「美術のこもれび」Rayons de soleil dans l’art–No30:『 アルベール・マルケ Albert Marquet 』展 について
専門学校日本デザイナー学院東京校 講師の原 広信(はらひろのぶ)です。
今回は今年9月に開催される『 アルベール・マルケ展 』で展示公開される作品をいくつかご紹介します。
アルベール・マルケは1875年、フランスのブルドーに生まれて後にパリに住み、やがて画家マチスとも友好を結んで、フォーヴィスム( Fauvisme / 野獣派 )絵画を模索しています。しかしマチス、ヴラマンク、ドランといった画家たちの極彩色あふれるタッチとは一線を画していて、むしろグレー(灰色)を用いる穏やかな作風の絵画を志向しています。
※下線部『美術のこもれび 第10話 アンリ・マチス』をご参照ください。
では、作品を見ていきましょう。
【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 ル・アーヴル、船渠 / Le Havre, ie bassin 』1906年 61.4 × 50.3cm カンヴァスに油彩 Musée d’art moderne André Malraux 所蔵 Le Havre / フランス 】 ※ソース/画像引用元:https://www.muma-lehavre.fr/fr/expositions/marquet-en-normandie マルロー美術館公式HP
こちらは1906年にマルケが描いた作品です。画面の3分の2あたりになだらかな曲線で仕切られていて、下(手前)側は陸地、上(奥)側は港の光景が描かれています。奥の遠景は海岸に沿って並んだ建物が明るく描かれ、いくつかの船と共に海面にその姿を映しています。ル・アーブル港はフランス北西部ノルマンディー地方にあり、大西洋に面しています。その色彩と明るさに比べると、手前側はグレー(灰色)が支配しており、残雪の残る道を寒そうに足早に人々が往来しています。このグレーですが、いろんなニュアンスを含んだ色彩であるのがお分かりでしょう。
さらに別の作品を見ることにしましょう。
【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 ポン=ヌフとサマリテーヌ / Le Pont-Neuf et la Samaritaine 』1940年 65 × 81cm カンヴァスに油彩 ひろしま美術館 所蔵 広島市 / 日本 】 ※ソース/画像引用元:https://www.hiroshima-museum.jp/collection/eu/marquet.html ひろしま美術館公式HP
こちらは国内、広島市中心部にある美術館が収蔵する作品です。フランス、パリのセーヌ川にかかる橋「ポン=ヌフ」とその向こうドーム型に見える建物が「サマリテーヌ」という百貨店になります。こちらも冬の景色なのが分かりますね。全体がグレー(灰色)の画面ですが、その中でも微妙な色彩が使われています。ポン=ヌフを往来する車両は橋に応じた遠近法に従って描かれるとともに、近景(手前側)はコントラストを強く描き、橋を渡った向こう側の遠景は少し霞んで見える空気遠近法によって距離感を演出しています。
【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 ポン=ヌフ / The Pont Neuf 』1906年 カンヴァスに油彩 National Gallery of Art 所蔵 ワシントンDC / 米国 】 ※ソース/画像引用元:https://www.nga.gov/artworks/46639-pont-neuf National Gallery of Art公式HP
同じ橋を描いています。『ポン=ヌフとサマリテーヌ』が描かれた1940年から34年も前、1906年の作品です。同じ橋ですが、渡る乗り物がやはりずいぶん違いますね。比較してみてください。こちらの橋には馬車のような乗り物が走っていますが、1940年の橋にはモータリゼーションが発達しています。またこちらの作品はタッチ(筆致)が荒く、まだフォーヴィスム( Fauvisme )の影響が見られます。
【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 トゥルヴィルのポスター / Poster at Trouville 』1906年 カンヴァスに油彩 National Gallery of Art 所蔵 ワシントンDC / 米国 】 ※ソース/画像引用元:https://www.nga.gov/artworks/106378-posters-trouville National Gallery of Art公式HP
さらにフォーヴィスム( Fauvisme / 野獣派 )的な作風の作品です。「トゥルヴィル」のいうのは港町の地名で、ノルマンディー地方の湾岸リゾート地。比較的にパリに近いため、バカンスシーズンには多くの行楽客で賑わいます。日傘をさしてそぞろ歩きをする人たちの後にいくつもの大きな看板があり、作品タイトルにある『ポスター』とはこれらの手描き看板をさしています。青い空にカラフルな色彩が映えていますね。
左に並んだテントに見えているのは、屋台のお店でしょう。お土産などを売っているのかもしれません。
それでは、最後にマルケの素描を見てください。
【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 幸福な男 / Un nomme heureux 』1904年 厚紙に裏打ちされた紙に、筆と墨で描画 Musée des Beaux-Arts de Bordeaux 所蔵 Bordeaux / フランス 】 ※ソース/画像引用元:https://musba-bordeaux.opacweb.fr/fr/notice/bx-1960-5-12-un-homme-heureux-ccf40fe6-b6df-444a-9627-24f657a3cbdd Musée des Beaux-Arts de Bordeaux公式HP
この素描はフランスのボルドー美術館に収蔵されています。大きな歩幅で颯爽と歩く男性を筆と墨を使って描いています。筆致に勢いがあって、手早く描いた感じが良いですね!
姿と顔の表情にタイトル(画題)を重ね合わせると、大変ユーモラスです。左下に画家のサインが見えています。
この『幸福な男』を含め、今回ご紹介した作品のいくつかを見ることができる展覧会が9月22日より東京、新宿駅西口徒歩5分にある美術館で開かれます。ぜひマルケの本物のグレーと筆遣いを体感しに出かけましょう!
※下線部:『ル・アーヴル、船渠』、『ポン=ヌフとサマリテーヌ』、『幸福な男』
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【展覧会情報】
■ 『 開館50周年記念 アルベール・マルケ展 』
2026年 9月22日(火)~2026年 12月13日(日) SOMPO美術館 (東京都・新宿区)
https://www.sompo-museum.org/en/exhibitions/2025/albertmarquet/
※月曜日は休業、詳細は公式HPでご確認ください。
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