【写真学生による写真家インタビュー】写真家・藤岡亜弥氏に聞く、考えすぎないスナップの流儀
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』。前篇に続き、レポート後篇となる今回は、出展作家の藤岡亜弥さんへの特別インタビューをお届けします。写真を学ぶ中で「考えすぎて撮れなくなる」という、一人の写真学生としてのリアルな葛藤を、藤岡さんにぶつけてみました。
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藤岡亜弥 Aya Fujioka
1972年広島県呉市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。卒業後台湾に留学し北京語を学んだのち、ヨーロッパやブラジルなど世界を旅しながら写真を続ける。2007年文化庁新進芸術家派遣制度でニューヨークに滞在。2013年に帰国し、故郷の広島を拠点に活動。終戦後70年が経過した広島のいまをとらえた写真集『川はゆく』で2017年第41回伊奈信男賞、2018年林忠彦賞、木村伊兵衛写
真賞受賞。2019年に広島文化奨励賞。2023年第39回写真の町東川新人賞。2024年広島文化賞受賞。写真集に『さよならを教えて』(ビジュアルアーツ出版)、『私は眠らない』(赤々舎)、『川はゆく』(赤々舎)がある。国内外での個展多数。
1. 考える前に、まずシャッターを切る。
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ー(筆者は)社会人を経て学生に戻り、改めて写真を勉強している最中ですが、本格的に学ぶ前の頃よりも色々なことを考えてしまい。自由に撮れなくなってきた実感が少しずつあります。藤岡さんは学生の頃と今で、撮り方に違いや変化はありますか?
藤岡氏:「スタイルとしては変わってないと思います。でも、私もなんか撮れなくなったり、また撮り始めたりというサイクルがあって、同じようにずっと悩んでます。」
ー藤岡さんも悩まれることなのですね。では学生の頃から今まで、ずっと「変わらない部分」はありますか?
藤岡氏:「やっぱり歩きながら、足を使って撮るっていうところかな。あんまり考えると写真って撮れなくなるから、撮るときは…何も考えない。瞬間を捕まえるつもりで歩いています。先に考えてコンセプチュアルに撮る方法もあると思うんですけど、私の場合は、まず撮る。シャッターを切って、その後で考えていくみたいな。」
ー後からメッセージや文脈が浮かび上がってくるのでしょうか?
藤岡氏:「そもそもあまりメッセージってないんです(笑)。『いい瞬間を捕まえたい』とは思いますけど、撮るときは何かをどうにかしようとは考えてなくて。あとになって、写真の組み合わせやセレクトによって文脈が変わってくる。その段階になって初めて、何を見せて、何を見せないのかを考えていきます。」
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2. フィルムからデジタルへ。世界が変わり、撮り方も変わる。
ー 2007年から約5年間、ニューヨークで撮影されたスナップ素材から紡がれた写真集『Life Studies』。巻末エッセイのラスト1ページ、泣きました。
藤岡氏:「本当?うれしい~」
ー あんな巡り合わせが私の人生にも訪れたらいいなって…。
藤岡氏:「あるよ!!!!!」
ー (笑)。あの頃の作品はフィルムで撮られていて、その後『川はゆく』での広島のスナップなどはデジタルだと思いますが、カメラの使い分けはどのようにされていますか?
藤岡氏:「ニューヨークにいた頃まではずっとフィルムカメラで撮っていたんです。でも日本に帰ってきたとき、地元の広島では現像できなくて、一度東京に送ってまた戻す、みたいな状況になっていて。帰国したら世の中が変わってたんですよね。もうフィルムの時代じゃなくなってたの」
「それまでは自分で撮って、現像して、暗室に入って、自分で焼くっていうシステムで動いていたけど、それを変えざるを得ない時期でした。『デジタルに移行するか、写真をやめるか』という瀬戸際のそんなときに、たまたま古いデジタルカメラを譲ってくれる人がいて、そこからデジタルで撮り始めました。」
「それまでは、ピントも露出も自分で合わせるFM2(Nikon)だったんです、ずーっと。それが、オートフォーカスでズームもついているデジタルカメラになった。そこから世の中が変わって、自分の世界も変わった感じ。だから撮り方もそれまでとは違ってきたなと思います。」
3. 旅と写真、そして将来への不安。
ー 私は今、アジア各国を巡りながら写真を撮る「フォトフィールドワークゼミ」に所属していて。卒業後も旅をするように写真を撮れたらなと思いつつ、現実的な心配事が多く…みえない不安を抱えています。藤岡さんは大学卒業後、多くの国を訪れていますが、当時どんな想いで旅をされていましたか?
