を楽しむことができるばかりか、ヒコーキを眺めることができる展望デッキも一般的ですが、世界のスタンダードでは展望デッキがある空港はレアで、撮影ポイント探しから始まります。また空港はテロの標的にもなるため撮影禁止の場所も多く、公に「撮影禁止」と書かれているわけではないので、パリ・シャルルドゴール空港で撮影していると突然機動隊に囲まれて連行されたり、ベネズエラのカラカス空港で兵士にマシンガンを向けられたりしたこともあります。また、海外の空港周辺は治安が悪い場所も多いです。こちらの望遠レンズは彼らの年収よりも高額なため、狙われないように目立たないように配慮するなど最新の注意が必要です。インドではスラム街の横で撮影するなど、なんども怖い思いをしています。
飛行機を撮る5つのポイントを教えてください。
1:風向きが重要
風が弱い場合や地方空港で例外もあるが、基本的に飛行機の離着陸は向かい風で行われる。そのため、風向きで飛んでくる方向が変わる=撮影ポイントや絵も変わるため、当日の風向きを知るのが重要。
2:光と季節を考える
旅客機はボディが円柱を横にしたような丸い形をしているため、朝夕の斜光なら機体の下まで光がまわるが、夏の昼間のトップライトではボディ下部が影になってしまい美しくない。そのため光の向きと立ち位置、ベストな時間帯を考えよう。
3:フライトレーダー24のアプリを使う
ハイアマチュアや我々プロの航空写真家は管制塔とパイロットの交信が聴ける航空無線機を受信(合法)して飛行機の動きを把握して撮影するが、英語で専門用語のため入門者にはハードルが高い。フライトレーダー24という無料のアプリを使用すれば、旅客機なら90%は動きが把握できる。
4:視程が大切
視程とは水平方向にどれだけの距離が見えるかという事。例えば東京の冬の朝なら富士山がクリアに見える確率が上がるが、夏場はあまり見えるチャンスは少ないというもので、視程が悪いと青空ではなく白い空になるほか、背景もクリアに見えずどこで撮影したか分からないような写真になってしまう。
5:天気予報は重要
背景に空が多く写る飛行機撮影において、天気は大切で「晴れ」の予報でも、世間の晴れは洗濯物が乾く程度の日差しなら「晴れ」になってしまう。しかし飛行機撮影は青空の方が絵になり、晴れでも白い空だとイマイチ。また雨なら水しぶきや水煙など絵になるが、曇りの日が最も撮影条件が悪く絵になりづらい。
おすすめスポット&時間帯を教えてください。
海上空港である関西、神戸、中部などと、陸地にある成田、伊丹、仙台などでは状況が異なりますが、とりあえずは展望デッキに行けば気軽に飛行機撮影を楽しむことができます(海上空港は周辺に公式の撮影場所がないことが多い)。そこで慣れたら、空港に隣接した公園や車で滑走路端など自分の撮影ポイントを開拓すると良いです。関東地方で羽田空港なら、朝9時までは第一ターミナル、午後は第二、第三ターミナルに行けば順光で撮影できます。
飛行機撮影をするときの注意点を教えてください。
展望デッキなど撮影ポイントが限られている場所から、30m~70mなど機体の大きさがさまざまな旅客機を狙うにはズームレンズがおすすめです。しかし展望デッキではフェンスがあるため、フェンスのワイヤーに近づいて撮影した方が良く、引いて撮影するとワイヤーがうっすら写りこんでしまいます。またファインダーを覗いていると飛行機は斜めに上がってゆき、それに合わせてカメラも自然に傾いてしまうので、常に地面が水平になるように注意して狙いたいところです。
バックに写る風景もとても美しいですが、飛行機と美しい風景が重なる瞬間や場所はどのように見つけているのですか?
基本的に離着陸の撮影は空がバックに広く写ってしまうので、その場所の特徴を出すのが難しくなります。そこで、空港周辺の高台など飛行機が多少見下ろせる場所などを探し、天候、風向き、光のまわりかた、便数などを研究しています。今はインターネットで世界中の飛行機写真が見られますが、いわゆる空港職員しか入ることができない制限エリア内で撮影された写真もあります。ふつうに行って撮影可能か?治安は?と、海外の雑誌などを見て、良い場所がないか探しています。
どんなカメラを使っていますか?
デジタル一眼レフとミラーレス(レンズ交換式デジタルカメラ)を併用しています。ミラーレスカメラは最新高性能のものでないと、動態に弱く、EVFのタイムラグがありますが、最新のEOS R3は納得の性能です。しかし高価なので、それ以前のカメラの場合はファインダーのタイムラグを考えてシャッターを切れば大丈夫です。
チャーリィ古庄先生にとって飛行機写真の魅力はなんでしょうか?
高度、速度、航続距離など人類の英知の結晶であり、究極の乗り物である飛行機。しかし上空を飛んでいる姿を見るのは難しく離着陸のワンシーンしか撮ることができない、さらに天気、風向きなどによって撮影するのも一苦労で大変ですが撮影できたときの喜びがあるほか、風景とのコラボレーションはもちろん、機体やさまざまなカラーリングを撮影して集めるというコレクションという目的もあり、長年撮影していても飽きない題材です。
これから飛行機撮影にチャレンジしてみたい方にアドバイスやメッセージをお願いします。
今、ヒコーキ写真は撮影する人口も増え、盛り上がっている分野です。空港に行けば撮れる飛行機写真ですが、奥が深くステキな絵を撮るにも天気、空の色、雲の表情、季節、夕景、空港でのシーン、窓からの景色など、旅情を感じさせるものから飛行機のカラーリング、機体コレクションまで、いろいろ楽しむことができます。まずは気軽にカメラを片手に展望デッキへ出かけてみてください。旅写真の延長で飛行機写真にトライしてみてはいかがでしょうか?
チャーリィ古庄先生ありがとうございました!チャーリィ古庄先生は6月18日からキヤノンギャラリーにて写真展を開催予定です!ぜひお立ち寄りください。
Charlie FURUSHO チャーリィ古庄
1972年東京生まれ、旅客機専門の航空写真家。飛行機とヘリコプターのパイロット資格をもち、世界の航空会社や空港からのオーダーを受けこれまで100を超える国や地域に訪れ航空写真を撮っている。訪れた空港は世界500か所以上。世界で最も多くの航空会社に搭乗した「ギネス世界記録」を持つ。旅客機関連の著書、写真集は30冊を超え、サミットなどのVIP機公式記録カメラマンを務めた経験もあり。空撮用のヘリコプターも所有している。キヤノンEOS学園講師
http://www.charlies.co.jp/