• HOME
  • ブログ
  • 写真
  • 【Youtube】グリッチ case4 千賀健史『まず、自分でやってみる』【「写真から浮上する言葉を掴む」を活動方針にした写真家コレクティヴ】

【Youtube】グリッチ case4 千賀健史『まず、自分でやってみる』【「写真から浮上する言葉を掴む」を活動方針にした写真家コレクティヴ】

千賀健史は滋賀県出身の写真家で、2017年の第16回写真「1_WALL」に、カースト制度によるインドの貧困問題をテーマにした作品「Bird, Night, and then」で、グランプリを受賞した。その後もコンスタントに作品を制作し個展を行ってきた。制作作品は、どれも高度にリサーチした成果をもとにしている。さらに、作品をアーティストブックという形でまとめ、読者がそのブックを手に取ってページをめくっていくと、リサーチの過程を追っているような読書体験が得られる。これまでには、構造的問題による個の加担や特定の属性への差別に、一貫して関心を寄せた千賀は、個展「まず、自分でやってみる」を開催した。グリッチは第4回の活動として、本展について作家に話を伺った。

今回は、ご家族も危うく引っかかるところだった特殊詐欺をテーマとし、写真、映像、インスタレーション作品を含む展示だった。作品では、犯罪グループが使う部屋と同じようにレンタルルームでセットを組み、千賀が詐欺犯に扮してそのセットに入って演技をする。セルフポートレートから作られた架空のポートレートを水溶紙に印刷し、そこに水を吹きかけ、紙を溶かして作られた。この水溶紙は、証拠隠滅のために用いるもので、リサーチでわかった犯罪グループの手段だ。展示会場に、参加型の作品としてすごろくも作られた。このすごろくに入ると作品への理解はより深まる。不均衡な社会構造の中で自分のやることを選択する余地のなさや、生のための連なり、ころがって最終的に不本意な結末になる自分は、極めて短絡的に金銭を稼ごうとして知らずに詐欺グループの一員になってしまった彼らと差がないように感じた。

「まず、自分でやってみる」の作品は、まず千賀が詐欺犯と被害者を演技することから始まる。<写真>から出発して、詐欺犯や特定の事件の具体像をレファレンスしているのではなく、より鋭角的に、特殊犯罪の過程を浮かび上がらせるメカニズムだ。多元的に作品を構築できたのは、足でリサーチした成果と言える。いまの時代に合う写真イメージを作りたいという、千賀の話は作品を通じて真誠に伝わる。では、叡智に富んだ作家の話を動画でご覧ください。

グリッチ 田凱


↓PicoN!アプリインストールはこちら

関連記事