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【写真学生による舞台裏レポート】《まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険》プレス内覧会・設営現場を歩いて

はじめまして、日本写真芸術専門学校(NPI)1年生の深田です。
現在、Bunkamura ザ・ミュージアムでは展覧会『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』が開催されています。今回は写真学生の視点から本展をレポートすべく、プレス内覧会、そして開幕に先駆けて行われた施工現場を取材させていただきました。
日本展担当キュレーターの竹内万里子さん、Bunkamura ザ・ミュージアム 学芸員の菅沼万里絵さん、そして本展の制作を担当しているミュージアム 運営室室長の田口紅さん。展示を形作る御三方のお話から見えてきたのは、本展に込められた並々ならぬ熱量です。そして時代を切り拓いてきた表現の数々は、圧倒されるほどのパワーに満ちていました。それでは、世代を超えてつながる展覧会の舞台裏をレポートします!

世界巡回を経て、ついに日本へ
一人ひとり「バラバラであること」を大切にした大空間

本展は、戦後の日本女性写真家をまとめた大型書籍『I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』が出発点。フランスのアルル国際写真フェスティバルでの展示を皮切りに、オランダ、フランクフルト、ロンドンと世界を巡回してきました。この国際巡回展の内容をさらに拡大したのが、今回の東京展です。これほどの規模で日本の女性写真家を一堂に集結させる試みは国内初。「日本で披露するからには、絶対に妥協はできない」という強い思いから、展示の再構成には並々ならぬ配慮がなされたといいます。
キュレーターの竹内さんが展示構成において最も意識したのは、作家一人ひとりの異なる世界観を尊重することでした。「女性作家」という大きな言葉で一括りにするのではなく、彼女たちの異なる世界観をそのまま尊重し、魅せていくこと。そのため、全体を無理に一つのまとまりとして落ち着かせるのではなく、むしろ「バラバラであること」を大切にしながら空間を構成していったそうです。設営が終わった空間を見渡してみると、そこには不思議な一体感が生まれていました。

小松浩子氏のインスタレーション『繁殖模倣変換器』

巡回展ゆえに生じていた作品サイズ制限からも解放され、今回は国内ならではのダイナミックな展示が実現しています。やなぎみわさんの〈案内嬢の部屋 1F〉は、借用時の木箱を含めた重量が380kgにも及んだという、舞台裏の驚きも。

展覧会が「形」になるまでの舞台裏

内覧会の前々日には、Bunkamura ザ・ミュージアム 運営室室長の田口紅さんに設営中の展示室をご案内いただきました。日本での開催にあたり、キュレーターの竹内さんは全体の構成を見直し、作家と話し合いながらそれぞれの作品を再検討していったと言います。せっかくの日本開催ですから、作家自身も中途半端なものは出したくないというこだわりもあり、竹内さんはその調整に奮闘されたそうですが、「最後には不思議と丸く収まるものですね」と笑顔で当時を振り返ってくださいました。

30人もの個性が一堂に会する現場では、予期せぬ事態が起こることもあります。たとえば石内都さんの作品コーナーは、当初別の壁を予定していたそうです。どれほど周到に準備をしても、壁の高さ、作品のサイズ、そして並べたときに受ける印象は、現場で実際に組み立ててみなければ分からないものです。

キャプションや作品の位置は、鑑賞者の動線を考慮しながらギリギリまで微調整が重ねられていました。

内覧会当日は名だたる出展作家が一つの空間に。圧巻の光景。

写真家・蜷川実花さんから受け取ったもの

熱気に包まれる会場内を巡っていると、蜷川実花さんが私の前を通りがかりました。もう4年前のことになりますが、写真コンテスト『IMA NEXT』のテーマ「WOMAN」(https://ima-next.jp/winners/woman/my-little-fingernails/)にて、私の作品を選出してくださったのが蜷川さんです。

思い切ってお声がけをすると「覚えてるよ!」と明るく応じてくださった蜷川さん。「爪じゃなくても、自分だけの表現!をね。なかなか難しいけど。」「撮り続けることも大事だね。頑張って!」そのカラッとした温かいアドバイスは、ただ愚直に撮り続けることの大切さを教えてくれました。

