クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.11〉―映画『THE FIRST SLAM DANK』
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
さて、2023年一発目ですが、前回の記事が音楽以外の「2022年クリエイティビティを感じた何か」を年間ベスト的に列挙したので、今回音楽に関するトピックスに戻そうと思い、
26年振りに新作を発表した大竹伸朗とボアダムス EYƎによるユニット、PUZZLEPUNKSの新作(雑誌の付録でレコードを挟み込み発売)を取り上げようかと思いましたが、これから入手困難&Web上でも聞きにくいので、今回も音楽に関係ないトピックスに関して書かせて頂きます。
*PUZZLE PUNKSについて気になった方はこちら
今回取り上げるのは
映画『THE FIRST SLAM DANK』です。
超メジャーかつ原作含めて熱烈なファンがいる作品ですので、私なんかが取り上げるのもお叱りをうけること重々承知してますが、原作読者であまり期待値を上げずに鑑賞したら、「映画」として超感動した人間の感想としてご容赦頂きたく。
*多少のネタバレは含みますので、何も情報を入れず本作を鑑賞したい方は、以降は読まずに映画館へGOです。
SLAM DUNKとは
週間少年ジャンプ(集英社)1990年42号から1996年27号まで連載された、井上雄彦による少年漫画。
高校バスケを題材に選手たちの人間的成長を描き、
国内におけるシリーズ累計発行部数は1億2000万部以上。
その影響からバスケを始める少年少女が続出し、
テレビアニメ(1993年10月~1996年3月)やゲームも制作されるなど、社会現象と呼べるような作品。
なお、以降は漫画SLAMDUNKについての説明は省くので
漫画未見で本記事を読む稀有な方はこちらを参照して読み進めてください。
『THE FIRST SLAM DUNK』の全方位感
本作は原作にもある湘北高校VS山王高校の試合をメインに、漫画原作では主人公でない宮城リョータのバックグラウンドに光を当て、彼を主人公とするという新たな視点を挿話している映画作品である。
そんな原作を題材にした作品で
本作は原作のハードコアなファンにも、ライトファンにも、原作未読の人でも、全方位のターゲットが納得&心揺さぶられる作品になったかと思う。
漫画に限らず原作がある作品(しかも超絶ファンが多く有名作)で、全方位的に好感しか持たれない(恐らく)のというのは、あまり例のない奇跡的な出来かと思います。
この全方位のターゲットに好感を持たれる要因として
本作が原作を「映画化する意義」を有しているからだと感じており、そこに関してうだうだ書かせて頂きます。
SLAM DUNKを映画化する意義
私が本作で原作を「映画化する意義」があったと感じたのは
1つ目は「漫画を映像化する快楽」
2つ目は「同じ事実に別視点を挿入」
でした。
1つ目の「漫画を映像化する快楽」に関しては
手書きとCGのバランス(違和感を感じさせない)が流石すぎでした。
元々書き込むタイプで線の一つ一つにまで求道者的にこだわりを持つ井上雄彦だからこそ、漫画読者がページを巡るたびに脳内で繰り広げている動きを映画で実現させたと思います。
そのための手段として
手書き、CG、モーションキャプチャー…を最大限活かしていました。
特にボールの回転、選手の走る際の躍動感、場面切り替わりなど、バスケの試合の“実際感”が凄まじかった。
その実在感は「バスケがしたいです」と観客に言いたくさせるようくらいで、バスケ漫画/映画というよりバスケットボールというスポーツ自体を、結晶化して抽出したような見映えでした!
また冒頭の沖縄でのシーン背景も人物も細かに書き込んだ漫画表現がスムースに動いていて気持ちよく、山王戦のタッチが変わっても気持ちよい…
ここら辺の物語の中で絶妙にタッチが心地よさが持続、ドライブする感じは、映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の心地よさを思い出すとともに、日本からのスパイダーバースへの回答を感じました。
この心地よさは映画にした十分な意義だと思います。
2つ目の「同じ事実に別視点を挿入」ですが、
本作は山王戦という漫画内事実に宮城リョータのストーリーを挿入したことで、原作を読んでいる人間(ハード/ライトファン)には山王戦に新たな視点が入り、映像的な快楽に付加して映画で観る意味が増します。
一方、原作未読の人にとっては宮城リョータのストーリーを挿話することで、山王戦だけを観せられるよりも没入感や感情移入度が増します。
しかも映画での挿話は作者である井上雄彦本人が入れこんでいるため、原作ファンは何も言えない&納得という完璧さ!
そして事実を違う人の視点で映す(原作では主人公桜木の視点)こと自体が、映画が得意とするところであり非常に映画的であり映画で描く意義になっている。
以上が映画化する意義かと思いますが、
もう最高なんで映画館で観れる方は映画館で何回も観た方がいいですよ!
ちょっと途轍もないものがみれますんで!
オススメです!
オープニング/エンディングテーマ曲はこちら
文・写真 北米のエボ・テイラー