「ただ山が楽しいから」前編 アウトドアフォトグラファー武部努龍
雄大な自然の象徴ともいえる「山」
近年の登山ブーム、キャンプブームで山は身近な存在となり、気軽に楽しむアウトドアの行き先として定着しています。
日本写真芸術専門学校卒業生の武部努龍さんは、現在山梨県を拠点に活動するアウトドアフォトグラファー。山を相手に写真を撮る武部さんに、山の魅力、アウトドア写真の仕事についてなどお伺いしました。
山での撮影は大変そうなイメージがありますが
荷物がネックになるのかなと思います。1泊2日できるくらいの荷物で約15キロ。カメラ2台に望遠レンズ、ドローン、三脚など機材とテント、寝袋、食べ物なんかです。持っていく機材を減らして、あれ持ってきてたらこの絵が撮れたのに!っていう後悔はしたくないので、一通り撮れるように持っていきます。
今までの山の撮影で1番荷物が多かった時は28キロありました。はじめブランドのその年に出す商品のイメージ動画撮影だけの依頼だったんですが、せっかくだから雑誌に売り込むってことになり掲載も決まって、スチールと動画の両方の撮影になって。機材が尋常じゃなく多くなった時があります。
撮影によっては荷物を持ってもらうスタッフがいたりするんですが、その撮影は僕含めて3人だったんです。荷物を持ってくれる専属の人がいなくて、「荷物増えるなー…持つの一人だよなー…」って。撮影の日数的にはそこまで大変じゃなかったんですけど、1人だけ荷物がおかしい人がいるって状態でした(笑)
一緒に行く方は「ゆっくり行くからね」って言ってくれたんですが、登山経験者だったので割とスピーディーに登っていくのでついてくのが大変でしたね。
あとやっぱり冬は夏よりハードルがちょっと上がります。
雪山なので登山技術が多少必要ということと寒いのはもちろんですけど、機材のバッテリー問題がシビアです。冬は山小屋がやっていないので充電させてもらえないし、荷物を置かせてもらって撮影に行くってこともできないのでそこが大変です。
バッテリー8個持って行っても足りなくなる時もあって、蓄電池抱えて持って行ったこともあります。
雪山は夏とは違う問題があって大変ですけど、僕は冬の絵のほうが好きです。
相手は自然。思うように撮影はできますか?
自分の作品撮りならベストな天候になるまで待つこともできますが、仕事となると期限があるのでそうは言ってられないですよね。撮影日が思い通りの天候でなかったとしても、その場でできる撮影をします。悔しいですけど。天候がドンピシャではまることは自分の中でなかなかないなって感じてます。
プライベートで友達と山に行く時は必ずカメラは持っていって撮影しているのと、初めて登る山ではレポできるくらいのボリュームで細かく撮っています。そういう過去に撮影していたもので、こんな写真ありますっていう代案を出して採用してもらうこともあります。
逆にそういう積み重ねがあったことで、誌面で山の紹介、登山ルート紹介、山のアイテム紹介、山小屋で食べられるご飯の記事なんかを依頼されて、写真だけじゃなく文章まで書くことも多いんですよ。
ドローンは独学で3年前くらいから取り入れています。最近は映像必須なんで。山梨は規制がそこまで厳しくないので山だと練習もできるしその点は助かってます。
航空法の関係で、ドローンのアップデートが頻繁にあるんです。アップデートしない限り飛ばせないので、山でアップデートが始まったときは電波があるところまで持ってってなんてトラブルもあったりします。映像が撮れる撮れないでは仕事の幅が全然違うので、荷物もかさばり面倒なこともありますがドローンは必要ですね。
厳しい環境の中、そこでできる最高のパフォーマンスをする能力も大事になってくるのが山での撮影の難しさでもありやりがい。
クライアントの期待に応えることができれば信頼に繋がり、次の仕事にも繋がる。
そんな大変な撮影にも関わらず、なぜ武部さんは山に登り続けるのでしょうか。
次回は、被写体に山を選んだ武部さん自身のお話をご紹介します。