蜷川さんの作品といえば鮮やかな色彩のイメージが強いですが、今回展示されているのはモノクロ表現による水中撮影作品。白黒の世界であるはずなのに、なぜかそこに豊かな色を感じてしまうような、不思議な引力に満ちています。

のびやかな図録と年表の誕生

資料としての充実ぶりも見逃せません。松田貴子氏編集による100年の年表は、国内における女性たちの活躍を克明に辿る、圧倒的な見応えです。
また、赤々舎が編集を務めた図録は、「展覧会をただ記録する本」ではなく、より幅広い文脈を提供する一冊となっています。

作家たちをのびやかに見せる試みとして、作家自身の書き下ろしの言葉が収録されており、その一部は会場の壁面にも星空のように展示されています。さらに巻末には、厳選された50冊の写真集を紹介。3本のロングエッセイが3ヶ国語(日・英・仏)で掲載されているほか、東アジアにおける女性写真の歩みも網羅されており、歴史的に読み継がれるべき貴重な資料となっています。

長島有里枝氏による、ヒカリエホールの広い空間を生かしたインスタレーション。

作品の中に入ったレスリー・A・マーティンさんらを、長島さんご本人が撮影している場面に遭遇!

※通常は展示保護のため柵が設置されており、作品内への立ち入りは禁止されています。プレス内覧会での特別な光景です。

「何度でも足を運び、自分の反応に率直に接してほしい」

この展示をどのように観てほしいか、来館者に向けて、竹内さんは次のように語ります。

「いっぺんにすべてを理解しようとしなくて構いません。ぜひ何度でも足を運んで、一人ひとりと向き合ってみてください。順番通りにきれいに見ようとしなくても大丈夫です。その時々の自分の反応に、率直に接してほしいと思います」
ー 日本展担当キュレーター・竹内万里子氏

写真家と鑑賞者のまなざしが交わる場所
日々、新しい何かが生まれていく展覧会に

また田口さんは「まなざしが交差する場」として、鑑賞者が感じたことを共有したり、発信することで新たな行動の変化が生まれる場になってほしい、と語ります。

「今回はU-30割引・リピーター割もあるので、ぜひ若い人にたくさん観て、言葉を交わしてほしいです。そして、ここで得たものが自分や誰かの行動を変えるきっかけになれば嬉しいですね。」「かつて読んだ小説を今読み返すと、全く違うことを感じるように、この展示も見るたびに感じるものが変わるはずです。深く考えすぎず、経験したことは、すぐに形にならなくても、どこかで必ず自分の『隠し味』として生きてきますから」
― Bunkamura ザ・ミュージアム 運営室室長・田口紅氏

澤田知子氏の観客参加型作品『OMIAI♡』人気投票ブース

川内倫子氏の長編映像作品『Illuminance』

取材を終えて:とにかく、撮り続けよう
プレス内覧会の会場を見渡して嬉しかったのは、そこに多くの女性たちの姿があったことです。その中には若い女性作家の顔も見受けられ、彼女たちがまとう爽やかな風が会場に心地よく吹き込んでいるのを感じました。
しかし、展示された作品群や、名だたる作家ご本人たちと対面するうちに、その輝きにすっかり圧倒されている自分がいました。「すべての経験がいつか自分の『隠し味』になる」という田口さんの言葉が、じんわりと胸に響きます。焦る必要はないのかもしれない。彼女たちがそうしてきたように、私もまずは自分のペースで、とにかく写真を撮り続けていこう。モチベーションがぐっと高まるひとときでした!

「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」
会期:2026年7月4日(土)〜8月26日(水)
時間:10:00〜19:00
休館:会期中無休
入場料:一般 2200円、U-30 1500円、高校生・中学生・小学生 1000円
会場:渋谷ヒカリエホール
住所:〒150-8510 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/26_kiseki/

NPI在学生 深田


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