藤岡氏:「何も考えてない(笑)」
ー そうなれたら理想です(笑)。
藤岡氏:「私も会社員をやっていたんです。それがもう辛くて、それでひょこっと旅に出て、ふらふらして。でもね、ふらふらするのも結構大変だし『何かいいことないかな』とか思いながら歩いてました。写真のために旅をしていたわけじゃないから、カメラは横にある、くらいで。旅自体が楽しかったっていう思い出はないですね」
「その時は『なんでこんなつまんないもの撮ってるんだろう』とか思いながらシャッターを切ってて。でも帰ってきたときに、自分が忘れていたかけがえのない時間とか、忘れていた人が写ってて。『あっ、こんな時あんなことがあったな』ってあとから記憶がよみがえる。それが写真のいいとこで、ありがたいなと思います。」
4. スナップが生み出す、奇跡的な出会い。
ー 今回展示されている6枚の作品は、どのようにセレクトされたのですか?
藤岡氏:「セレクトは、私が好きなのを選んじゃった。子供や人が写ってるのが多いな~」
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ー この女の子、すごくいいですね。
藤岡氏:「うん、ポーズがいい。なんか色っぽい」
「撮影していたら、だんだんこの人、ノってきて!どんどんポージングを変えていって(笑)」
ー たくさん撮った中から選ばれた一枚なのですか?
藤岡氏:「そんなに何枚も撮ったわけじゃないです。でも彼女自身が『あ、いま私撮られてる』っていうのをちゃんと分かっていて、やっていると思います。」
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ー 左から二番目(赤いワンピースの写真)も好きです、どこの誰だろうって。
藤岡氏:「原爆の後に『水をください』って、水を求めて川に降りていく…広島の人間にとっては、どの本を読んでも書いてあるようなフレーズを彷彿させるというか。でも、そういう背景をここに書かないといけないわけじゃないでしょ?」
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「(赤帽の子供の写真)これはすごい逸話があって。大阪芸大で授業をしたとき、一人の学生が『先生、これ僕やもしれん』って。『えっ修学旅行で広島行った?赤帽だった?』って聞いたら『うんちょうど10年前』って。他の先生が『あんたちょっと来てみなさい、耳みして!』って確認したら『あなただわ!』ってなって(笑)。結構ウケたよ」
ー 奇跡的なエピソードですね!私は最近、肖像権やプライバシーなどのあれこれを気にしすぎて、いつの間にかスナップから足が遠のいていました。
藤岡氏:「写真を撮ることは、お互いが心を開くっていうことでもあるから、開いてみて。撮れなかったら自分がストレスですよね」
ー その通りです…。
藤岡氏:「でも、私もいつも撮れないけどね」
ー そうなんですか??
藤岡氏:「撮れない撮れない」
ー 変に緊張するようになっちゃって…。
藤岡氏:「わかるわかるわかるわかる、わかります」
ー 怒られたらどうしようとか…。
藤岡氏:「でも怒られたら『キャハ!』って言っておけばいいの。『悪いことはしてません!写真を勉強してます!』って」
ー (笑)。言い続けます!
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取材を終えて:「考えすぎ」のブレーキを外す
藤岡さんの、ユーモアに溢れつつも核心を突いたアドバイス。少し臆病になっていた私の心を、すっと軽くしてくれました。撮れないストレスを抱え込むくらいなら、自分から心を開いて、目の前の瞬間に飛び込んでみること。なんでも完璧にやろうと身構えず、空っぽの頭でとりあえず一歩踏み出してみること。藤岡さんの「キャハ!」という笑い声を脳内リピートさせながら、明日も写真を撮りに行ってきます!
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「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」
会期:2026年7月4日(土)〜8月26日(水)
時間:10:00〜19:00
休館:会期中無休
入場料:一般 2200円、U-30 1500円、高校生・中学生・小学生 1000円
会場:渋谷ヒカリエホール
住所:〒150-8510 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/26_kiseki/
NPI在学生 深田
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