OAC学生広告クリエイティブアワード2021 受賞者インタビュー Vol.3
公益社団法人 日本広告制作協会(以下OAC)が主催する『OAC学生広告クリエイティブアワード2021』で受賞した、専門学校日本デザイナー学院グラフィックデザイン科の山本 夏未さん、渡邉 笑以さん(両名とも2022年3月卒業)にお話を聞きました。
聞き手に、専門学校日本デザイナー学院で講師を務め、文化庁メディア芸術祭優秀賞、世界ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞など、数多く受賞をされている齋藤 浩先生をお迎えして、詳しくお話を伺いました。
〇お2人はなぜデザインの勉強をしようと思ったのですか?
渡邉さん:私はイラストレーションの勉強をしようと思ってて、色んな学校に行ったんですけど、オープンキャンパスの時に「基礎が出来ちゃってるからつまんないと思う」って言われて、入ること否定されちゃうんだと思って。この学校(日本デザイナー学院)に来たんですけど、そしたらイラストレーション科じゃなくて、パソコンのスキルを学べたりとかデザイン広告とかのスキルを学べるグラフィックデザイン科の方が良いんじゃないって言われて。そう言われて、学びたいなって。
山本さん:私もほとんど一緒でびっくりしちゃったんですけど、もともと絵を描くのが好きで、イラストレーション科を第一に考えていて、他校のイラストレーション科がある専門学校のオープンキャンパスに行った時に、やっぱりその絵はなんかもう描けてるねみたいなこと言われて。じゃあ何かもうちょっと別のことやってみようかなっていう風に考えた時に、自分の中でグラフィックデザインが・・・
齋藤先生:それ、分かります。僕もデザイナーになりたかったんだけれども、最初、某大学のデザイン科を卒業して、最初にやった仕事が画像処理だったのよ。2DのCGですよ。そっちの専門セクションに行ったんですよ。それで、全然違うジャンルのことをまた一から学ぶことが、人生の回り道になってしまわないだろうかっていう不安があったんだけど、もう全然そんなことなくて。その時の経験がすごい生きるんですよねデザインやってると。僕は学生の頃からイラストレーションのコンペに出しまくってたんですけど、僕はイラストレーターになりたくなかったの。イラストも描けるデザイナーになりたかった。そしたら卒業した後の、2DのCGの仕事のスキルとが上手く活きたっていうか。例えば外注しなくても自分でできちゃうわけですよね。それで凄く作業効率も上がって。構造が分かるから指示もできるようになるんですよ。それはね、すごいプラスになりました。だから、イラストレーションとデザインって全然違うかもってあんまり考えない方が、全ての要素って繋がってるから。そういうデザインとイラストレーション、写真なんかもそうだけど、そういうものをあえて学んで、本質を取るみたいな、そういう戦略っていうのはなんかすごくありだと思う。あとその気になれば、割とうまくいくって、凄い無責任な言い方だけれども、覚悟を決めればどうとでもなるのが、意外に人生やり直しを気が利くというか、しくじったと思っても実はしくじってなくて全部それが経験としてちゃんと今の仕事に生きていいるって思うことってすごくあるので、いい選択ができたんじゃないかなと思いますね。
渡邉さんの卒業作品(一部抜粋)
◯2年間勉強してきて、できることが増え、コンペの受賞という形で結果が残ったと思います。今後、自分の強みを活かしてどうしていきたいですか?
山本さん:私は、デザインを学んだことでよりなんですけど、やっぱり絵が描きたいなと思いました。結構発想のところが似てたりして面白いなと思ったりとか、絵で色を選ぶ時に、今デザイン作ってるときも同じこと考えるかもって思うことがあって、その辺もすごく楽しかったし、自分の中でもすごくいい学びになったなと思うんですけど、やっぱりデザインしていく中で、自分の絵をここに入れたいなとか、結構思うようになっていったので、どちらかといえば絵の方に軸を置きたいです。
齋藤先生:デザインもわかるイラストレーターとか、デザインに口出しをする漫画家とかいいですよね。編集者が怖がると思います。やっぱり勉強している人は怖いですよ。やっぱり発注する人とか、社会に出ると必ず一人で全てが完結することって絶対ないから、必ず共同制作者っていうのが出てくるんですよね。編集者だったり広告制作会社のアートディレクターだったりコピーライターだったり色々あるんですけど、やっぱりそういう人たちと対等に語れるだけの知識と経験があると、向こうも一目置くっていうか、この人を言いくるめるのは難しそうだなって思ってくれたりとかね。少なくとも対等にケンカができるんだって思うので、とても良いことではないかなと思います。
渡邉さん:私はウェブデザイナーだったりグラフィックデザイナーだったり、色々と挑戦していって、マルチに活躍できるデザイナーになりたいなって思ってて。というのも、ここで学んだのがWebデザインもそうだし、広告、グラフィックデザイン、写真も色んなことを学べて、1つのデザインに全部自分の力を注げるというか、そういうのを学べるのが良いなと思いました。
山本さんの卒業作品(一部抜粋)
◯今回30案出されたということですが、アイディアはどのように出しているのでしょうか?
山本さん:私は思いつく言葉をポンポン書いています。さっきの作品も、銭湯に行って、人と話して心がほぐれる、お風呂に浸かって体がほぐれるって、ほぐれるって何だろうなと思って。そのモヤっとした感じ、湯気でほぐれていくようなイメージっていうのを思いついたので、そうですね言葉から出して行くことが多いです。
渡邉さん:私は妄想から。妄想癖があるので、絵からイメージする。そこからポンポンポンポンと妄想が浮かんで、これをアイデアにしてみよう、デザインしてみようってやってます。文字からは私は・・・
齋藤先生:今度やってみると良いよ。言葉も結構出ますよ。デザインって授業でも言ったかもしれないけど、コピーと非常に近い関係にあって、コピーライターになるための勉強の方法っていうのは、デザイナーになるための勉強の方法とほとんど同じで、アウトプットが言葉かビジュアルかの違いで、基本的な考え方は全く同じなんですよね。なのでコピーの勉強すると、なんかすごくデザインが見えてくるっていうことが、僕は実体験としてあったんで。それまで僕はね、デザイナーなんだからコピーに口出ししちゃいけないんじゃないかとか思ってたけど、全然そんなことなくて。考え方をどう考えて、どう着地させるかっていうことを順序立てで、文字にしてみると凄く構造が明快になってくるんですよね。それってやっぱり言葉の力だと思ってて。言葉が使えるようになるとコピーライターとケンカできるんですよ。コピーライターっていうのは、言葉のプロだから、すごく喋りがうまいわけですよ。その喋りがうまいやつと対等にケンカするにはやっぱり自分の言葉を勉強しないといけないし。
本を読んで小説読んで気になったワードを羅列していくと、羅列した言葉からさらにイメージが膨らんでいくなんていうようなこともあるから、言葉だけのネタ帳っていうのを作ってみても面白いかもしれないです。僕やってました。
◯デザイナーとして、一番大切にしていることを教えて下さい。
渡邉さん:授業で教わったんですけど、説明しないことが一番大切だなと思ってて。それを常に意識してやってます。実際、私も説明されるとうーん、うざったいって思っちゃうから、シンプルイズベストっていうのもそうだし、明快さを意識してやってます。
山本さん:そのまま伝えすぎないことを意識してます。シンプルなものばっかり出てきちゃうタイプなので、何かもうちょっとひねれないかなっていうことを考えるようにしてます。